偶然?それとも必然? (1)
でも、逢うときは逢ってしまうんだな・・・
土曜日、史兄様と買い物に行く約束をしていたけど、待ち合わせまで時間があったから街中を歩いていた。
史兄様が買ってくれたワンピースを着て少し化粧をして・・・史兄様好みの利奈になっていた。
学園の利奈とは別人!
漣兄様の誕生日が近いからプレゼントを物色していた。
時計?洋服?何がいいだろう・・・
アクセサリー?
うーん・・・史兄様に相談したほうがいいかな?
ピアスとブレスレットのショーケースを見ていてプラチナのバングルが目に留まった。
兄様の腕につけたら似合うかも・・・
プライスカードを見るとなかなかいいお値段だった。
パパか史兄様に確認してからじゃないとダメかな・・・
一応パパからカードをもらっているけれど、高校生が買い物をしていい金額ではないと思う。
「・・・リサ?」
バングルの前で考えていると声をかけられた。
「え?」
返事をすると腕をつかまれていた。
上を見るとアキ・・・アキトが私を見下ろしていた。
「・・・偶然だな」
ふっと笑った。
私服の彼は学校で見るよりも大人っぽく見えた。
「スクールリングの男にプレゼントか?」
「そうよ」
「どっちの?」
今日、私はリングをつけていなかった。
「どっちだっていいじゃない」
私はつとめて素っ気無く答えた。
「確かに。お前、時間あるか?」
「ない」
グイッと引っ張られた。
「来いよ」
私は今、あなたに“時間あるか”って聞かれて“ない”って拒否の返事をしたよね?
なのに何故、人の腕をつかんで店を出るの?
人の話を聞け!
カフェに連れてこられた
「何がいい?」
「カフェラテ・・・」
アキはじっと私を見ている。
「何?」
あまりにもじっと見るから居心地が悪くなってきた。
「お前・・・桃陵の生徒か?」
この前の保健室での接触では私とリサが結びつかなかったらしい。
まあ、当然だろう。
漣兄様も地味バージョンの私を初めて見た時に最初は私だと気付かずにいた。
私だと気付いた時のあの顔は今思い出しても可笑しい。
目を見開いて固まっていた。最初は人違いだと思ったのだろう。
私だと認識した次の瞬間、思いっきり眉をひそめていた。あのとき、王子様の仮面は剥がれ落ちていた。
「さぁ・・・あなたは桃陵の生徒なの?」
運ばれてきたカップに口をつけながら彼を見た。
「そうだよ。・・・オレの事見つけた?」
私は首を横に振った。
本当は良く見かけていた。
彼は漣兄様と一緒にいることが多い。
兄様ほどではないけれど、取り巻き達に騒がれている。
「私、興味ないって言わなかった?」
ソーサーごとテーブルに置いて彼を見ると
くっと喉の奥で笑った。
「面白い女だな」
Candyの短編集を掲載しました。
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