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助けに来たよ

作者: ぺんきっき
掲載日:2025/10/17

今日はおじいちゃんのお葬式だった。

おじいちゃんは僕のお母さんのお父さんでお母さんはボロボロと大粒の涙を流して泣いていた。

もう立ち上がる気力もないおばあちゃんを支えて必死で頑張って立っているお母さんが可哀相で、そして僕も大好きだったおじいちゃんが死んでしまったのが信じられなくて大声で泣いた。


「おじいちゃんはね、息子がほしかったんだよ」


と言っておじいちゃんは良く僕の頭をクシャクシャと撫ぜた。

お母さんは叔母ちゃんとの2人姉妹だ。

お母さんの妹の叔母ちゃんは

「お父さんは私達の頼みはあまり聞かなかったのに和樹(僕の名前だよ)の言うことならなんでも聞くのね」とよく言っていた。

その度におじいちゃんは

「和樹が一番かわいいから仕方ないだろ」

と満面の笑顔を見せ僕の頭をクシャクシャとした。


僕はおじいちゃんの事が大好きだった。

それなのに・・・ある日、持病の喘息の発作がトイレで起きて、そのまま息が出来なくなりおじいちゃんは倒れてしまった。

おばあちゃんが一人でいた為、救急車を呼ぶことしか出来ず、救急車が来たときにはもうおじいちゃんは・・・。

おばあちゃんの取り乱しようは大変だった。お母さんは必死でおばあちゃんを慰め自分は涙をこらえていた。

でも、そんな頑張りもおじいちゃんとの最後の別れの時までは持たなかった。

お母さんは大声で

「お父さん、お父さん!」と言って泣いていた。

僕はもう3年生なのだからお母さんを支えなくっちゃと思ったが一緒に

「おじいちゃん、おじいちゃん!」と言って泣いてしまった。

男の子は僕一人だと思っても涙が後から後から出てくる。

本来ならもう一人いる男の子の僕のお父さんはその場にいなかった。


「どうしても仕事が・・・すまない」と言って出席しなかった。


そして、その時からお母さんとお父さんの仲は険悪になった。


二人とも本当は仲良しだったのにどうしてしまったんだろう。

僕は毎日が悲しかった。


おじいちゃんが亡くなってから数週間たった時のことだった。

僕はもう9時ごろにはまぶたが半分閉じかけていた。

仕事でいつも深夜に帰ってくるお父さんを待つお母さんの事が気になったが

「和樹、そこで寝ないでちゃんとお布団に入って寝なさい」

と言うお母さんの言葉にしたがい、布団にもぐった。

すぐに眠りについた。


そして・・・夢を見た。


「和樹、和樹!」


この声は!おじいちゃんだ!


僕は夢の中で顔を上げた。

「おじいちゃん!」


おじいちゃんは白いもやのかかった中でニコニコ笑いながら僕の頭を撫ぜた。

クシャクシャっとね。


「和樹を助けに来たよ」

おじいちゃんはそう言ってもう一回僕の頭を撫ぜた。


「ありがとう!おじいちゃん!僕そういえば困ってるんだ。明日出す宿題がまだ出来てないんだ!手伝ってくれるの?」


おじいちゃんは頭を横に振った。


「明日ね、1階の押入れにある小さい引き出しの上から3番目を開けて、その中の写真を寝る前に玄関におくんだ。出来るかな?」


僕はなぜそれが僕を助けるのかよくわからなかったが

「出来るよ!」と言った。


おじいちゃんは頷いて

「頑張れ!」と言って僕の頭をクシャクシャして白いもやの中に消えていった。


翌朝、目が覚めた時おじいちゃんが言った事ははっきり覚えていた。

学校から帰るとお母さんの隙を狙い、押入れの引き出しを開けた。

数枚の写真が出てきた。

すごい若い頃のお母さんとお父さんだ。

僕はその一枚を抜き取って、玄関に寝る前においておいた。


そして・・・その日の夢にもおじいちゃんは出てきた。


「僕ちゃんと出来たよ」とおじいちゃんに言うとおじいちゃんはニコニコ笑って


「よし!それじゃあ、次の指令だ」

と言って今度は僕にコスモスを摘んでくるように言った。

僕のうちの近くには空き地があって誰が植えたのかわからないけど、コスモスが咲いている。

勝手に種が飛んではえているので誰が摘んでも怒られない。


僕は頷いた。


そして、次の日。

僕は空き地でコスモスを摘んだ。

そしておじいちゃんに言われたように、寝る前まで隠して置いて、こっそりとインスタントコーヒーの空き瓶に入れて玄関に置いた。


これで僕に何が起きるのか?僕はワクワクドキドキしながら毎日眠りについた。


おじいちゃんは毎日、夢に出てきて僕に妙な指令を出した。

ハンカチを置いておけだの。ビー玉を置いておけだの。僕の赤ちゃんの頃のおもちゃを置けというのあった。


そんなある日のこと・・・珍しく僕が起きている時間にお父さんが帰ってきた。


「会社が倒産した」と青ざめた顔でお父さんは項垂れて言った。


倒産って、何?って言おうとしたら一瞬固まってたお母さんが顔をスパッと上げて言った。


「大丈夫。家族でがんばって行きましょう。こんな時は家族が力を合わせないとどうするの!」

と涙を流しながら言った。


「ありがとう」

そう言うお父さんの目にも涙が流れていた。


それから後は僕は話が半分ほどよくわからなかったけど、お父さんは会社は倒産になったけど、以前から会社に出入りしていた業者の人に「うちに来ないか?」と言ってもらえたそうだ。

