表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/57

第14話 大斑蜘蛛討伐

 翌朝、俺達は大斑蜘蛛討伐の準備をした後、村長に教えられた通りに牧草地へと向かう。


 村を出たばかりの頃は長閑のどかな雰囲気の草原が続いていたものの、少し先まで歩いていくと、巨大な蜘蛛が遠目に何匹か見えて驚いた。

 その大きさは中型犬くらいに見え、これだけ大きいと毒を持たなくても危険度は高いだろう。


 幸いなのは、フェリクスになった事で奴らの姿に耐性が出来たらしく、転生前だと気味の悪さで正気を失ってもおかしくなかったと思う。


「ティリア、やれそう?」

「この位でしたら問題ありません。ちゃんと頑張りますから」


 念のため、ティリアに戦えそうか確認してみると、彼女はやる気十分という表情を見せていた。

 今回は、ティリアの近接戦闘の練習も兼ねているので、まずは問題が無さそうでほっとする。


「うん。だけど、無理はしない様にね。それと、蜘蛛の糸はこの袋に順番に入れていって」

「はい。昨夜教えて頂いた通りですよね」


 続いて伝えた注意事項に、ティリアは頷く。


 このサブイベントには幾つか目的があって、大斑蜘蛛が落とす『魔蜘蛛の糸』の収集もその一つだった。

 ゲームを普通に進めていると気付かないけど、このアイテムは次の目的地で絶大な効果を発揮するので、効率的に進めていくなら必須と言えた。


 一方で、俺達の方も大斑蜘蛛の糸に絡め取られる恐れがあるから、最後に注意を促す。


「大斑蜘蛛と戦う時は、蜘蛛の糸に注意して。絡まっても[治癒(キュア)]で解けるから、焦らない事」

「はい、大丈夫です」


「それじゃ、始めよう。最初は俺が行くから、付いてきて!」


 俺はそう言うと、一気に大斑蜘蛛のところまで駆けていき、その勢いのまま剣を振るう。

 すると、大斑蜘蛛はその速度と威力についてこれず、豆腐を切り裂く様に真っ二つになった。


 俺は仕留めた大斑蜘蛛から魔蜘蛛の糸を採取すると、次の大斑蜘蛛へと斬りかかる。

 序盤の敵という事もあってか、苦戦する事もなく、俺は次々と大斑蜘蛛を仕留めていった。


 目に付いた大斑蜘蛛を仕留め終えてから、俺はティリアの方へと振り返る。

 護身術を学んだとの言葉に嘘は無い様で、ティリアは型の通りに理力の杖(フォースロッド)を振るい、その魔刃で大斑蜘蛛を仕留めていた。


 そのうちに、ティリアも周りの大斑蜘蛛を倒し終えた様で、俺達は一旦合流する。


「大丈夫そうだね」

「はい! 正直なところ、最初は不安でしたけど、今は大丈夫です!」


 近接戦闘の影響か、ティリアは結構ハイになっていて、ちょっと驚く。

 但し、こういう時が一番危ないので、落ち着くよう伝える。


「了解。だけど、魔力切れには気を付けて。それと、俺から離れ過ぎないでね」


 俺の言葉を聞いて、ティリアははっと気付いた表情になって、コクリと頷く。

 魔力を使い過ぎると理力の杖(フォースロッド)も[治癒(キュア)]も使えなくなり、一気に危うくなる事に気付いた様で、この分なら大丈夫だろう。


 その後も、ティリアの魔力切れに気を付けつつ、俺達は大斑蜘蛛を掃討していく。

 やがて、牧草地から大斑蜘蛛が粗方片付いたのを見て、一日目の討伐を終える事にした。


◆ ◆ ◆


 翌日、俺達は牧草地を抜けて、その先にある森を目指す。


 この森の大斑蜘蛛を討伐すれば依頼達成となるので、あと一息だ。

 ティリアも昨日で大分慣れた様で、視界の悪い森に注意しつつ、落ち着いて俺の後を付いて来る。


 とは言え、大斑蜘蛛もやられてばかりではなく、視界が悪く障害物の多い森の中は彼らのホームゲームだった様で、俺達は苦戦を強いられていた。


「フェリクスさん! [治癒(キュア)]!」

「ありがとう、ティリア。……そこだ、[土槍](アースランス)!」


 そこで、昨日とは一転して、俺は魔法も交えた戦闘に切り替えた。

 ティリアの方も光の杖に持ち替え、サポート役に回って貰っている。


 この作戦が功を奏した様で、俺達は昨日と同様にどんどん大斑蜘蛛を討伐していく。


「はあ……、はあ……」

「少し休もうか。魔力は大丈夫?」


 俺がそう言って魔力回復ポーションを渡すと、ティリアは礼を言ってからそれを飲んだ。

 それから、彼女は息を整えると、俺へと問い掛けてくる。


「フェリクスさんは魔法も凄いんですね」

「一応、竜騎士ドラグーンだからね」

「……昨日、魔法を使わなかったのは、何か理由があるのでしょうか?」


 なるほど。昨日は剣のみで戦っていたので、疑問を感じたという事らしい。


「魔法を使うと牧草が駄目になるからかな。まあ、魔力の消費を抑える意味もあるけどさ」

「……そっか、フェリクスさんは討伐の後の事まで考えて対処されていたんですね」


 ティリアは感心した様にそう言うと、俯いてポツリと零す。


「そんな事、私達は考えもしませんでした……」


 以前に聞いた通り、ヒーロー達とのパーティーでは魔王討伐が唯一絶対の目的だった様で、それ以外に目を向ける事が出来なかった故の言葉なのだろう。

 彼らに追放された結果、そういった事にも目を向けられる様になったのは、皮肉だけどティリアにとっては良い事なのだと思う。


 この後も問題無く大斑蜘蛛の討伐は進み、日が傾く頃には奴らは姿を消して、俺達は大量の魔蜘蛛の糸の入手に成功した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