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馴れ初め 謎

「英治さん!英治さんはどうして悠にぃの事が好きだったの?別の世界、って所でも、お付き合いしてたんでしょう?」

「そうか、佑治達には話して無かったな。ふむ、何処から話せば良いのか……。」

「馴れ初めって、僕もちゃんと聞いた事がない気がするよ?」

 浩と佑治が一緒に暮らし初めてから、一週間が経った。

 英治さんは程よく気遣ってくれてて、浩達もいつもの調子になってきてて、多分だけど上手く生活出来てると思う。

 そう言えば、英治さんと別の世界の僕の馴れ初めって聞いてなかったなって、思い出す。

 僕と英治さんが付き合ってた、それは事実だって知ってるんだけど、理由までは聞いてなかったなって。

「始まりはそうだな……。悠輔の眼、それは、ディンさんと同じ魔力を持っていた。安らぎの琥珀、慈愛の翡翠、有体に言えば、守りたいと願った人に好かれる魔力、と言っていたな。それがきっかけで、俺が悠輔を好きになった。悠輔は、特別な人間として育てられてたからか、恋愛をした事が無かったそうだ。それは俺も一緒だった、恋愛と言うのに縁がなくてな。最初は戸惑った、人を好きになった初めてが、男相手で、しかもそれは後輩で、魔物と戦っている特別な存在で……。ただ、俺はそれでも悠輔が好きだと思ったんだ。」

「それで、その世界の悠はお付き合いを始めたの?」

「そうだな。俺から告白して、付き合う様になった。悠輔は強かった、ただ、孤独だったんだ。時折見せる、その孤独が俺は嫌だった、だから、一緒に暮らそうと提案したんだ。悠輔は、身寄りのないと言うべきか、運命によって集まった子供達と一緒に暮らしていた、それに交えてもらえないか、特別な力は持っていないが、悠輔を支えたい、と言ったんだ。ディンさんは、本当にうれしそうな顔をしていた、悠輔を想ってくれる人がいて、嬉しいと言ってくれたんだ。」

「でも、ディンさんって言う人は、最終的に悠にぃと戦ったんでしょう?悠にぃを殺しちゃったんだって、言ってなかったっけ?」

 夜ご飯を食べながら話をする、そう言えば、ディンが闇に囚われた理由、闇に堕ちた理由、それも聞いてなかった。

 英治さんは話したがらなかったし、僕も、ディンが眠っている中で聞くのもちょっと違うのかな、って思ってたから、佑治はいいきっかけをくれたんだと思う。

「ディンさんは、魔物ではない何かと戦っている、と言っていたな。それに敗れた結果、魔に侵されてしまったと。ただ、それが何なのか、それは最後まで知らなかった。ただ、ディンさんは魔物程度に負ける相手ではなかった、世界で一番強い、と言うのは事実だった。世界で二番目に強かった、ディンさんの息子の竜太や、デインさんと言った竜神達を殺し、そして悠輔を殺した、それは事実だ。……。何か悠輔が言っていた様な気がするんだが、記憶が朧気だ。」

「じゃあ、その何かに侵されたディンが、この世界にやってきた、って事なんだ。そう言えば、浩達はどうなったの?陰陽師の一族は皆殺しにされた、って言ってたけど、浩達は力を持ってなかったんじゃないの?」

「いや、浩輔達は力を持っていた。それも、ディンさんを封印するだけの力をな。九代目竜神王と、陰陽王と呼ばれた、悠輔達のご先祖様の契約だったらしい、。陰陽師の血族、坂崎、佐野妻、荒井、河野、そして綾野、山内、村瀬、岩原の家系の人間、その当代と守護者達は、九代目竜神王との契約によって、十代目ディンに力を貸して、そしてその竜神王が闇に堕ちた時には、封印するだけの力を与えられていた。この世界では、皆力には目覚めていない、ディンさんがいない事と、何か関係があるのだろうが……。」

