アイツノサガシモノ (3)
兄様も少し驚いているようだった。
この学園で知っている人はいないと思っていた。
「香織・・・知っていたの?」
こくんと頷いた。
「翔慶学院の松本利奈・・・大好きな選手なの」
「ありがとう」
涙が出そうだ・・・。
「私、教室で待っているね」
「うん」
メガネを外して滲んだ涙を拭った。
「もうメガネなんか必要ないんじゃないか?」
首を横に振った。
そうはいかない。
あの“アキ”には見つかりたくない。
「着替えるね」
ベッドのあるスペースで制服に着替えた。
制服に袖を通しているとまたドアがノックされた。
「漣、お前の制服持ってきた」
「ああ、サンキュー黎人」
この声は・・・“アキ”だ。
わざわざ制服を持ってきてくれるっていうことは兄様の友達なの?
「あれ?松本利奈は?」
フルネームで呼ぶな!
それより、なんで名前知っているの?
「着替えてる」
「あ、そう・・・おーい松本利奈!大丈夫か?」
スクールリングのチェーンを首にかけながら答えた。
「はい!大丈夫です」
「なぁ‥頼みがあるんだけど」
頼み?
支度を終えて鏡でチェックした。
よし、リサとは別人!スクールリングも見えない!
「何でしょうか」
2人の前に出て行くと兄様に椅子に座るように言われた。
「あのさ・・・ネックレスにスクールリングを2個つけている女子生徒がいたら教えてくれないかな」
私に聞くの?
「ハア・・・2個ですか」
私が聞くと彼は腕を組んだまま頷いた。
探すって本気なの?
深い意味なんかないクラブでの会話なのに、貴方は私を探すつもり?
「ああ・・・ちなみに君は指にスクールリングしているよな」
アキことアキトは私の手を取り、指を見て苦笑いを浮かべた。
手を取られたとき、この前の事を思い出した。
リングを握りしめていた私の手に、あの唇が触れたんだ。
私は、彼を凝視してしまっていた。
アキトは私の視線を逸らすことなく見返し、口角を上げて笑った。
アキと同じ笑みだ。
「見つけたら絶対オレに教えてくれよ」
私の足に湿布を貼っていた兄様が聞いた。
「その女の名前は?」
「リサ・・・本当の名前じゃないかもしれない。この学園にいるリサは確認したけど違った」
兄様はこの話を聞いて何か思うところがあるらしい。
チラリと私を見たその眼が冷たかった。