第21話 仲間を呼ばせて乱獲
翌朝、俺達はケツァールを狩りに聖域を出発した。
事前にティリアに話した通り、普通には遭遇出来ない魔物なので、まずは取っ掛かりとなる魔物を探す。
すると、さほど苦労する事もなく目当ての魔物――ギガントピテクスと闇魔道士の群れに遭遇した。
ギガントピテクスは巨大な猿の魔物で、闇魔道士と行動を共にしている事が多く、力自慢のステータスを持つ一方で特殊攻撃はしてこないため、それ単体での危険度はあまり高くない。
だけど、闇魔道士の方はスカーレットワイバーンの炎並の火魔法を操る危険な魔物なので、注意が必要だ。
「あの猿の魔物ですよね?」
「ああ。俺は最初に闇魔道士を倒してくるから、回復とギガントピテクスは任せたよ」
「はい、お気を付けて!」
「ティリアも気を付けて。[疾風の羽]!」
俺達は事前に話し合った通り二手に分かれ、俺は闇魔道士を抑えに掛かる。
最初に[火槍]の魔法が飛んで来たけど、[疾風の羽]の速度で一気に突破して闇魔道士を切り伏せる。
それを見て、もう一体の闇魔道士が[火炎旋風]で広範囲を焼き払ってくるけど、俺はそのダメージに耐えて近付き、やはり一刀の元に仕留めた。
目先の闇魔道士を倒した事で、ティリアの方に目を向けると、彼女は何とか[疾風の羽]を制御しつつ、ギガントピテクスを軽く切り付ける。
すると、ギガントピテクスは恐れをなした様に後退りをしながら、何かを呼び出そうと辺りに鳴き声を響き渡らせた。
その鳴き声を合図に、森林の奥から七色の翼をはためかせて、俺達の求めていた虹色の魔鳥――ケツァールが姿を現した。
ケツァールはギガントピテクスの傍まで来ると、[回復]でその傷を癒す。
そして、その結果を見るまでもなく、すぐに森の奥へ逃げ去ろうとした。
だけど、ティリアはケツァールが[回復]を唱えた隙を逃さずに近付くと、[疾風の羽]の勢いのまま飛び上がってケツァールを切り付ける。
高速で飛来する厄介な魔物であっても、生命力や物理耐性は大した事が無かった様で、ケツァールはそのまま墜落して動かなくなった。
「フェリクスさん。私、やりました!」
ケツァールを倒せた事が嬉しいのか、ティリアは無防備にそう声を上げる。
その隙にギガントピテクスが迫るのを見て、俺はそのギガントピテクスを切り付けながら、ティリアを片手で抱き抱えて離脱する。
「まだ敵はいるから気を付けて」
「は、はい。その、すみません……」
ケツァールを倒した時とは一転して、自身のミスに気付いてティリアはしゅんとしていた。
「でも、ケツァールはちゃんと倒せたね。これなら任せても大丈夫かな」
「はい! 頑張ります!」
そう言うと、ティリアは頭を切り替えた様で、気合十分という表情で俺から離れて理力の杖を構えた。
一方で、俺が切り付けたギガントピテクスは切り傷が気になるのか、再度鳴き声を響き渡らせて仲間を呼ぶ。
すると、新たにケツァールが森林の奥から飛んで来るのが見えたので、俺は手応えを感じた。
これこそがカラルスの大森林での稼ぎ方で、普通に歩いているだけだとケツァールとエンカウント出来ないものの、ギガントピテクスに呼ばせてしまえば幾らでも出てくるので、それを利用してケツァールを狩り続けるのがコツだった。
ガルダ山のシルバースライムの様に探し回る必要が無く、ギガントピテクスに延々とケツァールを呼ばせ続けるだけなので、ケツァールを逃がさずに倒せるなら、こっちの方が稼ぎ効率は良かったはずだ。
もっとも、現実はゲームと同じとはいかず、ケツァールのドロップアイテムを都度拾う必要があるし、ギガントピテクスの鳴き声に反応するのもケツァールだけではないだろう。
事実として、俺達に気付いたのか、森の奥からは別の闇魔道士とギガントピテクスが姿を見せていた。
それを見て、俺はケツァールのドロップアイテムを拾いつつ、闇魔道士を仕留めるべく動き出す。
「コイツは任せた! 俺は奥にいるアイツ等を仕留めてくる!」
「はい! ご武運を!」
さあ、狩りは始まったばかりだ。




