スクールリング (1)
制服に着替えていて、首にチェーンがかかっていることに気がついた。
チェーンの先にはリングがついている。
手に取ってそれをみるとスクールリングだった。
ウチの学校では生徒の名前、生年月日、血液型を刻印したリングを利き手の中指に身につけることになっている。
身分証にもなるリングだけど、大切な人同士、リングを交換することもあると聞く。
ネックレスに彼氏や彼女のリングをつけて首に下げるそうだ
私の首にぶら下がっているリングには“Ren Kenzaki”と刻印されていた。
私の右中指にはめられていたリングはなくなっていた。リングには“Rina Matsumoto”と刻印されてあったはず。
漣兄様が持っていったの?
“お前はオレの大切な妹だよ、離れて暮らしていても家族だよ”
いつも言ってくれる言葉の証し?
漣兄様・・・気持ちは嬉しい。ありがとう。
でもね、これを誰かに見つかったら・・・私は・・・生きて学園を出られないと思うんだ・・・
兄様のファン達にリンチされるんじゃないかな?
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昼休み、香織とカフェテラスでお昼を食べていると、
「あれ?利奈、スクールリングしてないね」
香織は鋭い。日常の些細なことでも良く気がつく。
「うん・・・緩くなったからここにあるよ」
リングは見せないでネックレスのチェーンだけをチラッと見せた。
「利奈、ちゃんとご飯食べなきゃ駄目だよ?申請してサイズ直ししてもらうといいよ」
「うん・・・」
もっとうまい言い訳考えれば良かった・・・
『漣様!スクールリングはどうなさったんですの!?』
悲鳴のような叫びがカフェテラスに響いた。
「昨日の夜大切な人にあげたよ?お互いにリングを交換したんだ」
そう言い取り巻きの人達に首にかけたチェーンをちらっと見せていた。
その言葉と仕草にお茶を噴出しそうになった。
なんで“離れて暮らしている妹にあげた”って言わないのよ!!
どうして誤解されるような言い方するの?それじゃいかにも“恋人と交換した”って言っているみたいじゃない。
兄様は私の身の安全が脅かされてもいいの?
私を暇つぶしの駒にしないで!!
お弁当を食べるのを途中で止めて立ち上がった。
「香織・・・私、図書委員だから行くね」
疲れた。ここはもう逃げよう。
「うん、頑張ってね」