 佐野妻、荒井、河野、みんな知ってる。

 今は疎遠になっちゃってるけど、小さい頃良く遊んでた子供達だ。

 岩原、って言う名前の人には縁がないからわからないけど、綾野、山内って言うのは、源太と雄也の事、かもしれない。

 って事は、僕達の出会いには意味がある、って言う事なのかな。

「源太とか雄也も力を持ってたって事?後、村瀬って事は村さんも?」

「そうだな。一族の宿命、出会うべくして出会った、と言い換えても良いかもしれない。この世界では岩原さんとはまだ出会っていなかった、誰も力には目覚めていない、そのあたりが事情が違うのかもしれないな。……。ただ、力を持った影響と言うのはあった、それが原因で、ディンさんは子供達を真っ先に手に掛けたのだからな。愛する者達、世界より家族が守りたいと言っていたディンさんが、家族を殺める事になってしまった、それは悲しい事だ。」

「自分を封印出来る相手、なんて生かす理由が無いもんね。……。でも、ディンは何に負けたんだろう?魔物じゃないって事は、もっと強い存在がいるかもしれないって事だよね?」

「そうだな、ディンさんの戦っている相手、それは魔物とは比べ物にならない存在だ、とは言っていたな。ただ、肝心の名前は聞けなかったが……。」

 悲しい、英治さんの知ってるディンは、世界より家族を愛する人だった、それは聞いた事があった。

 だからこそ、その家族を殺さなきゃならない事になった、自分の手で殺める事になった、それは悲しい。

 ただ、ディンの意識はなかったんだと思う、何かに乗っ取られて、ただただ世界を破滅させる為に動いてたんじゃないか、って。

 だからこそ、ディンの意思じゃなかったからこそ、僕は今こうして生かされてる。

 ディンは、本当は家族を殺したくなかった、それこそ、世界と家族を天秤に掛けた時には、家族を選ぶような性格だった、って英治さんが言ってた。

 だから、きっとディンの意思は別の所にあったんだと思う、ただ、抗えなかっただけで。

「……。」

「悠?」

「ううん、何でもない。ほら、お話は良いけど、ご飯がさめちゃうよ。」

 いつか、僕の中で眠ってるディンは起きるんだろうか。

 起きたとして、自分の罪に向き合う事は出来るんだろうか。

 贖えない罪、償えない罪、それを、苦しいと思わないかな。


「英治さん、俺はさ、孤独だと思ってたんだ。ずっと孤独で、兄弟達は仲良くしてくれてるけど、でも、戦うなんて事をしなくて、ディンや竜太はまた違う存在で、人間として戦ってるのは俺だけだから。だから、生涯孤独だと思ってたんだ。」

「それは……。俺は、その孤独が永遠に続くものだとしても、傍にいたい。いつか、悠輔が天国に逝く時に、幸せだったと思える様に、この世界に生まれてよかったと、胸を張って言える様に。」

「……。英治さんは本当にお人よしって言うかさ、俺の魔力で芽生えた心なんだから、拒否する事だって出来ただろうに、それすらしなかったんだもんな。……。」

「俺は悠輔を愛しているからな。それがたとえ、悠輔の魔眼によって発生した、自己防衛の魔法だったとしても、何がきっかけだったか、は関係が無いんだ。俺は、生涯人を愛する事は無いと思っていた、それは、両親の姿を見て、愛する事は不毛だと感じてしまっていたからだ。それを変えてくれたのはな、悠輔、お前なんだ。だから、俺はどんな事があったとしても、悠輔がどんな存在であろうと、愛し続けるよ。何時か別れは来るのかもしれない、それが俺の死なのか、悠輔の死なのか、それとも普通に破局するのか、それはわからない。ただ、俺は生涯を掛けて悠輔を愛し続ける、それは変わらないんだ。」

「……。俺も、生涯をかけて愛するよ、英治さん。俺は、俺を初めて一人の人間としてみてくれた、何者でも無い俺を愛してくれた、英治さんの事が、ずっと好きだから。」


「……。」

 何者でもない僕を、愛してくれた人。

 僕は、人間と言えるのかわからない、人間としては、異質な存在。

 それでも、英治さんは愛してくれると言ってくれた。

 それを、世界が変わったとしても、僕が僕じゃないと知ったとしても変わらないと言ってくれた。

 だから、守るよ。

 英治さん、ありがとう。

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