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第十二話:健気な弟子たち

 翌朝、私は厨房の大きな窓から差し込む蜂蜜色の光で目を覚ました。

 小鳥たちの優しい合唱が、新しい一日の始まりを告げている。まだ真新しい木の香りがする部屋で、私はゆっくりと体を起こした。

 昨日はあれから、極度のマナ枯渇で泥のように眠ってしまったけれど、一晩ぐっすり眠ったおかげですっかり体は回復していた。


「おはよう、シュシュ」


 私の足元で丸くなっていたシュシュが、ふぁ~、と大きなあくびを一つした。

 私がベッドから降りると、彼ももぞもぞと体を動かして、私の足にすり寄ってくる。


 動きやすい簡素なドレスに着替えて、シュシュと一緒に一階の厨房へと降りていく。


 すると、そこにはもう、先客がいた。


 素焼きのビスケットみたいな、温かみのある土色の体。私よりも少しだけ背の低い、その人影。


 ビスキュだった。


 彼は厨房の中央に、まるで衛兵みたいに直立不動で立って、私たちが降りてくるのを待っていたらしい。

 私が姿を現したのに気がつくと、そののっぺらぼうの顔をこちらに向けて、ぺこり、と一つ、とても丁寧にお辞儀をした。


「おはよう、ビスキュ。昨日は、よく眠れたかしら」


 もちろん、返事はない。でも、彼がこくりと一つ頷いただけだったけれど、いろいろと彼がいいたいことははっきりと分かった。

 つまり、ゴーレムである、ビスキュはお仕事を待っているのだ。

 シュシュは、彼は私の隣からとてとてと駆け出すと、ビスキュの足元で「わふん!」と一声、親しげに鳴いた。

 ビスキュも、その小さな歓迎に応えるように、ゆっくりとその大きな土の手を伸ばし、シュシュの頭を、ぽん、ぽんと、とても優しく叩いてあげている。


「ふふっ、二人とも、すっかり仲良しね。さあ、いつまでもこうしてはいられないわ」


 私は、ぱん、と景気付けに両手を叩いた。


「今日から、あなたにはたくさん覚えてもらうことがあるの、ビスキュ。私の助手になってもらうためにね。まずは、厨房の掃除から始めましょう!」



 全ての作品は、優れた環境から生まれる。

 それは、パティシエとしての私の揺るぎない哲学の一つだった。


 塵一つない、ぴかぴかに磨き上げられた厨房。

 整理整頓された調理器具。

 衛生管理の徹底。


 そのどれが欠けても、お客様に心から喜んでもらえるお菓子は作れない。


「いいこと、ビスキュ。まず、厨房で一番大切なのは、清潔さです」


 私は、ビスキュの前に立つと、まるで学校の先生みたいに、人差し指をぴんと立ててみせた。

 ビスキュは、こくこくと真剣な面持ちで頷いている。


「作業を始める前と、終わった後には、必ずこの作業台を、綺麗な布巾で隅々まで拭き上げます。いい? 隅々まで、よ」


 私はお手本を見せるように、濡らした布巾を固く絞り、広々とした木製の作業台を、きゅっきゅと音を立てて拭き始めた。

 ビスキュは、その一挙手一投足を、瞬きもせずにじっと見つめている。

 まるで、私の動きの全てを、その目に焼き付けているかのようだ。


「はい、どうぞ。次は、あなたの番よ」


 私が布巾を手渡すと、ビスキュはそれを恭しく両手で受け取った。

 そして、私がやったのと全く同じように、作業台を拭き始めた。


 その動きは、驚くほど正確だった。

 布巾を絞る力加減、台を拭く時の腕の動かし方、そして、拭き残しがないように、端から順番に、規則正しく拭いていく丁寧さ。


