第17話 番外編 アイ。
アイリーンが好きだった別荘でゆっくりしようと思っていたら、サーナたちが来ていた。
「あらまあ、お父様。バカンスなの?」
サーナは一番上の孫息子の首根っこを捕まえたままで、俺が来たことを驚いているようだ。
相変わらず、騒がしい奴だ。リシュも笑っている。
「そうだ。」
「まあ、だって、今、大戦がはじまりそうで騒いでるんでしょう?外務大臣がバカンス取ってていいわけ?」
「おかげで、3日しかない。」
「あら。じゃあ、孫を見れてよかったじゃない。みんな!おじいちゃまが来たわよ!!」
もう少し、静かにできないのか?
黒髪に褐色の肌を持った私たちの娘、サーラは、イングに来てからしぶしぶ学校に通っていたが、そこで一つ年下の男の子に恋をし、猛烈にアタックして結婚した。
…誰に似たんだか。
今は婿と二人で領地経営をしながら子育て真っ最中だ。乳母もいるが、なるべく自分でやりたいのだそうだ。それにしても、男の子3人は大変そうだ。仕事もあるし。
「だって、お母様にそうしてもらったもの。」
アイリーンは…そうしていたな。確かに。
「自分が親にしてほしかったことを、みんなやってあげたいのよ。」
「例えば?」
「一緒に笑って話しながらご飯を食べるとか、さみしい時は抱きしめてあげるとか、なにか上手にできたら、褒めてあげるとか、ね。」
「……」
「あんたももちろん、協力してよね。」
俺たちは良い家族になれたかな?アイリーン。
アイリーンが最後に使っていた部屋は、そのままにしておくように言ってある。
久しぶりにドアを開ける。
シヴァ風のベッドカバーと本があふれそうな本棚。
そして…壁に飾られた風景画。
椅子を引き寄せて、座って、湖沼が描かれた絵を眺める。
俺たち、喧嘩ばっかりだったな。ふふっ。
あの時も口げんかしていた。
いつも4人だったな。あそこに居場所があることで、俺はどんなに救われただろうか。ジョセフィンがいなくなり、アルフレットは見知らぬ人と結婚し…まさかお前までいなくなるなんて思いもしなかった。アイリーン。俺の親友だろう?
「バカねえ」って言ってみろ。
「あ、いたいた、おじいちゃん。ご飯ができたよ。一緒に行こう」
サーナの3番目の孫息子が、俺を迎えに来てくれたので、かがんで手をつなぎながら食堂に向かう廊下を並んで歩く。
「ねえねえ、おじいちゃんて、どうしていつも黒い服しか着ないの?」
「ん?おばあちゃんを愛しているからだよ。」
「ふーーーん。アイ?それって、なあに?」
「そうだね…おじいちゃんもまだよくわからないんだけど、一つの形じゃなくてね、いろいろな形があるんだよ?」
「ふーん。それって、むずかしい?」
「どうだろう。きがつくかどうか、かもしれないね」
眩しいほどにぎやかな食堂に、孫に手を引かれて入っていく。
毎日、暑い日が続きますね。皆様もお体お大事に!水分・塩分、お忘れなく!




