スクールリング (2)
図書室に行くと前半の当番をしてくれていた3年の先輩と交換した。
「カフェテラス混んでいた?」
さっきの上級生の叫びを思い出した
「剣崎先輩のスクールリングの事で騒ぎになっていました」
先輩は“ははは“と笑った
「ああ・・・ウチのクラスじゃ朝から大騒ぎだったよ。剣崎がチェーンに通したリングに微笑みかけていたから。ファンの子はパニックになっていた」
兄様・・・シスコンだよ。変態シスコン王子。
先輩はお昼を食べに行ってしまい、私はこっそりメールを打った
“騒ぎが大きくなる前にスクールリングを元に戻して”
送信するとすぐに返事がきた
“ダメ”
“意地悪言わないで!”
送信するとまたすぐに返事がきた。
“い・や・だ!兄貴の分も持ってきたから放課後つけてやるよ”
自分の立場を考えてよ!このシスコン達め!!
教室に帰ると剣崎漣のスクールリングの噂話しで盛り上がっていた。
「おかえり、利奈。あれから大変だったんだよ・・・剣崎先輩が彼女らしき人とメールのやり取りをはじめたら取り巻きが泣き出しちゃってね・・・先輩はそんなのお構いなしで楽しそうにメールしててさ・・・これは・・・魔女狩りが始まるね」
絶対に自分のリングを取り戻す!そうしないと私の命に関わるから!
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放課後、図書委員をしながら兄様がここにきたらどうしようとビクビクしていた。
「漣様のファンクラブがリングを交換した相手を探しているそうよ。2ケ所ある昇降口で指先のチェックをしていてリングをしていない女子生徒を徹底的に調べているんですって」
噂を聞いてきた2年の先輩が教えてくれた。
私・・・帰れないじゃない!
苗字も違うし、妹だなんて言っても信じないだろうし・・・
何より剣崎という大きい名前を背負っている兄様に一般家庭で暮らす妹がいるという事が知られたらマイナスになるのではないかと思った。
私は返却された本を戻し、本棚に隠れて兄様のスクールリングを取り出して指にはめてみた。
やっぱり緩くて指に嵌っていてはくれない。これではごまかせそうにない。
困ったなぁ・・・
図書委員が終わっても帰れずにいると携帯が震えた。
着信は“漣”
「はい・・・」
『利奈、今どこにいるの?帰るよ』
明るく言う兄様に腹が立った。
「教室・・・剣崎漣のファンクラブが魔女狩りしているからを帰れないんですけど」
電話の向こうでふっと笑った
お願い・・・困らせないで。目立ちたくない。
『利奈、職員用の玄関に来て』
「そこは魔女狩りしてないの?」
『早くおいで』
そう言って電話が切れた。
私は鞄を持ち職員用の玄関に行くと兄様が待っていた
「おいで」
私を見つけると周りから見えないように肩を抱いて歩き車に乗せた。
「私のリングを返して」
兄様に掌を向けると、コロン、とリングを乗せた。
「利奈にはこれ、新しいリング」
裏側の刻印を見ると
“Rina Kenzaki”と刻まれていた
「兄様?これ、名前が・・・」
「オレと兄貴の希望。昔みたいに兄弟一緒に暮らしたい」
私の指にリングを嵌めてネックレスをとるともう一つリングをチェーンに通した。
「これは兄貴のリング」
2つのリングが揺れていた。
「お守りだから外すなよ」
兄様の優しい笑みに涙が出そうになった。
「ん・・・」
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ねぇ、漣兄様
1人に慣れたはずなんだけどたまにこの部屋にいることがたまらなくイヤになるんだ。
息が出来なくなるような感覚。兄様には経験ある?
酸素はあるんだよ?でもね苦しいの。
苦しくて仕方がないときがあるの