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規制ノ対象 (2)

「お話がそれだけでしたら、失礼します」



地味な生活サヨウナラ・・・ひと月も持たなかったね。


入学式の後、たまたま廊下ですれ違った時のクラスメイトの騒ぎ方から、漣兄様の立場を知ったときに何となくわかってはいたんだけどね。



「お待ちなさい!」


私は待つつもりはなかった。


「授業が始まるので失礼します」


「なんて生意気な子なの!?」


私の腕を掴んで後ろに引かれて、振り返ると女の手が飛んできた。


やっぱりこういう展開になる。王道だね。


「!」


とっさによけたけれど、長い爪が頬にあたりメガネをかすめた。


避けきれると思ったけれど、目測を誤った。



予想より爪が長すぎたらしい。



「痛・・・爪、長すぎでしょ」



痛むところに手をあてて見ると血がついていた。



地面に落ちたメガネを拾い上げるとレンズが割れていた。

安物のおもちゃだから仕方ないか・・・


「先輩、お話がそれだけでしたら失礼します」


白薔薇会なる、兄様のファンクラブのメンバーをその場に残してその場を後にした。


何かキャンキャン騒いでいたけれど無視を決めこんだ。







保健室に入ると今日は保健医がいた。


「おはようございます」


「どうした?一年」


先生は少し眠そうにしながら私を見た。

この学園の保健医って男の先生なんだ・・・知らなかった。


「先生、ここ消毒して絆創膏貼って下さい」


顔を先生に突き出すと先生は眉をひそめた。


「そこ、座って」


椅子に座ると消毒薬を染み込ませた脱脂綿を頬につけて


「染みるか?」


そう言いながら傷口を消毒してくれた。


ぴりぴりと消毒薬が染みて、顔をしかめた。


「痛いです」


その時ガラッと扉が開いた。


「センセー、寝かせて」


「皆川、また朝帰りか?」


先生は私から目を離さずに答えた。


「まーね、朝からお客さん?珍しいね」


保健室に入ってきた生徒はずかずかと中に入ってきたけれど、私は背中を向けていた。


「まあな・・・。傷は残らないだろうけど・・・絆創膏貼るぞ」


先生は私の頬に絆創膏を貼った。



「さて・・・これに名前書いて」


保健室の利用名簿を差し出した。


「はい」


クラスと名前を記入すると先生は私を見た。


「それで・・・誰にやられた?」


「わかりません。先生、私からは言えないので代わりに伝えて頂けますか?」


先生は利用名簿にサインしながら答えた。


「ん、なんだ?」


「風紀委員の委員長に・・・“爪も規制しろ”って。あ、私の名前は伏せておいて下さいね」


先生は含み笑いをした。


「なるほど・・・良くわかった。伝えておくよ」


「よろしくお願いします。じゃあ先生、ありがとうございました」





授業が始まるぎりぎりに教室に入ると香織が驚いていた。


「利奈・・・その絆創膏、どうしたの?メガネは?」


「転んだの。メガネは割れた」


小首を傾げて私を見る香織は可愛らしかった。


「利奈、メガネしないと美少女だね」


にっこり笑って私の頭を撫でた。


香織、あなたは本当の松本利奈の姿を知っているんだよね?

知っていて何もいわないでくれているんだよね・・ありがとう。


嘘をつくのが心苦し。いつか話せる日が来るといいな・・


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