婚約者だから、と、いろんな思いがある中でも信じてきたのですが……。~裏切り者への優しさなど持ってはいないのです~
「おはよう、マリア」
「あ、おはようございます、ロマンズさん」
学園に通っていた頃に知り合った彼ロマンズは、一つ年上なのだが、私の婚約者だ。
さらりとした茶色の髪が印象的な彼は、女性からの人気がそこそこ高い。学園時代も女子生徒たちから愛されていた。そして、学園を卒業した現在も、寄ってくる女性は数えきれない。
それゆえ、少々複雑な思いをすることはあるけれど。
でも、婚約したことは確かなことなのだから、と、彼を信じてここまで歩んできた。
……だが先日見てしまった。
街の路地裏でロマンズが一人の女性といちゃついているところを。
実際に見てしまっては我慢できない。
そのためこっそり調査を開始。
するとロマンズがリーリエという女性と深い仲であるという証拠がたくさん集まった。
なので、そろそろ、切り込んでみるつもりでいる。
「ロマンズさん、実は、お話ししたいことがあるのですが……」
「話? 何だい? いいよ、付き合うよ」
今から何を言われるのか。
彼はまだ気づいていないようだ。
「浮気、なさってますよね」
するとロマンズは突然青白い顔になり、引きつったような声で「な……何を、言い出すんだ!?」などとこぼす。
「もうすべて調査済みです」
「なっ……な、なっ……なな、な、なっ……何を言って……!? か、かか、か、勘違い、だ! 勘違いに違いないっ……だって、そんな、そんなことっ……!」
ロマンズは分かりやすく冷静さを欠いていた。
ということは、やはり、浮気している自覚はあったということなのだろう。
気づいていなかったのならもっと堂々としているはずだから。
「リーリエさん、という方がお相手ですよね」
「どっ、どど、どうして!? リーリエのことを!?
……って、違うっ! そうじゃないっ! リーリエは、リーリエは違うんだ! 彼女は確かに可憐で魅力的だが……で、でも! でででっ、でも! そういう関係じゃない!」
「先日も路地裏でいちゃついていたではないですか」
「勘違いだ! そんなの、見間違いか何かだろう! ……と、いうか、だな! 証拠もないのになんということを言うんだ! 浮気を疑うなら、まず、証拠を出せよ!」
そんなことを言ってきたので。
「はい、こちらです」
集めた証拠を彼の前に出す。
「短期間でこれだけの証拠が集まりました」
「なっ……」
「それでもまだ浮気ではないと仰るのでしょうか」
そこまで言うと、彼はようやく自身の悪しき行いを認めた。
「ということで、婚約は破棄とします」
「ま、待ってくれ! それは! そそそ、それはっ……こ、こまっ、こっこっここっ、困る! 婚約破棄は駄目だっ、困る!」
「では、この後は第三者を挟んで」
「婚約破棄だけは、やめてくれええええ!!」
ロマンズとの婚約は破棄。慰謝料は二人ともからしっかりと取った。裏切りの罪をせめて金銭面でだけでも償ってもらい、関係はそのまま終わらせた。
裏切り者と生涯を共にするなど不可能だ。
◆
あれから三年半。
私は今、ハーブティーマニアの男性と結婚し、ハーブティーを楽しむ日々を過ごしている。
彼はいろんなハーブティーを紹介してくれる。
私はそういったことにあまり詳しくなかったのだけれど、彼と過ごすうちに段々知識がついてきて、今に至っている。
彼と過ごす日々は、穏やかで、楽しい。
ちなみにロマンズとリーリエはというと、あの後お金の貸し借りのことで揉め破局したようだ。
何でも、ロマンズがリーリエに遊ぶお金をたびたび借りていたそうで、それを「貰ったと思っていた。だから返さなかった。そういう理解だったので、この先も返すつもりはない」などと言ったことで大喧嘩となったようである。
それは当たり前……。
借りたものは返すべき……。
その後、激怒したリーリエの親が出てきたことでロマンズは渋々返済し始めたそうだが、返済し始めて一ヶ月も経たないある日彼は謎の死を遂げたそう。
で、残った分はロマンズの親が返済したそうだ。
ロマンズとの縁により思わぬ災難に見舞われたリーリエだったが、彼女にはその後も幾つもの災難が襲いかかったようで、結局あまり幸せにはなれなかったようだ。
◆終わり◆