だから、お給料は減るけど当面の生活は大丈夫だと。


それから、もっと二人は驚く話をした。

僕が置いた、写真や花は忘れていた二人の思い出の物だったそうだ。お互いが「思い出してもう一度頑張りましょう」と言う意味でさりげなく玄関に置いていたと思っていたらしい。

コスモスは若い頃お金のなかったお父さんがあの空き地で一杯摘んで来てお母さんにプロポーズしたんだって。

お父さんもお母さんもそれを見て若い頃の気持ちを思い出したそうだ。

二人は僕の顔をまじまじと見た。


「僕じゃないよ。僕がそんな事を知ってるわけないよ」


そういうと僕はもう眠たくなって自分の部屋に引っ込んだ。

そうだよ、僕じゃないんだ。おじいちゃんなんだ。


その日の夢にもおじいちゃんが出て来た。


僕の頭をクシャクシャってするとこう言った。

「もう、大丈夫だな。それじゃあ、おじいちゃんは行くとしようか」


「どこへ?おじいちゃん行かないでよ!」

と僕が言うと

「なあに、またいつか会えるさ」

そう言うとおじいちゃんはウィンクをして消えようとした。


「おじいちゃん!僕まだ何も助けてもらってないよ!」

僕は叫んだけど、おじいちゃんは靄の中に溶けて言った。


僕は悲しくって目が覚めた。

お茶を飲もうと下へ降りていくとお母さんが話す声が聞こえてきた。

こっそり聞いたその内容はこうだった。

お母さんはおじいちゃんのお葬式にも出なかったお父さんを恨んでいたと。

毎晩、遅くに帰ってきて家族の事もかえり見ないお父さんが嫌いになりかけていたと。

だから、僕と一緒にこの家を出て行こうとしていたと。


・・・すっごいピンチだったんだ、僕。ここを出て行ったら友達のゆう君とももう遊べないじゃないか!

そして何よりお父さんに会えない・・・


お父さんは会社が倒産しそうで毎日遅くまで走り回って頑張っていた。

毎日、毎日。でも、僕が置いた物を見て「家族がいる事」を思い出したんだって。

だから、最後まで頑張れたと。


お母さんも、あの品物を見て若い頃を思い出したそうだ。

そしてもう一度頑張ってみようという気になったとお父さんに言っていた。


めでたし、めでたしだなぁと思って階段を降り僕は目を擦りながら


「お茶!」と言った。


二人は僕を見て笑った。


お茶を飲んでもう一度布団に入って僕は思った。

やっぱりおじいちゃんは僕を助けに来たんだ。

いや、もしかするとお母さんを助けに来たのかもしれない。


そう思いながら僕はすぐに眠ってしまった。

誰かが頭をクシャクシャって撫ぜた感じがしたけど、・・・もう今度は夢をみなかった。


2008年の作品

<当時のあとがき>


この話は私に起こったことを元に書きました。

父が喘息の発作で倒れて脳死状態になり、本当に体の全機能が止まってしまう前日に祖父が、父を「迎えに来た」と言う夢を見たこと。

夢枕って言うのかな枕元にもうかなり前に亡くなった祖父がいつも被っていたよそ行きの帽子を被り座っていたんですよね。

「おじいちゃん、お父さんを助けて!そっちからポンと背中を押せば戻ってこられるでしょ」

と夢で私が言ったら祖父が黙って首を振ったんです。

今日か・・・今日か・・・と思っていた私が無意識のうちに見た夢。

翌日、父は完全に心臓が止まってしまいました。


それと、うちの大魔王が遊び歩いて家の事を顧みなくなった時、今度は夢に父が出てきて私が「なんとかして、お父さん!大魔王に罰を当ててよ!」と言ったら父が

「任せとけ!」と。


数週間後、大魔王がどえらい目に会いました。

ただ、人を呪わば穴二つで大魔王が天罰のせいで家族が大変な目にあいました。


ただ・・・大魔王はそのせいで家族の元に帰ってきました。

この天罰がなかったら多分私達は離婚していたと思います。


やはり父は私の為に何かをしてくれた・・・と思いたい私です。


***********************************

大魔王と言うのは当時の私のブログでの呼び方。

今は「おとーさん」に進化してます。

結局別れておりません。


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