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第4話 追放聖女の放逐

 本話は聖女ティリア視点になります。

 以後も、時々視点を変えながら物語は進んでいきます。

◆ ~Tillia's point of view~ ◆


 ――それは正に絶望でした。


「この偽聖女が、汚らわしい! 聖女を騙った時点で重罪だと言うのに、この期に及んで聖女ローゼマリー様の邪魔をするつもりか!」


 聖騎士マリウスさんに突き飛ばされてから罵倒を受けて、最早私の頭の中は真っ白になっていました。

 ノートゥング騎士王国が誇る聖騎士の家系に受け継がれてきた白髪が示す様に、生真面目で弱きを助ける聖騎士の鑑の様な人物の彼が、聖女わたしに暴力を振るうなど信じられず、端正な顔を歪めて罵る様も私の知るマリウスさんとは別人の様で、私はその様を只々呆然と見上げる事しか出来ませんでした。


 他の仲間の皆さん――、ジェラルド殿下、クリストフお義兄様、アルバート君も遠巻きに見ているだけで、その視線には侮蔑や嘲笑、失望が込められている様に感じ、私は恐怖で身が竦んで身体を動かす事すら叶いません。


 それでも、何とか自身を叱咤して身体を起こすと、私は今回の発端となった女性――ローゼマリーさんを見つめます。


 聖女という言葉をそのまま形にした様な華麗な女性で、紫がかった白銀色の髪は光魔法を象徴するかの様に煌めいて、流れる様に美しく伸びており、彼女が手にした聖女の杖も私以上の輝きを見せています。

 均整の取れた長身をピンと伸ばした姿勢も正にお手本の様で、確かに彼女の方が聖女に相応しいと、誰しもがそう思うに違いありません。


 それでも、私もノートゥング騎士王国に聖女として認められた身です。

 ローゼマリーさんに劣るとしても、魔王や魔族と戦う上で少しは役に立つはずで、私はその思いを訴えようとしました。


 しかし、それを予期していた様に、先手を打ってローゼマリーさんは私へと冷ややかに告げます。


「貴女が何を考えているかは推測が付くわ。だからこそ、はっきりさせましょう。貴女はこのパーティーに不要です」

「……どうして、でしょうか」


 ローゼマリーさんから厳しい言葉を受けて、私は何とかそれだけを絞り出して、彼女に問いました。


「簡単な事よ、私のパーティーにお荷物は不要なの。貴女、多少の光魔法は使えても、戦う術は持っていない。自分の身すら守れない者が世界を救おうだなんて、烏滸がましいとは思わないのかしら」


 ローゼマリーさんの言う事は正論で、私は反論出来ませんでした。

 それでも、私は自身の使命を果たすべく、彼女に願い出ようとします。


 しかしそれは叶わず、私は再度マリウスさんに突き飛ばされて転倒し、唯々呆然と彼女達を見上げる事しか出来ませんでした。


「いい加減にしろ! これ以上、ローゼマリー様の行く手を阻むというなら、容赦はしない!」


 そう言うと、マリウスさんは剣を抜き放ち、その切っ先を私に突き付けます。

 まさか聖騎士の彼がこんな事をするなんて――、私は今の状況が信じられず、ローゼマリーさんに目を向けました。


 ……嗤ってる?

 一瞬の事で私の見間違いかもしれませんが、続く彼女の言葉はその表情を肯定するかの様で、今更のように危機的な状況である事を理解させられました。


「程々にね、マリウス。好きになさい」

「え――」


 ローゼマリーさんはそれだけを告げると、まるで興味を失った様に、私から視線を外します。

 一方で、マリウスさんは我が意を得たりと言わんばかりの表情になると、私に向けて剣を振りかざしました。


「承知いたしました、聖女様! 偽聖女め、己の罪の報いを受けよ!」


 マリウスさんがそう言って剣を振り下ろすのを、私は只呆然と見つめる事しか出来ませんでした。


 しかし、その剣は私に届く事はなく、突如乱入した何者かがマリウスさんごと剣を弾き飛ばします。


 私が驚いて見上げると、そこには漆黒の騎士様が私を守る様に剣を構え、彼らと対峙していました――

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