規制ノ対象 (1)
朝、校門に風紀委員会が立っている。
服装の乱れの取り締まりや挨拶運動をするため。
私とは無縁の委員会だったけれど、兄様がカフェテラスですれ違ったり、移動教室の時も私を見つけると声をかけたりしてくるから、委員会の人達から睨まれている。
私は、風紀委員会 =(イコール) 剣崎漣ファンクラブ なのではないかと思っている。
「松本さん、ちょっと宜しいかしら」
登校途中に呼び止められた。
「はい?」
とうとう来たか・・・
風紀委員会のお姉様に声をかけられた。
ベタすぎる校舎裏への呼び出し。
連れてこられた場所には兄様のファンが集団で待っていた。
私を連れてきた一番派手な先輩が口を開いた。
「何故呼ばれたかおわかりになって?」
私は愛想笑いを返した。
「わかりません」
わかりすぎるくらいわかっているけれど・・・
「そぉ?それなら説明してさしあげます。まず、先週は剣崎漣様への接触がありましたわね?どれも漣様からの接触でしたが・・・私たち白薔薇会と致しますと、これは立派な抜け駆け行為ですわ」
白薔薇会?
何ですか?それ
随分ベタなネーミングですね?本気でその名前で活動しているの?
「白薔薇会・・ですか・・・」
お姉さまは眉を吊り上げた。
「あなた、まさか白薔薇会をご存知ないの?」
知るか、そんなもの。
大体、抜け駆けって何よ?私があの男に恋愛感情を持つわけがない。
「私は外部入試組ですから知りません。初めて聞きました」
仕方ないわね、とお姉さまはため息をついた。
「あなた、漣様がお好きなら白薔薇会にお入りなさい」
誰が入りますか、そんなもの。
「入るつもりはありません」
またお姉さまの眉が吊り上った。
白薔薇でも黒薔薇でもいいけれど、そんなものに入れるわけがない。
あの男は、この学園でどうやって私にちょっかいを出そうか、自分の目の届くところに置いておくためにはどうしようかと考えているはずだ。
「なんですって?」
「今までのは剣崎先輩の気紛れです。人と接するのになぜ制約されなければいけないのですか?そんなことをするのはおかしいと思います。それとも剣崎先輩がそれを望んでいるのですか?」
「生意気ね!」
私には守れない制約だ。
最初から守れない約束はしない。