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第76話 全ての決着

 俺達は光の神剣を振り切った後、全てを失って呆然とするローゼマリーの元へ近付いていく。

 そのうちに奴も正気に返ったのが見て取れたけど、最早身体を動かす力すら残っていないのか、立ち上がる事も出来ない様だった。


「……何の用? 私を蔑みでも来たのかしら?」

「アンタの[絶対なる魅了(テンプテーション)]は危険過ぎるからな。この場で止めを刺させて貰う」


 俺の言葉を聞いて、ローゼマリーは最初こそぽかんとしていたけど、すぐに強気な表情になって哄笑し始める。


「本当に油断も隙も無いのね。でも、その方が私も踏ん切りを付け易いわ――造物主よ! この世界をリセットして巻き戻しなさい!」


 ローゼマリーは傲岸不遜にそう宣言したけど、何も起こる様子はなく、ただ発した言葉が木霊こだまするだけだった。

 その事に奴は一瞬言葉を失っていたけど、すぐに焦った様に繰り返す。


「造物主よ、何故応えない! 私を見捨てると言うのか! 答えろ!」

「アンタの言う『造物主』が本当にいたのかは分からない。だけど、ソイツが悪さをしていたのなら、女神アストレアも黙っていないんじゃないか?」

「そんな……、ようやくここまで来たのに……」


 俺の言葉を聞いて、ローゼマリーは今度こそ力無く放心していた。


 俺の言葉ははったりではなく、最後の光の神剣の一撃で、奴を取り巻く全てを断ち切った手応えがあったからこその言葉だった。

 転生時に『世界を救って欲しい』と頼まれた時は戸惑ったけど、いざ達成したとなると、そう分かる様になっていたらしい。


 やがて俺の言葉が理解出来たのか、ローゼマリーは俯いて表情を隠すと、暗い声で笑い出す。


「ふ……、ふふ……。そう、そう言う事。私を造物主の使徒とするなら、貴方は女神アストレアの使徒だったという訳ね。それなら、敵わないのも道理だわ……」


 そこまで言うと、奴は俺達を見上げ、射殺さんばかりの目で睨んだ。


「でもね! 私の野望を邪魔した落とし前だけは付けさせて貰うわ! これで貴方達も道連れよ――[限界突破(オーバードライブ)]!」


 ローゼマリーがそう言って魔力を込めると、神秘の石碑や魔王の躯に残っていた力が一気に暴走を始める。

 自分もろとも周りの全てを木っ端微塵にしようとする、奴の怨念染みた悪足掻きに対し、最愛の人を護るべく俺は全てを賭けて立ち向かう!


「全てを賭けて護り切れ――[ファーブニル・レガリア]!」


 [ファーブニル・レガリア]がローゼマリーの[限界突破(オーバードライブ)]と激突して光り輝く中、俺の意識はそのまま薄れていった――


◆ ◆ ◆


 その後、意識を取り戻してみると、辺り一面が光に満ちた、純白の世界に立ち尽くしている自分に気が付く。


 それから、ここが何処で自分がどうなったのかを何となく把握していると、目の前に空色の髪と瞳を持った女性が現れた。

 ()()とは違い、その女性が何者なのかを理解して、俺は彼女に話し掛ける。


「お久しぶりです。俺を転生させたのは貴方だったんですね、聖女レフィア様」

「はい。その通りです、竜騎士ドラグーンフェリクス。見事に私の依頼を叶えて頂き、本当にありがとうございました」


 聖女レフィアはそう答えて、淑女の最敬礼をとる。

 彼女が何者かについて、以前にティリアと話した際にもしかしてとは感じていたけど、こうして対面してみると少なからず驚く。

 それがレフィアにも伝わったのか、彼女はにっこりと微笑んで告げる。


「何故、女神アストレアでは無いのか、とお思いになった事と思います。女神様はこの世界と貴方が元いた世界との間に出来てしまった繋がりを断つべく、私に世界の管理を委任して原因を探っておりました」


 ローゼマリーの語った『造物主』にも関わる話に、俺は頷きを返す。


「その要因は、互いの世界を結び付ける程の強さを持った、二人の人物の情念でした。更には、一定期間の時間が繰り返しループし始めた事でそれは絡み合い、二つの世界を崩壊に導く寸前だったのです」