 けれども、それは私の動きをただ真似ているだけじゃなかった。


 その動きの中に、『この場所を、塵一つない状態にする』という、強い意志が込められているのが、私にははっきりと分かった。

 やがて、ビスキュが作業を終えた作業台は、私が拭いた時よりも、もっとずっと、ぴかぴかになっていた。


 まるで、鏡みたいに、天井の木の梁が、うっすらと反射している。


「……すごいわ、ビスキュ」


 思わず、感嘆の声が漏れた。

 なんて、真面目で勤勉な子なんだろう。

 これなら、安心して厨房を任せられる。


「合格よ! 素晴らしいわ!次は、床の掃き掃除。それから、使い終わった調理器具の洗い方。全部、今日中に覚えてもらうわよ!」


 それから半日、私はビスキュに厨房の衛生管理に関する全ての知識を、みっちりと叩き込んだ。

 彼は、どんな些細なことでも、一度教えれば、二度と間違えることはなかった。


 それどころか、私が教えた以上のことを、自分で考えて実行し始める始末だった。


 私が「使い終わったボウルは、すぐに洗うこと」と教えれば、彼はボウルを洗うだけでなく、乾かした後に、大きさの順番通りに棚に綺麗に並べ直す。

 私が「床に落ちた小麦粉は、すぐに掃くこと」と教えれば、彼は床を掃くだけでなく、その小麦粉がどこから落ちたのかを突き止め、粉袋に開いていた小さな穴を魔法で作り出した粘土で、きゅっと塞いでしまう。

 その完璧主義な仕事ぶりは、もはや感心を通り越して、少しだけ呆れてしまうほどだった。


「……あなた、もしかして、前世は超一流のハウスキーパーだったのかしら」


 私の冗談めかした呟きに、ビスキュは「めっそうもございません」とでも言うように、ぶんぶんとその土の頭を横に振ってみせた。

 そのどこか愛嬌のある動きに、私はまた、くすりと笑ってしまった。



 厨房の掃除という、地味だけれど一番大切な仕事をマスターしたビスキュに、私は、いよいよ、お菓子作りの基本を教えることにした。

 記念すべき、その最初のレッスン。

 その教材に、私は、迷うことなく、あのお菓子を選んだ。


「いいこと、ビスキュ。これから、私たちが作るお菓子の中で、一番、基本にして、一番、大切なお菓子を作ります」


 私は、作業台の上に、森で採ってきたばかりの材料を並べた。

 香ばしい木の実、甘い樹液、そして、甘酸っぱい紫色の果実。


「『森の恵みのパイ』。このお菓子が、全ての始まりなのよ」


 私がそう言うと、ビスキュはこくりと、いつも以上に、深く、力強く頷いた。

 彼のその態度から、このレッスンに対する真剣な想いが、ひしひしと伝わってくる。


「まず、パイ生地作りから。見ていてちょうだい」


 私は、まず、自分がお手本を見せることにした。

 木の実を石の器に入れ、ごりごりと力強くすり潰していく。


「この時の力加減が、大事なの。あまり細かくしすぎると、ナッツの油分が出すぎて、生地がべたついてしまう。かといって、粗すぎると、生地がまとまらなくなる。この、ざらりとした感触が、指先に残るくらいが、ちょうどいい塩梅よ」


 私は、ビスキュに、すり潰したばかりの粉を、指で触らせて、その感触を覚えさせる。

 ビスキュは、その土の指先で、とても、とても、慎重に、粉の粒子を確かめていた。

 次に、水を加えて、ひとまとめにしていく。


「ここでも、水の量は、その日の湿度によって、微妙に変えなくてはならないわ。生地の硬さを、耳たぶくらい、とよく言うけれど、それも、あくまで目安。大事なのは、自分の手の感覚を信じることよ」


