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6.

エミリヤはサンバリーナの髪を引っ張り、その力によろけたサンバリーナは床に倒れてしまった。


「痛いっ、やめて下さい!」


その突然の出来事に観客席からは悲鳴が聞こえた。


「なんでアンタなんかが!せっかくここまできたのに!」


エミリヤはもう人の顔をしていない程に醜い表情をしていた。この時彼女の首から下げられている石に少しヒビが入ったがそれには気付かない。


アリアとルークは助けに行こうと席を立ったが、それより早く舞台に駆け上りサンバリーナを救い出した王子がいた。ノア殿下だった。

2つほど年下だがそんなことを感じさせない勇姿だ。


「そこまでだ!エミリヤ嬢、あなたは今何をしたか分かっているのか?頭を冷やせ!」

「あ…わた、私…」


王族の激昂にたじろいだ隙に、ノアはサンバリーナをお姫様抱っこをして舞台を降りる。


「サンバリーナ嬢、大丈夫ですか?」


サンバリーナは髪を引っ張られたショックより今は憧れのノア殿下に助けられてお姫様抱っこされている状況に頭がパンクしそうだった。


「はっはい!ノア殿下…ありがとうございます…」


もうサンバリーナは苺より真っ赤な顔をしていた。

その様子を見てアリアはホッとした。そして心の中で良かったね!と拍手を送った。

その時2階の王族席から陛下の声が降って来た。


「エミリヤ嬢、この国に貢献している公爵家の令嬢に無礼をはたらいたこと、反省するがいい。」


その言葉と共に会場を見守っていた騎士たちが舞台に集まりエミリヤを拘束しようとした。

エミリヤは観念していたが、悔しさに最後ひと暴れした。


「もうっこんなもの何の役にも立たなかったじゃない!」


そう叫びながら首から下げていた石を床に思いっきり叩きつけた。すると、石は粉々に砕け散り、その中から光の粒子がキラキラと出て来た。

そしてその光の粒たちは周囲に虹色の光を輝かせながら真っ直ぐアリアの方に飛んできた。そしてアリアの喉を包み込み眩しく発光した後、その粒子は消えていた。

その様子を周りの人々と共に呆然としていたルークはハッとしてアリアに声をかけた。


「アリア!大丈夫かい?今のはいったい…」


アリアはいつも通り魔術で返事をしようと思ったが、もしかして、と思い恐る恐る唇を動かしてみる。


「は…い…」


「⁈アリア、君…声が…」


「ルーク…様…」


その瞬間アリアは嬉しくて両手で顔を覆って泣き出した。ルークも目に涙を浮かべてアリアを抱きしめる。


「よかった!声が戻ったんだね!アリア…」


そう言いながらアリアを抱きしめる腕にさらに力をこめる。

その様子にエミリヤはもう完全に脱力し、騎士によって連れて行かれた。そしてルークはやっとアリアを離したかと思うと、アリアの前に跪いて懇願した。


「アリア、君の声が聞きたいんだ。是非歌ってくれないか。」


すると周囲からも期待の眼差しが送られて来て、困ったアリアは両陛下の方を見上げた。


「アリア嬢、是非お願いしたい。」

「はい、仰せのままに」


そしてアリアは歩き出し、他の出場者が舞台を降りるのと入れ替わりに舞台に上がった。

みんなが見つめている。10年ぶりに歌うので、果たして上手く歌えるだろうか。急に不安になって来たアリアだったが、サンバリーナが小さく頑張れと応援してくれているのが目に入り、次にルークを見ると、大丈夫だ、と口を動かしていた。


アリアは目を瞑り、深呼吸をした。そして歌い出した。それは一瞬にして人々の心を奪った。

瑞々しいその歌声は一人一人の心に降り注ぐようで、魔力を帯びたその声は会場の最後列までしっかり届いた。いつの間にか周囲にキラキラと光の粒子が金色に虹色に輝きだし、その何とも言えない幻想的な空間に会場中の人々が涙を流した。


アリアは歌い終わると美しい所作でお辞儀をして、ルークを見つめた。その笑顔はルークが見たアリアのこれまでのどの表情より綺麗で、周りの人も思わずドキッとしてしまう程だった。

会場はしばらく賛辞の拍手が鳴り止まなかった。

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