表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/26

第21話 恵体ドワおばの山小屋飯

 鉱山前の休憩所で出会ったとんでもなく恵体なドワーフおばさんは、ガガン達から奪った四つのマジックバッグの肩ひもをぶっとい左腕の上腕二頭筋に通した。

 そして、次なる獲物を求めるドワおばの鋭い眼光が俺を貫く。


「まぁだ、鞄を出していない子がいるねぇ……?」

「グルル……」


 コロが俺を庇うように前に出て、唸り声を上げる。

 よく見ると、コロは尻尾を股の方に丸めていた。

 俺のコロが怯えている……だと……?


「いやあ、何が何だか分からないなぁ」

「大人しく言うことを聞いておくんだ、死にたいのか!」


 返答に困った俺がとぼけると、ガガンがビビり散らかしながら忠告してきた。

 他のドワーフ三人衆もガガンに同調してうんうんと頷く。


「つっても初対面だし。まずは挨拶からだろ」


 コロにどいて貰った俺は、ドワおばに右手を差し出して自己紹介した。


「俺はテイマーのジロー、一昨日からここの領主の世話になってる。よろしくな」

「いい目をしているね。あたしは拳闘士のババラ、山小屋の管理人をやっているよ」


 ババラはニヤリと笑みを浮かべると、でかくてぶっとい右手で俺の右手を掴んでぶんぶんと上下に振った。

 すっげー握力、こっそり強化魔法を使ってなかったら潰れてたなこりゃ。


「で、どうしてマジックバッグを?」

「頼りない領主様に代わって鉱夫から税を取り立てるのがあたしの仕事。こんな場所でも希少な原石は採れるからねぇ、尻の穴に隠そうする馬鹿がよく現れるのさ」


 ババルの視線が宝飾職人のジジルをロックオンした。

 こいつ、やったことあるのか……。


「それ、俺もやらなきゃダメ?」

「ダメ……と言いたいところだけどね、あんただけは特別にナシでもいいよ」

「な、何故だ!」


 驚きを隠せないジジルの問いに、ババルは呆れた顔をして答える。


「そりゃあ、その男が今の領主様から信任を得ているからに決まっているさ。聞いたよ、トルサード男爵家の為に大枚はたいて鉱山奴隷を買ってくれるんだって?」

「まぁ、その予定だけど……」

「連座を怖がって逃げ出した薄情な連中とは大違いだ。それと、仕事もせずに飲んだくれているような男ともね」

「ぐぬぬ……」


 反論出来ないジジルの肩をガガンはポンポンと叩いた。


「そう悪しざまに言ってやらんでくれ。こいつだって好きで仕事を休んでいたわけじゃないんだ」

「それくらい分かっているさ。さてと、あたしは査定してくるからあんた達はその間に昼飯でも食ってな」


 ババルに促されて山小屋前の休憩所に目を向けると、そこでは既に長椅子に腰掛けたブライとドンガがお椀を手に昼食を取っていた。

 その近くには、湯気を上げる大鍋とパンが盛られた大きなカゴが置かれている。


「いつの間に……」

「西カイデン鉱山名物のババルシチューだ。これを毎日食う為だけにここで働く鉱夫がいるくらいには美味いものだぞ」

「へぇ、そうなのか」


 俺はブライ達の隣に腰掛け、ガガンからババルシチューとパンを受け取った。

 ドロドロとした乳白色のスープには、ぶつ切りにされた鶏肉と芋、野菜がゴロゴロと転がっている。


 やけに大きな木のスプーンですくって飲んでみると、これがまた……美味い。

 あっさりとした鳥ガラベースの味が空きっ腹に染み込むようだ。

 鶏肉はしっかりとした歯ごたえがあり、食べ応えは十分。


 ドライフルーツとナッツが練り込まれた丸いパンは少し固くずっしりとした重さ。

 スープに浸して食べてみると、思いのほか合う。

 いやむしろ、これが一番の食べ方だと直感した。


「確かに、これはクセになる味だ」

「そうだろう、そうだろう」


 むさ苦しいドワーフに囲まれた状態で、昼飯を食いながらババルの仕事を眺める。

 ババルはアナログ式の体重計みたいな形をした巨大な秤を使って、山積みにされたモンスター素材の重量を計っていた。


 手慣れた感じでパッパと素材を分けて帳簿にサラサラと書き込んだババルは、すぐに仕事を終えて俺達の方にやってきた。

 マジックバッグを全員に返し、それから一枚の紙をガガンに差し出す。


「はい、今回の分。悪いけど、今は金がないから素材の買取はナシで頼むよ?」

「分かっている。これでようやく、思う存分鍛冶仕事が出来るというものだ」


 ババルは顔が入りそうなくらいでかいお椀に自分の分のシチューをよそうと、パンが積まれたカゴの横にドシンとあぐらをかいて腰を下ろした。


「ババル、少し聞いてもいいか?」

「なんだい、藪から棒に」

「いや、昨日は姿を見なかったなと思ってさ」

「面倒を見る奴隷も居なけりゃ、鉱山も閉じていたんだから当然じゃないか。まぁ、盗賊が住み着かないよう定期的に確認はしていたけどね」

「じゃあ、閉山してからは何をしていたんだ?」

「農家をやっている息子夫婦の家に世話になっていたよ。このシチューの材料も、全部そこから仕入れているのさ」


 こんなナリをして子供がいるのか。

 ババルの旦那がどんな男か気になるところだ。

 それはそれとして、重要なことを聞いておこう。


「話は変わるけど、ババルはマナジオード事件の前後で何かおかしなものを見たりはしていないか?」

「マナジオードの中身が空っぽだったって話かい? ガガンの言うことを疑うわけじゃないけど、ねぇ……」

「儂も先ほど見てきたが、確かに何者かの手によってマナ結晶が持ち出された形跡があったぞ。若い頃に東で何度も開けたから間違いない」


 悔しげな顔をするジジルの証言には一定の信憑性があった。


「りょ、領主様とみんなを殺すなんて。ゆ、許せない」

「話を聞く限り、容疑者は神官というよりも死霊使いのように思える。そのような特殊なジョブがあっただろうか……」


 ブライとドンガはそれぞれの考えを口にする。

 事件当時の彼らは本業で忙しかったそうで、特にこれといって目ぼしい情報は持っていなかった。


「正直、奴隷の引き取り先の手配やら何やらで忙しくってよく覚えていないんだけどねぇ……。でも一つだけ、思い出したことがあるよ」

「それは?」

「例の事件から一週間くらい後だったかねぇ、下働きの子が山小屋の近くで妙な足跡を見たって話を聞いたのさ。そうそう、これだ」


 自分のマジックバッグから古ぼけた日記帳を取り出したババルは、太い指先でパラパラとめくって開いたページを見せてきた。

 整った文字列の間には、鳥の足跡のようなスケッチが描かれていた。


「大きさはこのくらいだったよ。ジロー、分かるかい?」


 ババルは腕を広げてサイズ感を教えてくれた。

 全体で1mくらいはありそうだな。


「いや、全然。調べてみるから、写しを貰えないか」

「もちろんさ。ちょっと待ってな……」


 俺はババルから預かった足跡の写しをマジックバッグに仕舞った。

 もしかしたら、何かしらの手掛かりになるかもしれない。

 時間がある時にモンスター図鑑を確認してみるとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