規制ノ対象 (3)
規制ノ対象(3)は客観的視点から展開しています。
-3年A組-
「なぁ‥漣」
黎人が話しかけると携帯をいじっていた漣が顔を上げた。
女子生徒達は2人をチラチラと見ている。視線を向けられることに慣れている2人は特に意識するわけでもなく、女子生徒達をそこにいないものとして会話を続ける。
「なに」
そう答えると、また自分の手元に視線を戻して携帯を操作する。
「今日って風紀委員長が月1でやるクラスの見回りだよな・・・あれ、オレも行く」
携帯から目を離さずに漣が答えた。
「お前は美化委員長だろ?オレと一緒に来てどうするんだ?」
「いいから行かせろ」
漣は黎人の顔を覗き込んだ。
「まだ例の女を捜しているのか」
「見つからないんだよ。あれからクラブにも来ないし、学園にもそれらしいのはいない・・・」
漣はククっと笑った。
「女に苦労したことがないモテモテの黎人クンがねえ・・・正体不明の女に心奪われたか?」
黎人は形の良い切れ長の目で漣を睨んだ。
「漣、ニヤニヤしながら女にメールを送っているお前に言われたくない」
漣はメールの送信ボタンを押した。
「その女を見つけたらどうするつもりだ?」
「・・・ウチの生徒2人からリングを送られて、しかも一緒につけている女なんていないだろ?ただ、どんな女なのか見極めたい」
「黎人はその彼女が二股かけていると思っているんだ?」
黎人は“わからない”と言い机に突っ伏した。
「保健室にいたんだよ・・・話し方がリサに似た女」
漣は黎人の頭を見下ろした。
「利用名簿を見たのか?」
黎人は顔を上げて漣の顔を見た。
「保健医が見せてくれなかった。・・・そういえばお前に文句があったみたいだぞ」
漣は首を傾げた。
「オレ?」
「ああ・・・爪がなんとかって言っていたな」
「爪?それってネイルの事か・・・?」
「わかんねぇけど、爪も規制しろって言ったのかな」
漣の持つ携帯が震え、受信したメールを見て微笑んでいた。
「とにかくオレも行くよ」
漣は携帯を見たまま答えた。
「それで気が済むなら、好きにすれば?」




