第52話 封印の地攻略に向けて
「ううむ、神代の宝具はやはり常識外れじゃな。少なくとも、ワシごときの力では手に負えん」
聖杖のレプリカを云々と鑑定しつつ、ゴードンがそうぼやく。
聖銀の指輪が聖杖のレプリカに変化するのを見た時は、ゴードンもシーグステンも大いに興奮し、我先に調べようとしたものの、神代の宝具の鑑定は容易でなかったらしい。
「僕も同感ですわ。正直、これもニーベルンゲンで真の聖杖を確認する以外にないと思います」
続いて、シーグステンも降参という体で両手を挙げつつ同意する。
ニーベルンゲンでの対応事項がまた増えた訳だけど、聖女に関しては常識そのものが覆りつつあるからやむを得ないのだろう。
尚も、ゴードンは口惜しい思いを吐き出す様に語っていく。
「本来、技術ってのは日進月歩だ。それ故、普通なら今の武具が過去の物に劣る訳がねえ。だが、神代の宝具に関して言えば別だ」
ゴードンはそこで一旦区切ると、俺達が話に付いて来ている事を確認してから続ける。
「神代の宝具は神が人に与えし宝具だ。それ故に人の常識では推し量れず、尋常じゃない性能を持つものが多い。参考にしようにも、人の手じゃ神の御力の模倣は出来ねえ」
ゴードンがそこまで告げると、ティリアがおずおずと手を挙げてから質問する。
「その……、ゴードンさんのお話を聞きまして、聖女の杖はどの様な区分けになるのかなと疑問に思ったのですけど……」
「ほーん……、性能だけなら神代の宝具に匹敵するんやけど、聖女レフィア様の持ち物でない事が分かった挙句、その在り方は聖教国に都合が良いときましたか……。確かに、爺さんの説明とは矛盾してますわ」
ティリアの質問に対して、シーグステンが感心した様に答える。
二人からの問いを受けて、ゴードンは難しい顔で考えていたけど、やがて諦めた様に嘆息して口を開く。
「成程、例外的なアイテムもあったか。すまねえが、それはワシの知識では答えられん。但し、教会絡みってんなら、奴らはどんな技術を秘匿しているか分からねえから注意しろ」
そう言えば、ゴードンは今の情勢になる前から聖教国を嫌っていたんだっけ、などと思い出しつつ、彼の忠告に頷く。
実際にノバリスで聖教国の襲撃を受けた際は、魔道具などによる様々な罠に苦しめられた訳だし、神代の宝具そのものは作れなくとも、より望ましい物に作り変えるくらいなら可能なのかもしれない。
続いて、ゴードンは俺の竜鱗の剣を眺めつつ、呆れた様に呟く。
「しかし、こっちは酷えな……。王権とか言ったか、どれだけの力を加えたら竜の鱗がこんなにボロボロになるんじゃ?」
「推測にしかならんけど、王権と神代の宝具は本来セットなんやろね。竜鱗だからこそ、一度は耐え切れたってのが正しいんちゃうかな?」
「なるほどな……。正直に答えて欲しい。この剣はまだ使用可能か?」
俺がそう問い掛けると、シーグステンがお手上げのポーズをした事で、ゴードンにお鉢が回る。
「ワシは鍛冶師でないから確実な事は言えんが……。恐らく、普通の戦闘なら支障は無いじゃろう。だが、王権に耐え切る保証も無え、ってところじゃろうな」
「……ありがとう、覚えておくよ」
現時点では、竜鱗の剣の代わりになる武器が無かったので、ゴードンの見立てを聞いてまずはほっとする。
ニーベルンゲンの中には竜鱗の剣レベルの武器も眠っていたし、あわよくばという案もあるので、解決策があるだけ上等だろう。
それまでの雑魚戦で王権の力を使わなければ大丈夫なはずだし、こっちはあと少しの辛抱だ。
その後は、ニーベルンゲン攻略のための魔道具などを受け取って、その効能などを確かめつつ、俺とティリアの道具袋に割り振っていく。
その中には『冒険家の羅針盤』もあって、ゴードンがきちんと組み立てていてくれたらしい。
これで今夜の準備は終わり、明日からは冒険家の羅針盤に従ってニーベルンゲンを探し出し、鍵を開けて突入するだけだ。