 しかし、続く言葉は予想外で、思っていた以上に危うい事態だった事に驚く。

 そんな俺を見て、レフィアは微笑みながら再度礼をする。


「そんな絡まった糸の様な状況を、貴方が断ち切ってくれた。貴方は二つの世界を救った救世主なのですよ」

「そう……ですか。貴方の依頼を果たせて良かったです」


 ティリア達だけでなく、元の世界の家族や友人達の運命も賭かっていた事に驚いたけど、全てを無事に終えられた事にほっとする。

 そんな俺を見て、レフィアは優しく微笑んでから、三度頭を下げる。


「そして、聖女ティリアも救って頂き、ありがとうございました。あの子には、私とジークの不始末を全て押し付けてしまうところだった。それを貴方が救い、幸せも与えてくれた。不甲斐ない前任者として、感謝の念に堪えません」


 レフィアがそう礼を言うのを聞き、今度は胸が締め付けられそうな想いに駆られる。

 二つの世界を救えた事は誇らしく感じるけど、ティリアと一緒の未来が見られない事に寂しさを感じていると、レフィアが問い掛けてくる。


「あの子の事を愛しているんですね」

「はい。ティリアが傍に居てくれたから、ここまで戦ってこれた。彼女と一緒でなければ、途中で負けていたでしょう」


 それに対して、俺はレフィアの目を真っ直ぐ見て、そう答える。


 初めは、ただ救いたいとそう願っていた。

 それが、何時からかお互いに心を通わせ合うようになって、愛する想いを知っていった。

 ティリアのおかげで暖かな幸せを知り、それを守る想いが生まれたからこそ、俺は最後まで戦い抜けたのだと思う。


 そんな万感の想いが通じたのか、レフィアは優しく微笑んで告げる。


「そんなにも、あの子の事を想って頂いてありがとうございます。これは、私の依頼を叶えてくれた貴方へ、せめてものお礼です――[生命再生(リザレクション)]」


 レフィアが[生命再生(リザレクション)]を唱えると、にわかに現世との繋がりが感じられ、自分の生命がまだ尽きていない事を知った。

 現世との繋がりが復活したからなのか、辺りの光が強くなり、徐々に何も見えなくなっていく。


「あの子と一緒に幸せになって下さい。貴方達の未来が幸多からんことを願っています」

「……ありがとうございます。ティリアと一緒に必ず幸せになりますから、見守っていて下さい!」


 レフィアからの粋なお礼を受けて、感謝の言葉を返しながら、俺は現世へと戻っていく。

 さあ、二人で幸せになるために、ティリアの元へ戻ろう。


◆ ~Another point of view~ ◆


 フェリクスを現世へ帰しながら、レフィアは想いを馳せる。


 あの二人がいれば世界はもう大丈夫だろうし、彼ら自身もこのまま幸せな未来を歩むだろう。

 ここに至るまでの過程で、自分とジークの様な事にならないかハラハラしたものの、今の彼らなら大丈夫と思っていると、不意に懐かしい声が聞こえてくる。


「……行ったか」


 その声を聞いて、レフィアは驚きつつも平静を装って振り返る。


「はい。貴方は声を掛けなくて良かったのですか、ジーク?」

「構わんさ。必要な物は全て渡してあるし、アイツなら俺よりも上手くやってくれる。そんな事よりも、永らく待たせてすまなかったな、レフィア」

「……ええ、本当に」


 レフィアはそう返すと、感極まってジークへと抱き着いて、ジークはそんなレフィアを優しく抱き締める。


「女神アストレアと話をしてきた。これからは君と一緒にいる事が出来る」

「嬉しいわ。もう二度と貴方から離れないから覚悟してね、ジーク」


 意外なほどのレフィアの積極性に、ジークは驚いた顔で見つめる。

 そんなジークを見てレフィアは悪戯っぽく微笑むと、不意打ちでキスをしてから告げた。


「あの子達を見て思ったの。もっと自分の気持ちに素直になるべきだったって」

「……君は変わったな。だが、若人から学ぶ事は多く、俺も変わるべきなのかもしれんな」


 そう言って、ジークはレフィアに手を差し伸べる。

 レフィアは二度と離さぬようにその手を取って、ジークと共に歩んでいく。


 かつて成就する事のなかった想いは、幾星霜を経てようやく結ばれた。

 これも、竜騎士ドラグーンフェリクスの起こした奇跡の一つなのだろう。

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