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いのち短し潜れよ乙女~ダンジョン道は乙女のたしなみ~  作者: 瘴気領域
第六章 江ノ島 x 共闘 x 生しらす丼

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第41話

(なんか急に仲良くなってない?)


 競うように(実際競っているのだが)牛頭天王狩りに加わった鬼嶋と剣城さんを横目に見ながら、わたしも負けじと牛頭天王をぶっ飛ばす。正直なところ二人が参加してからはすっかり乱戦状態で、もうカウントなんていい加減なのだが、それでも負けたくはないのである。


 それは、たぶん100体目の牛頭天王を討伐したときだった。


 ――〽ひゃららら~ ひゃらら どんどんっ ちんちん どんどんっ ちんちん ひゃららら~♪


 どこからともなく、お神楽のようなBGMが流れてきたのだ。


 ぴしゃぁぁぁぁああああん! ごろごろごろごろ……


 続いて雷鳴。

 激しい閃光に、一瞬視界が真っ白に染まる。


「な、なに……?」


 薄目を開けて見た光景は、それまでとはまるで様子が変わっていた。

 板敷きの小屋の中に、見慣れない木製の機械がところ狭しと並んでいる。

 横木に何本もの糸が張られ、その先には作りかけの布。

 これは――機織り機?

 それらが、無人のままかたんことんと規則正しい音を立てている。


転移の罠(テレポーター)だね。罠は踏んでないから、条件達成型の――」


 と、キリ先輩が言いかけたときだった。


 がっしゃぁぁぁあああん! べちゃっ


 吹き抜けの屋根板が突き破られ、赤黒い物体が降ってきた。

 物体はべちゃりと重く湿った音を立て、辺りに赤黒い液体を撒き散らす。

 血だ。

 そして、赤黒い物体の正体は――


「なんだよあれ……、もしかして馬か!?」


 乗り物つながりなのか、鬼嶋がいち早く気がついた。

 それは全身の生皮をひん剥かれた馬だったのだ。

 はっきり言って、グロすぎる。

 Yourtubeで配信したら一発BAN確定の代物である。


「機織り小屋に、生皮を剥がれた馬の死体。これはひょっとして――」


 どがしゃぁぁぁああああん! どどんっ


 またしても、キリ先輩の言葉が騒音でかき消される。

 屋根の穴から降ってきたのは、髭面の大男。

 蓬髪をライオンのたてがみのように生やし、額には金の冠。

 裾のほつれた白い貫頭衣の腰を、朱色の布で縛っている。

 大きさも雰囲気も関帝廟で見た張飛ゴーレムに似ているが、たくましい腕に握られた獲物は蛇矛でなく青銅色に輝く直剣。

 一体こいつは――


「がははははは! 我は建速須佐之男(タケハヤスサノオ)! 伊邪那岐命(イザナギノミコト)の子にして、天照大神(アマテラスオオミカミ)弟神(おとうとかみ)なり! 不躾にもこの高天原(たかまがはら)に土足で押し入った賊を天誅に参った!」

「スサノオぉ!? スサノオって、あのスサノオ!?」


 考える前に、丁寧にも名乗ってくれた。

 直剣を小枝のように振り回し、機織り機を粉砕している。

 体格との比の関係で普通の直剣に見えているが、実際は柱のように太い。


「……うん、あのスサノオだね。日本神話の。高天原で暴れて、追放された頃のキャラだね。すごいシスコンだよ」


 何度も言葉を遮られたキリ先輩が、不機嫌そうに解説してくれる。

 解説内容にもどこか私怨が混ざっているように思えてならない。


「ブランさんとアカリちゃんは前衛! 正面からスサノオを引き付けて! 剣城さんは中衛で二人をカバー。ニコちゃんは自由に動いてかき回して! ……で、いいですか?」

「了解。はは、私だって指揮役なのに、出番が取られちゃったな」


 キリ先輩の指揮の下、戦陣を組む。


「がははははは! 準備は整ったか? 高天原一の戦神(イクサガミ)、このスサノオの前に立つ蛮勇だけは褒めて遣わそうぞ!」

「ちなみに一般的にはタケミカヅチが最強って言われているね。力だけならタヂカラオもスサノオより上だと思う」

「何をぅ! 小娘がッ!」


 キリ先輩の挑発に、怒りに震えたスサノオが前衛を無視して剣を振り下ろす。

 何しろ3メートルを超える巨体だ。リーチが長い。

 降り掛かった金属塊がキリ先輩の頭上に迫り、


「おっと、後衛を守るのも私の役割かな?」


 ハルバードに受け流された直剣が、床板を叩き割った。

 むう、見事な斧槍捌き。力で受けず、その方向をコントロールしている。

 ブランばかりを気にかけてきたけれど、やっぱり剣城さんも並々ならない使い手だ。


「ハッハー! よそ見してんじゃねえぜッ!」


 鬼嶋がバイクに狩り、機織り機の残骸を踏み台にして宙を舞う。

 そしてすれ違いざまにスサノオの髭面に木刀の一撃をぶちかます。


「ぬおおッ! こざかしいッ!」

「当たるかよッ!」


 切り返しの直剣を、鬼嶋がバイクごと身を捻ってかわす。

 まるでハリウッド映画のスタントみたいだ。

 なんだか普段よりキレがよくなっている気がする。

 何か吹っ切れた感じがすると言うか――


「OuaaarrrrRAAAAAHHHHH!!」

「ごふうっ!?」


 剣を振り上げ、開いた腹にハンマーの凶悪な一撃が突き刺さる。

 ブランの怪力を受けて、スサノオの巨体がくの字に折れ曲がった。


「HaHaHaHa! ボスはおくせん万点デス! これを倒した方が勝ちデスよっ!」

「あっ! また勝手なルール増やして!」


 まったく、勝手なことを言う。

 しかし望むところだ。

 なぜなら――


「もう数なんてわっかんないしッ!!」

「ぐべらっ!?」


 下がってきた髭面の顎を、全力のアッパーカットでぶち上げた。

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