 出来上がった生地を、麺棒で丁寧に伸ばし、パイ皿に敷き詰めていく。

 フィリング作り、格子模様の組み立て。

 その全ての工程を、私は、一つ一つ、言葉で丁寧に説明しながら、ビスキュに見せていった。

 彼は、その間、一言も発さず(もともと話せないけれど)、身じろぎもせず、ただじっと、私の手元を見つめ続けていた。

 その集中力は、尋常なものではなかった。

 やがて、焼き上がったパイが、石窯から取り出される。

 厨房に、むせ返るような、甘くて香ばしい匂いが満ち満ちていく。


「……はい、ここまでが、一連の流れよ。何か、質問はあるかしら?」


 私がそう問いかけると、ビスキュは、しばらくの間、じっと焼き上がったばかりのパイを見つめていた。

 そして、おもむろに首を傾げた。

 そののっぺらぼうの顔が、私に問いかけている。


『なぜ、最後の格子模様は、七本と八本で組むのですか? 八本と八本の方が、均等で美しいのではありませんか?』と。


 私は、その鋭い質問に、はっとした。


「……よく気がついたわね、ビスキュ。それはね、焼き上がりの美しさのためよ。奇数と偶数で組むことで、焼き上がった時に、ほんの少しだけ、動きのある表情が生まれるの。それに、火の通りも均等になりやすいのよ」


 私がそう答えると、ビスキュは、なるほど、とでも言うように、こくこくと何度も頷いた。


 すごい。


 彼は、ただ私の動きを記憶しているだけじゃない。

 その動きの一つ一つに込められた、意味まで、理解しようとしているのだ。

 この子なら、きっと、最高のパティシエになれる。

 私は、確信した。


「さあ、次はあなたの番よ、ビスキュ。今、私が見せたのと、全く同じものを、あなた一人で作ってみてちょうだい」


 私のその言葉に、ビスキュは、ぺこり、と一つ、力強くお辞儀をした。


 そして、彼は、作業台の前に立った。

 その瞬間、彼の纏う空気が、がらりと変わった。


 先ほどまでの、少しおっとりとした見習いの雰囲気は消え失せ、そこに立っていたのは、一切の妥協を許さない、真剣なまなざしの、一人の職人だった。


 木の実をすり潰す、そのリズミカルな音。

 生地をこねる、その無駄のない動き。

 麺棒で生地を伸ばす、その驚くほど正確な力加減。


 その全ての動きが、先ほど私が見せたお手本と、寸分違わなかった。


 いや、それ以上だった。


 計量の正確さは、私が魔法で作った秤が狂っているのではないかと疑うほど、ミリグラムの単位まで完璧。

 生地を混ぜ合わせる速度と回数は、まるでストップウォッチで計ったかのように、私のレシピ通り。


 その仕事ぶりは、もはや、人間業ではなかった。


 最新鋭のオートメーション機械。

 寸分の狂いもなく、同じ製品を、何千、何万と作り出す、無機質な機械たち。

 ビスキュの動きは、それに匹敵するほど、正確無比だった。


 でも、決定的に違うものが、一つだけあった。

 彼の動きには、『心』が込められていたのだ。


 生地を扱う、その優しい手つき。


 フィリングの果実を、一つも潰さないように、そっと混ぜ合わせる、その丁寧さ。

 格子模様を、一本一本、愛情を込めて編み上げていく、その真剣な姿。


 それは、ただの作業じゃない。


 彼が今作っているお菓子に対する、深い愛情と、敬意の表れだった。

 やがて、ビスキュが作り上げたパイが、石窯で焼き上げられる。

 出来上がったのは、私のお手本と、全く同じ、いや、それ以上に美しい、完璧な『森の恵みのパイ』だった。


 こんがりとした、均一な焼き色。


 格子模様の隙間から、宝石みたいにキラキラと輝く、紫色のフィリング。

 そして、厨房を満たす、むせ返るような、幸福な香り。

 私は、しばらくの間、言葉を失って、その作品を、ただ呆然と見つめていた。


「……参ったわ」


 ぽつりと、心の底からの声が漏れた。


「ビスキュ、あなた、天才よ。たった一度見ただけで、ここまで完璧に再現するなんて……。私、あなたという、とんでもない助手を生み出してしまったみたいね」


 私が、心からの称賛を送ると、ビスキュは、少し照れくさそうに、その土の頭を、ぽりぽりと掻いてみせた。

 その、あまりにも人間らしい仕草に、私は、また、たまらなく愛おしい気持ちになった。



 厨房での仕事は完璧にこなせるようになったビスキュ。その成長は私の想像を遥かに超えるものだった。私が朝、目を覚ますと、厨房にはもう、焼き上がったばかりの三十個のパイが、ずらりと綺麗に並んでいる。そのおかげで、私は日中の時間を、森での食材探しや、新しいレシピの開発に、たっぷりと使えるようになったのだ。


