動き出す・・・ (1)
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やっぱり、私は身体を動かすのが好き。
この二人はそれを思い出させてくれる。
「くそっ邪魔だっ」
苛立った男の腕が目の前を遮る。
それをよけて手の下からボールを叩くと面白いようにそれは弾んだ。
「祐介!」
「この女!」
向きを変えた男の肩が当たり床に尻餅をつきそうになると、
「利奈、大丈夫か」
雅樹が受け止めてくれた。
「ありがと」
「相当イライラしてきたな」
私は頷いて立ち上がった。
ゲームが再開されて、リバウンドを取ろうとしてジャンプしたとき、見つけてしまった。
コートの外で、腕を組み背中を壁にもたれさせこちらを見ている“皆川黎人”を・・・
「利奈!」
よそ見をしてしまい、名前を呼ばれて気が付いたら目の前に太い腕があり、
「!」
とっさに自分の腕で顔をかばったが太い腕に払われてしまった。
「利奈!」
情けない事に私は飛ばされて背中から床に落ちた。
「いったぁ・・・」
「「利奈!」」
祐介と雅樹が駆けつけて心配そうに見ている。
前にもこんな表情をさせたなぁ・・と昔のことを思い出して小さく息を吐いた。
「大丈夫か利奈!」
「だいじょぶ・・・」
背中を打った・・・
プレイしていた人達が私の周りに集まって見下ろしていて、私を薙ぎ払った先輩はオロオロとしていた。
「すまん松本!ついイライラしてしまった!」
その狼狽えぶりがおかしくて、つい、その先輩に軽口を叩いてみる。
「先輩・・・手加減してください。私も一応女なんで・・」
「ほ、保健室行こう。な?松本」
動揺する先輩がなんだか可愛かった。
まだ横になっていた私の視界に制服のズボンが入り、思わず体が強張った。
立っていたその人は私の顔の横に座り、すっと首に手を伸ばしてチェーンを指ですくうと、リングはユニフォームの外に出された。
「みーつけた」
そこには、笑みを浮かべている黎人がいた。
それは、クラブで初めて会った時に「面白い」そう言って笑った時に見せた顔と同じだった。
3つのリングは“シャラン”と音を立てて彼の手に落ちた。