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パズル1:招かれざる客

どんよりとした曇り空を飛ぶ鳥たちの鳴き声が、行き止まりの中の希望の歌のように聞こえた。

雨がいつ降り出してもおかしくない天気だ。本当なら、暖かな明かりの下で、ふかふかのベッドに潜り込んでいるはずだったのに。俺は学校へ行くことを選んだ。

月曜日の朝礼。新しい登校時間が設定されてから、全生徒は6時半までに入らなければならない。朝礼は退屈そのものだった。嫌いなわけじゃない。ただ、小学生から高校生までずっと繰り返してきたこの儀式に、飽き飽きしているだけだ。

「諸君、君たちはもう大人だ。善悪の判断はつくはずだ。先生が伝えたいのは、ぶら……ぶら……ぶら……」

校長が朝礼台の上で訓話を垂れている。

密集した列のせいで眠気は増すばかり。周囲では校長の話も聞かず、あちこちで私語が飛び交っている。

「マジで退屈。この後物理と数学だろ? しかも必修と選択。重すぎる。こんなことなら家で寝てればよかった」

俺は欠伸をしながらこぼした。

「親に向かってそんなこと言えるのかよ?」

後ろから声がした。ヨガだ。全校一の秀才で、通称「メガネの天才」。整った髪型と王子様のようなルックスで女子からの人気も高い。

「お前みたいなイケメン天才は俺に構うなよ。女子どもに『陰キャが王子を強請ゆすってる』なんて言われたくない。今まで聞いた中で一番クソな噂だ」

俺は両手をポケットに突っ込んだ。

「へっ、羨ましいんだろ?」

ヨガが笑いながら茶化す。

「勝手に言ってろ」

溜息をつき、俺は再び曇り空を見上げた。「退屈だ。世界がもっと面白くなればいいのに。この『普通』ってやつには、もう飽きたんだ」

変貌 (Metamorfosis)

空には重苦しい灰色の雲が垂れ込めている。突然、校長の声が止まった。話が終わったわけではない。全校生徒の視線が、旗揚げポールの頂点へと吸い寄せられたのだ。

俺も顔を上げた。そして、唾を飲み込みそうになった。

ポールの頂点に、ありえないバランスで一人の男が立っていた。奇妙な服――布とは思えない、光を吸収するグレーのローブを纏い、その瞳は銀貨のように冷たく光っている。男は木の葉が舞い落ちるようにゆっくりと浮遊し、壇上の前に着地した。

「貴様、何者だ!」校長が顔を真っ赤にして怒鳴る。「これは朝礼だぞ、遊び場ではない!」

その人影は、生徒の海を静かに見渡した。声は抑えられているのに、一番後ろにいる俺の耳にまで鮮明に届く。

「人間。私が最後に『遊び』の対象に選んだ種族だ」

彼は薄く笑った。「プロローグを始めよう」

「出て行け!」校長が肩を掴もうと詰め寄った。

次の瞬間、何が起きたのかは見えなかった。ただ、空気を切り裂く「シュッ」という音が聞こえただけだ。

校長は静止した。目を見開き、首、胸、腕に赤い線が浮かぶ。そして……体はバラバラに崩れ落ちた。丁寧に切り分けられた肉塊のように、芝生の上へ。

沈黙。

そして、最初の悲鳴が校庭を切り裂いた。

「あああああ――!!」

パニックが爆発した。横からぶつかられ、転びそうになる。ヨガが耳元で叫んだ。「ザカ、逃げろ!」

だが、どこへ? 校門は遠い。考える間もなく、その存在が手を掲げた。

「静かに」

彼の手から青い透明なドームが急膨張し、校庭全体を覆い尽くした。逃げようとした生徒たちが目に見えない壁に激突し、弾き飛ばされる。悲鳴が、水の中にいるようにこもって聞こえた。

「私の名はコスモス」彼は凍りついた俺たちの間をゆっくりと歩く。「銀河を巡り、娯楽を探してきた。そして君たちは……次の観客だ」

彼は立ち止まり、銀色の瞳で一人一人をスキャンするように見つめた。「このドームは突破できない。抗う者、逃げる者は……」彼は校長の残骸を指差した。「……ああなる。脅しではない。ただの基本ルールだ」

そして、花を撒くような仕草でローブを振った。彼の手から光の輪が蛍のように飛び出し、次々と生徒たちの手首に絡みついていく。

俺は思わず息を止めた。光がこちらへ来る――左手首に、細い輪が巻き付いた。冷たい。

周囲に色が溢れ出した。

黒。紫。金。赤。緑。黄。

だが、俺の手にあるのは……白。青白く、霧の輪のように、消え入りそうなほど希薄な色。

「その指輪が君たちの運命を決める」コスモスの声は、淡々と数式を述べる数学教師のようだった。

「黒――モンスターだ。異形の力を得て、人間性を失う。

紫――悪役ヴィラン。混乱を巻き起こす権利を与えられた者。

金――希少な英雄。完璧に近い超常の力。選ばれる者はごく僅かだ。

赤――純粋な攻撃手アタッカー

緑――一般。支援職サポーターだ。

黄――中級。器用貧乏といったところか」

そして、彼の目が俺に止まった。コスモスが近づく。銀色の瞳に、俺の顔が映り込んでいる。

「そして白……」

「白は欠陥品エラーだ。私のシステムにおけるバグ。力も役割もない。ただの……空虚(NULL)」

周囲の視線が突き刺さる。同情、あるいは嘲笑。後ろでヨガが「ザカ……落ち着け……」と囁く。

しかしコスモスは続けた。「ルールは単純だ。殺し合い、壊し合え。最後まで生き残った者には、この惑星を滅ぼさないという褒美をやる。だが、拒絶するなら……」

彼は空を指差した。「これまでの12の惑星と同じく、文明ごと消去する」

彼は校庭の中央へ戻り、手を挙げた。「ゲーム開始は明日だ。今日は帰って、与えられた運命を味わうがいい」

だが、ドームが開かれる直前、コスモスが再び俺を振り返った。

「お前を除いてな」

指が俺の顔を真っ直ぐに指す。「白の欠陥品。お前にメインステージに立つ資格はない」

反論する間もなかった。白い指輪が突如として熱を帯び、視界が歪み、回転し、激しい音を立てて加速する――高所から真っ逆さまに落ちるような感覚。

吐き気がし、耳鳴りが響く。

視界が晴れたとき、そこにあったのは学校の校庭ではなかった。ヨガも、クラスメイトもいない。

白い砂浜。静かに打ち寄せる波。椰子の木。そして、静まり返った無人島の広い空。

俺は膝をつき、激しく喘いだ。

手首には、あの白い指輪が弱々しく輝いている。

まるで囁きかけるように。

『お前は、お呼びじゃない。ただの捨てられたゴミだ』

「なんで俺だけこんな所に飛ばされなきゃいけねえんだ、クソが!!」

俺の怒号が波の音をかき消した。

「おっ、また誰か来た。ずっと二人きりかと思ったけど、三人目の『お払い箱』がいたんだな」

反射的に背後の森へと振り返る。

そこには、俺と同年代の少年が二人立っていた。一人は白髪で飴を舐めている。もう一人は、親しみやすそうだがどこか謎めいた表情を浮かべていた。

「……誰だ、あんたたち」

「君と同じさ。力が欠陥品だったせいで、捨てられた連中だよ」

謎めいた表情の少年が、静かに答えた。

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