1.
「アリア、君の声が聞きたいんだ。是非歌ってくれないか。」
王立学院のコンサートホールで、この国の王子にそう懇願されているのは、ディスキン伯爵家の1人娘アリアだ。
なぜこのような事になったのか
事の発端は10年前に遡るーーーー。
♢♢♢
10年前、アリアが6歳の頃に王宮の庭でパーティが開かれ両親と共に参加した。周りには同じような年頃の子供たちとその両親という組み合わせが集まっている。国王陛下と王妃様の長男であるルーク殿下と次男のノア殿下がみえるとのことで、恐らく将来の婚約者候補、側近候補など当たりを付けるのが目的だろう。
アリアは伯爵の娘で地位はそこまで高くないが、魔力の多い娘であったため、王家に目をつけられていた。
魔力のある者はその強さに応じて色んな方面で活躍が期待される。戦闘向きであれば魔法騎士や魔術師、学問の方面であれば研究者や学院の先生になる、といった具合だ。そしてアリアは芸術方面で秀でた才能を持っていた。
それが歌である。
アリアの両親は娘が見初められるかもしれないという気持ちから、そわそわしていた。だから、娘が居なくなっている事に気づくのが遅れてしまった。
「さぁアリア、そろそろ王子達の登場だぞ…ってあれ⁈アリア⁇」
「大変、あなた、アリアがいないわ!」
「アリアーーー!?」