 でも、彼に覚えてもらわなくてはならない、もう一つの大切な仕事が残っていた。


「ビスキュ。今日は、少しだけ遠出をしますよ」


 ある晴れた日の朝、私はエプロンを外すと、ビスキュに向かってにっこりと微笑みかけた。彼はこてんと不思議そうに首を傾げている。


「私が冒険者として家を空けている間、あなたには、このパイを町の広場で売ってもらわなくてはならないの。だから今日は、そのための特別レッスンです」


 そう、接客業だ。

 無口で(言葉を発せないのだから当然だけれど)、表情もないゴーレムに、お客様への対応が務まるだろうか。少しの不安はあった。でも、この子の真面目さと優しさがあれば、きっと大丈夫。私はそう信じていた。



 フローリアの町の広場は、今日も変わらぬ活気に満ち溢れていた。

 いつもの場所に、私たちが木の箱を置くと、さっそくどこからともなく冒険者さんたちが集まってくる。


「よお、嬢ちゃん! 今日も来たぜ!」

「……ん? なんだ、そのでかい人形は。荷物持ちかい?」


 最初に声をかけてくれた赤毛の冒険者さんが、私の隣に立つビスキュを見て、怪訝な顔をした。無理もない。町の人々にとって、ビスキュの姿を見るのはこれが初めてなのだから。


