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片恋 (7)

「覚悟?」


私が言うと黎人はくしゃくしゃと頭を撫でた。


「まぁ、いろんな意味での覚悟だよ。オレもだけど、漣や史明さんもガキの頃から叩き込まれてきた。…利奈はまだ覚悟が無くても自分の身を守る為に名前を使うのは悪いことじゃない。狡いとか考えるな」


皆川の家に、剣崎の家に生まれた事に対する覚悟。

それは私が剣崎の名前を名乗ることを決めた覚悟以上のモノで背負うモノのレベルが違いすぎる。


黎人に『ズルくない』そう言ってもらえて心が軽くなったような気がした。


「ところで、オレの誘いを断って他の誘いには応じるなんて相変わらず生意気だな」


大輝の事?

黎人の顔を見ていたら、私からキスをした時のことを思い出してしまって恥ずかしく芝生に目線を移して答えた。


「だって、見たいんだもん」


一人になりたかったし、考えたかったから。それは言えないけれど、大輝が走るのを見たかったのは本当。


「…アイツっておまえの、何?」


「前にも言ったでしょ?」


そう言うと、黎人は大きなため息をついた。

ため息をつきたいのは私だよ。友達だって言ったでしょう?好きな人にそんなことを聞かれるなんて…


「たまにアイツらが可哀想になるよ」


どういう意味?アイツらって、誰?

黎人の顔を見ると私を見て笑っていた。


「意味が分からないって顔だな…まぁ、それでいいよおまえは」


ますます分からない。

それになんだか小馬鹿にされた感じがするのは気のせい?


「一人で納得しないで分かるように教えてくれてもいいじゃない」


そう言うと、ニヤリと笑って私を見た。

この笑いは…


「知りたいか?」


私だって、少しは学習能力があるつもり。この笑みを浮かべる黎人は…

逃げの態勢に入ろうとしたら、肘を強く引かれて黎人の方に転がってしまった。


「やっぱり、いい。自分で考える」


「遠慮すんなよ、教えて欲しいんだろ?」


そう言う黎人の顔がすぐ傍にあった。好きな人の顔が目の前にあって、ドキドキしてしまう。


「これはヒント」


睫毛が触れそうな位の距離で囁かれて目を閉じると唇が重なった。


前のように拒むことができない自分と相変わらずどうしてキスをするのか分からない黎人。


ずっとこのままでいられたらいいのに…

叶わない望みを心の中で唱えていると唇が離れた。


「分かったか?」


分かるわけないでしょ…バカ黎人。



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