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あの日の面影 (4)

――利奈が欲しい――


ストレートな言葉に返す言葉が見つからなかった。


「利奈?」


欲しいって、欲しいって……


「……」


固まったままでいると、私の首元に顔を埋めていた黎人がクスクスと笑っていた。

吐息が首に掛かるたびに鼓動が早くなる。


「利奈にオレをあげるけど…いらない?」


「う…」


何て答えたらいいんだろうか…私が欲しいとか、黎人が自分を私にあげるとか…それって


「いらないなら、捨てるか?」


唇が触れそうな距離で言われて、咄嗟に言葉が出てしまった。


「捨てないよ!欲しい」


言ってしまってから、言葉の意味を考えて固まっていると、抱き上げられて運ばれた。


「欲しいって言ったよな?」


ベッドに降ろされて、私の首筋に顔を埋めながら話す声はくぐもって聞こえた。


「…」


言葉が出ない私の顔を覗き込んで首を傾げる黎人は目を細めてからかうように笑っていた。


「利奈?やっぱり、いらない?」


首を横に振ったけれど『欲しい』なんて言えない。


「真っ赤…可愛いな」


恥ずかしすぎて…どうにかなりそう!!


「利奈」


名前を呼ばれて顔を上げると目元にキスを落とされた。額に、頬に、キスをして私の目を見ていた。


どうしよう?…もの凄く――


「好き…」


ありのままの気持ちを言葉にすると、目を伏せて笑みを浮かべていた。


「知ってる」


唇に触れるだけのキスをすると、私の腰をつかみ引き寄せると胡座をかくように座っていた自分の足の上に私を座らせた。

私の下唇を甘噛みし、閉じていた私の唇をわずかに開かせると唇を重ねた。


触れるだけのキスは深い口付けにかわり、舌が歯列をなぞり舌を絡めとられ吸われた。

その度にゾクリ、と体の深いところが疼く。



黎人のキスに応えると私の髪の中に指を入れて自分に引き寄せてベッドの上に寝かされた。




肌の上を唇と手が触れる度に体が反応してしまう。


「っ…ゃっ…」


声が出てしまい恥ずかしくて顔を背けると黎人はそれを許してくれなかった。


「オレを見てろ」


「…っ…恥ず…か…ぃやっ…」


「これからもっと恥ずかしいことするのに?」


そう言うと胸の頂を口に含んだ。


「やっ」


さっきよりも強い疼きが湧き上がる。

恥ずかしくて腕で顔を隠して、甘い疼きに耐えていると


「…だからダメだって」


黎人は顔をあげてニヤリと笑うと私の両手首を絡げて私の頭上にやり、片手で押さえつけた。


「これから利奈が誰のものになるのか…見て、感じろ」



黎人が触れるところ、口付けるところから生まれた疼きは私の中に甘く溜まっていくような気がした。

甘い疼きに浸食された私を黎人の指が更に翻弄して、体から溢れ出て壊れるんじゃないかと思い始めた時


「利奈」


不意に名前を呼ばれた。


「利奈」


もう一度呼ばれて、答えたかったけれど声に出来なくて、視線を黎人に向けると私の頬に触れて少し辛そうに言った。


「辛くても、止めて…やれない…」


苦しげに言う黎人の額に滲んでいた汗を掌で拭った。


「いいよ…やめないで?」




黎人は私の右手を掴み、自分の唇に引き寄せて唇を押し付けた。

…初めて会った時もこんな風にキスされた…


「あぁっ!」


痛いという言葉は黎人の唇に飲み込まれた。



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