 周りの人々も「なんだあれは」「ゴーレムか?」「あのお嬢さんの連れらしいぞ」と、ひそひそと囁き合っている。


「皆様、ご紹介します。この子はビスキュ。私の助手です」


 私がそう紹介すると、ビスキュは教えた通りに、その場で深々と、とても丁寧にお辞儀をした。そのあまりにも律儀な姿に、冒険者さんたちは一瞬、ぽかんとしている。


「そしてビスキュ、今日からあなたがお店の主役よ。さあ、練習通りにやってみてちょうだい」


 私が小声で囁くと、ビスキュはこくりと一つ頷いた。

 そして、木の箱の前に直立不動で立つと、おもむろに、魔法で作った小さな木の看板を、箱の横にことりと置いた。

 看板には、私の拙い文字で、こう書かれている。


『森の恵みのパイ 一つ銅貨五枚』

『店主は修行中です。至らぬ点、ご容赦ください』


 その、あまりにも健気な看板を見て、冒険者さんたちが、ぷっと吹き出した。


「ははっ!なんだそりゃ!修行中だってよ!」

「ゴーレムの店主たあ、面白いじゃねえか!」


 赤毛の冒険者さんが、面白そうにビスキュの前に立つ。


「へい、大将!パイを一つ、頼むぜ!」


 ビスキュは、その言葉に反応すると、再び深々とお辞儀をした。

 そして、赤毛さんが差し出した銅貨を、とても慎重な手つきで受け取ると、木の箱からパイを一つ取り出し、これまた丁寧に、両手でそっと差し出したのだ。

 そこには「お客様に商品を届ける」という、誠実な意志がはっきりと込められていた。


「……おう。サンキューな」


 赤毛さんは、少しだけ面食らったようにパイを受け取ると、さっそく大きな口でがぶりと食らいついた。


「うん、うめえ! 嬢ちゃんが焼くのと、寸分違わねえ味だ!」


 その言葉が、呼び水になった。

 周りで遠巻きに見ていた他の冒険者さんたちや、町の人々が、おそるおそる、ビスキュの前に列を作り始める。


「じゃあ、俺も一つ」

「私も、いただこうかしら」


 ビスキュは、お客様が来るたびに、ぺこり、ぺこりと、何度も丁寧にお辞儀を繰り返す。

 言葉はない。笑顔もない。

 でも、その一生懸命な姿が、なぜだか人々の心を温かい気持ちにさせるらしかった。


「なんだか、可愛いわね、あの子」

「ああ。真面目なのは伝わってくるぜ」


 最初は怖がって、お母さんのスカートの後ろに隠れていた小さな子供も、やがて興味津々といった顔で、ビスキュの前に歩み寄った。


「……これ、ください」


 小さな手が、銅貨を差し出す。

 ビスキュは、その小さな子供の目線に合わせて、大きな体をゆっくりと屈めると、今までで一番、深く、優しくお辞儀をした。そして、パイを渡す時も、子供が落とさないように、その小さな手に、そっと乗せてあげるのだった。

 その、あまりにも優しいやりとりに、周りで見守っていた人々から、ふわりと、温かい笑みがこぼれた。

 私は、少し離れた場所から、その光景を、シュシュと一緒に見守っていた。

 胸の奥から、じんわりと、温かいものが込み上げてくる。


「……すごいわ、ビスキュ。あなたは、パティシエになるだけじゃなく、お店番にもなれるわ」


 彼なら、大丈夫。


 私がいない間も、きっと、この町の皆に、美味しいお菓子と、温かい気持ちを届けてくれるはずだ。


 その日のパイは、いつもよりもずっと早くに売り切れた。


 人々は、帰り際に、私にではなく、ビスキュに向かって「美味しかったぜ、大将!」「また明日も頼むな!」と、親しげに声をかけていく。

 ビスキュは、その一つ一つの声に、ぺこり、ぺこりと、律儀に頭を下げ続けていた。


 こうして、私の助手は、お菓子作りの技術だけでなく、お客様の心を掴むという、商売で一番大切な魔法も、あっという間にマスターしてしまったのだった。



 ビスキュが、私の助手として、完全に機能し始めてから一週間が経過した。

 もう、私が厨房にいなくても、彼は一人で『森の恵みのパイ』を焼き上げることができる。


 いや、それだけじゃない。

 私が留守の間、この家と厨房を守り、そしてあの町の広場で待ってくれているお客さんたちを、がっかりさせることがないだろう。


 これで、ようやく準備は整った。


「ビスキュ、シュシュ」


 ある日の夕食後。

 私は、暖炉の前で寛ぐ二人の家族に向かって、改めて、宣言した。


「私、明日から、本格的に冒険者としてのお仕事を始めようと思います」


 お店を開く、という、私の大きな夢。

 そのためには、莫大な資金が必要になる。

 広場でパイを売るだけでは、何年かかるか分からない。

 もっと、大きなお金を稼ぐために。

 そして、私の魔法の力を、もっともっと、高めるために。


「ビスキュ。私がいない間、この家と、お客さんたちのことを、お願いできるかしら」


 ビスキュは、こくりと、力強く頷いた。

 その姿には、もう、何の不安も感じられない。


 彼なら、大丈夫。


 私の大切な場所を、完璧に守り抜いてくれるはずだ。


「シュシュ。あなたは、私と一緒よ。これから、少しだけ、危険な冒険が始まるわ。あなたの力が必要になる」

「わふん!」


 シュシュが、頼もしく一声鳴いた。


 助手と相棒。

 この二人、いや、一匹と一体がいれば、私は、どんな困難だって、乗り越えていける。


 私は、窓の外に広がる、星空を見上げた。


 私の夢は、あの星みたいに、まだ遠くて、手が届かないかもしれない。


 でも、一歩ずつ、確実に、近づいている。

 その確かな手応えが、私の胸の中にはあった。


 明日、ギルドへ行こう。


 そして、私の未来に繋がる、新しい依頼を探すのだ。


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