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王子のハカリゴト (4)


「お帰りなさいませ。漣様、利奈様」


私の状態を見ても、平然と兄様のSPは頭を下げた。


彼らからしたら“また始まった”位にしか思っていないのだろう。


「降ろして!」


ストンと地面に降ろすと横抱きにして車に乗せた。


「片山、出して」


私のメガネを取り、結んでいた髪を解いた。


「絶対にこっちの方が可愛いのに・・・」


「兄様!私は明日からどうすればいいのよ!」


また私のメガネをかけてなんでもない、という様に言った。


「そんなの・・・カミングアウトしちゃえば?」


「私は剣崎の姓じゃないよ・・・兄様やパパが噂されるのはイヤ」


兄様は頭を撫でた。


「お前は可愛いね」


家電量販店に不似合いな男が一人いた。

珍しそうに商品を眺めている。

“冷蔵庫”とか“洗濯機”等、一般家庭にある電化製品が珍しくて仕方がないらしい。


確かに、私もまだ剣崎利奈だった頃、家の中で洗濯機を見たことはなかった。

洗濯機はどこに置いてあるのだろう?屋敷に行くことがあったら探してみよう。


兄様に付き合い、一通り商品を見て歩き、電子辞書が置いてあるコーナーに来た。


「どれがいい?」


私の伊達メガネをかけた兄様が電子辞書を見ていた。


「前と同じでいい」


「せっかくだから新商品で一番いいのにすれば?」


商品から目を外して私の顔を覗き込む。


「前と同じヤツじゃなきゃイヤ」


新しくて機能が良いものを買ってもらったらファンクラブはきっと怒り狂うだろう。


「頑固者だね。誰に似たのかな」




壊れたのと同じ機種の電子辞書を買ってもらい、外で夕飯を食べる事にした。



「ねぇ、漣兄様は知っているんでしょう?」


デザートを食べ終えてコーヒーを飲んでいるときに聞いた。


「何を?」


「ママがウチに帰ってきていないこと。・・・パパは知っているの?」



ママは新しい男と海外に行った。

娘にはメールでしばらく帰らないと告げたきり入学式にも来なかった。



学園の理事をしているパパが入学式に出てくれたからいいけど・・・



「父さんも知っているよ。あの女は今イタリアにいるらしいね」



兄様は他人事のように軽く言った。



「そうなんだ・・・」



ママは行き先のことは何も言っていかなかった。

私は聞きもしなかったけれど。


「利奈・・・帰っておいで」


私は首を横に振った。


「私なら大丈夫だよ?御守りもあるし」


「利奈・・・寂しくなったらいつでも電話しなさい。1人であんなところに行かないで・・・」


私が昨日どこにいたか・・・わかっているんじゃない?

携帯のGPSは切っておいたようなきがするんだけど、他にも発信機とかついていたりして?


今日も真っ暗なマンションに帰ってきた。


兄様・・・ごめんね


いつも心配かけてごめんなさい。



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