7.
その後の展開は怒涛だった。
音楽会には仕事で参加できなかった両親も、アリアの声が戻ったことを知り泣きながら喜んでくれた。
サンバリーナは音楽会での一件でノア殿下との距離がグッと縮まり、近々婚約を発表する予定である。
エミリヤは石から離れたおかげか、前ほど醜い言動をすることはなく、大人しく罰を受け修道院へ向かった。そしてあの石について、宮廷魔導士が調べたところ、古代魔法が掛かった魔道具だったことが判明した。エミリヤの父である子爵がどうも隣国と密輸入の計画を立てていたようで、その際に偶然手に入れた物だという。恐らくは邪悪な心に引っ張られ、魔道具も主人を求めて子爵の手に入ってしまったのだろうという見解だった。
しかしその魔道具は願いが叶わなければ消滅するもので、エミリヤの願いはおそらくルークとの結婚。それが叶わず、叩きつけられたことで粉々に砕け散ったが、そうしなくても消滅していたという。
そしてアリアとルークは、両陛下に認められて無事に婚約を結んだ。今2人は初めて出会った城の庭にあるバラ園に来ている。
「アリア、僕は今でも君の婚約者として自分が相応しいのか自信がないよ。」
「まぁ、どうして?」
「僕は何も出来なかった。魔獣に君が襲われた時も、声を奪われていたのも気付かずに…」
「それはルークのせいじゃないわ。古代魔法だなんて、誰も太刀打ちできないもの。でもね、私ずっとルークに助けられていたのよ。」
「どういうことだい?」
「声をなくしても変わらず接してくれて、学院でも仲良くしてくれて、どうしようもない理不尽に苦しむ私をずっと救ってくれていたのはルークなの。だから、ありがとう。」
そう言うと、ルークは黙り込んで顔を背けた。目頭を指で押さえていて、どうやら涙を堪えているようだった。そして落ち着いたのかアリアに向き直った。
「アリア、君に会えて僕は本当に幸せだよ。これからもずっと僕と一緒にいてくれるかい?」
「えぇもちろん。ルーク、これからもよろしくね。」
バラが満開の中、2人は寄り添いながら幸せな未来を歩き出した。
ーー終ーー
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