とある喫茶のスタンディングオベーション
<登場人物>
るい(22)
しずく(32)
三人組の男性(50代)
若いカップル(20代)
女性の店員(40代)
とある喫茶。
しずくとるい、三人組の男性、二人の若いカップル、店員の女性は同じ空間にいた。
カランカラン。
喫茶店のベルが鳴る。
木目調の温かみのある小さなお店だ。
若いカップル。
彼女「あの二人、兄弟かな?」
彼氏「いや、手繋いでるしカップルだろ」
彼女「歳の差すごいね」
彼氏「さすがにちょっとな」
彼女「ね」
店員「何にしますか?」
しずく「紅茶とカフェオレお願いします」
店員「かしこまりました」
るい「しずくさん、ありがとうございます」
しずく「いえいえ」
おじさん三人組。
1「おい、隣の席に座ったカップル、若いにーちゃんと女だぜ」
2「おっ、結構美人じゃん」
3「兄弟だろ?」
2「ばか、敬語使ってんだ、会社の上司と部下だろ」
1「いーや、ありゃカップルだぜ」
3「何でわかんだよ?」
1「男の勘よ」
3「そりゃ、当てにならない勘だな」
1「何だとー!?」
2「おい、何か話し始めたぞ!」
しずく「合コン?」
るい「はい、友達に誘われてて。あ、ちゃんと断りますけどね?」
しずく「なんで?行って来たら?」
るい「・・・しずくさん、僕と付き合ってる自覚あります?」
しずく「ごめん、君はまだ若いし視野を広げるチャンスかなって思ってさ」
るい「僕はしずくさんにしか興味ないんです」
しずく「私は君の未来が心配なんだよ」
るい「それは分かってますけど・・・
しずくさんは、僕が若いからっていつも別れる準備してる。」
若いカップル。
彼氏「あれ、めちゃいい人じゃない?」
彼女「そうだね。もっと性悪なキモいおばさんかと思ってたけど。」
彼氏「しかも、なかなか美人じゃね?・・・いだだっ」
耳を引っ張られた彼氏が思わず声を上げる。
一瞬、おじさん三人組が若いカップルを見る。
しかし、るいは若いカップルのことなど眼中にない。
もはや心中穏やかではない。
るい「しずくさんのそういうとこ、ちょっと嫌いです」
しずく「えっ」
しずくが目をまん丸くしている。
るい「嘘です、好きです。」
しずく「かっ・・・」
るい「か?」
しずく「いや、可愛いなーと」
るい「しずくさん可愛いしか言ってくれないじゃないですか。
どうしたら男として見てくれるんですか?」
しずく「見てなきゃこうやって会わないよ。
私、るい君のこと好きだし。」
おじさん三人組は砂糖を投げられた蟻のようにワサワサと身振り手振りで激しく感情を表し合っている。
るい「しずくさんの好きってどういう好きなんですか?」
しずく「どうって・・・一緒にいたらドキドキするし会えないと寂しいし、会えたら嬉しい。」
おじさん三人組。
1「ええ子や」
2「ええ子や」
3「ええ子や」
若いカップル。
彼氏(え、何それ可愛いんだけど!?俺そんな風に言われたことないのに!ぐぬぬっ・・・)
彼女「ちょっと、なに見惚れてんのよ」
彼氏「いや、ちょっと羨ましいな、って・・・いだだっ!」
またも彼女に耳を引っ張られた彼氏。
しかし、誰も二人のことには目もくれず、しずくとるいの会話に聞き入っている。
るい「かっ・・・」
しずく「か?」
るい「可愛いですね、しずくさん」
しずく「もー、るい君こそ私を子ども扱いしてるんじゃ・・・」
るい「しずくさん」
しずく「うん?」
るい「別れるなんて言わないで下さいね」
しずく「私からは言わないよ」
るい「僕からも言いません。
というか、しずくさんと別れるくらいなら死んだ方がマシです。」
若いカップル。
彼氏「うわっ、まさかの彼氏メンヘラ?」
彼女「彼氏君の方がお熱な感じ?」
しずく「え、そんなに・・・?」
るい「はっ、すみません。今のは重かったですよね。」
途端、しずくがるいの両手をガシッと包み込んだ。
しずく「るい君、私決めた。るい君のこと一生幸せにする!」
(((キターーーッ!!!)))
パチパチパチ!
パッと振り返ると、
いつの間にか隣の席にいたおじさん三人組、更にその後ろ側に座っていた若いカップル、黙って見守っていた店員は立ち上がって拍手していた。
僕は急いでしずくさんを連れて外へ出た。
そんな僕の首にしずくさんがマフラーを巻いてくれた。
るい「しずくさんも」
僕もしずくさんの首にマフラーを巻く。
しずく「ありがとう」
手を繋ぎ直し、また僕らは歩き出した。
るい「えへへ、あったか〜い!」
しずく「やっぱり手を繋ぐと温かいね」
るい「はい!」
♦︎その後。
結婚の報告を兼ねて飲み会を開くことになった二人。
しずくの唯一の男友達、"きっちゃん"と"とんちゃん"がしずくに惚れるなんてどんなヤバい男だ、けしからん。
るいとやらに会ってみたいと言い出したのだ。
しずく「あ、きっちゃん、醤油取って」
きっちゃん「へいへい」
とんちゃん「しずくも結婚かぁ」
しずく「してくれるんだって、ふふ」
きっちゃん「デレデレしちゃって」
しずく「ぷっぷくぷ〜」
きっちゃん「そんな変顔してるとシワ増えるぞ」
しずく「いいでしょ別に、って良くないか・・・」
とんちゃん「そんなマジで悩まなくても」
そんな時、るいがしずくの右腕にギュッと抱き付く。
しずく「るい君、どうしたの?どこか具合悪い?」
るいが首を左右に振る。
きっちゃん「構って欲しいだけじゃね?」
とんちゃん「構ってやれよ」
しずく「構って欲しいの?」
るいが黙って頷く。顔が赤いので酔っているらしい。
上目遣いにこちらを見てくる。目がヘニョっとしている。
しずく「可愛い」
しずくは頭を抱えている。
きっちゃん「早よ二人っきりにしたげなさいな」
とんちゃん「二次会はなしだな。うんうん。」
しずく「えー」
るい「しずくさん!」
しずく「びくっ、は、はい」
るい「何でさっきから二人のことばっか見てるんですか?もしかして好きなんですか?」
しずく「何言ってるの。私が好きなのはるい君だけだよ。」
るい「ほんとですかー?」
しずく「そもそも、私はるい君しか見えてないよ。」
るい「むむ、なら許します」
しずく「ありがとう」
きっちゃん「何を見せられてるんだ俺らは」
とんちゃん「さっさと帰りましょ」
いつの間にか、
きっちゃん"と"とんちゃん"はいなくなってるやら、
雪が降り始めるやら。
しずくとるいはタクシーを呼び、二人の家へと帰っていった。




