ミント風味な保護者 (1)
約束?――約束?―――なんだろう?
「え・・・と」
私は空いている手でタクシーを停めた。
『―――利奈・・・忘れたの?明日は病院だろ』
「ああ・・・」
すっかり忘れていた。
保護者と一緒に病院に行く日だ。
タクシーに乗り込み、運転手に“目黒”と告げると車は走り出す。
『明日、8時に迎えに行くから。いいね?』
イヤとは言えない雰囲気だ。
現地で待ち合わせにはしてくれないらしい。
「はい・・・兄様」
『ところで――――利奈、今どこにいるの?』
見え透いているが嘘をつく。
「本屋・・・タクシーに乗って帰るところ」
『いいよ。明日ゆっくり聞くから。漣にも言っておくよ。気をつけて帰りなさい』
何がいいよ?“明日本当の事を聞くから、今は悪あがきでもなんでもしていいよ”っていう事ですか?
兄様・・・怖い・・・
電話を切ってタクシーの窓から見える夜の風景を見ていた
病院か・・・
次の日、史兄様は本当に8時に迎えにきた。
「史兄様おはようございます」
「おはよう、利奈」
纏う雰囲気が漣兄様とは正反対。
兄弟でどうしてこんなに違うのだろう?
甘い VS クール お菓子で言うと はちみつのキャンディとミントのタブレット
上手い喩えが浮かばないけれど、ニュアンス的にはそんな感じだ。
チラリと兄様を見ると足を組んでいて目を閉じていた。
「どうした?」
「なんでもない」
今日の兄様は、口調は柔らかいけれど目が笑っていない。
昨日の夜の事を問いただしたいのだろう。今日はお説教覚悟だなぁ。
兄様は腕を伸ばしてきて、私の首にかかるチェーンを手にとり、リングを取り出した。
「利奈、外すなよ?」
頷いて兄様を見た。
「外さないようにするけど、学校では魔女狩りが始まっていて、見られると大変な事になるんですけど・・・」
史兄様は“ふっ”と冷めたい笑いを浮かべた。
「外野なんかどうでもいいんだよ?利奈は気にしすぎ」
「大学生はリングを外してもいいの?騒ぎにならない?」
史兄様はまた笑った。
「騒ぎになっても関係ない。オレは漣のような趣味はないからな。取り巻きを纏わりつかせて、好き勝手させている時点でガキだ」
ばっさりと切られちゃったね、漣兄様。
”ガキ”だって・・・