二人の無事
「悠輔、電話が鳴っていないか?」
「ん?あ、村さんだ。何だろう?」
おじいちゃんの家に行って、真実を知ってから一か月、戦いはちょっとずつ激しくなって来てた。
まだ封印開放を使う程の敵は出てきてないけど、これから先はわからない、どれ位寿命を削って発動するのか、もわかってない、だから、僕自身が強くならないと、って思って、部活を休んで修行に充ててた。
今はご飯を食べ終わって、のんびりしてた所なんだけど、スマホが鳴ってて、電話の相手は村瀬警部、村さんだ。
「もしもし?」
「悠輔!浩介君達が見つかったぞ!」
「え!?」
「交通事故に巻き込まれたと言う話だ。残念ながらお母さんは……、だそうだが……。」
村さんから衝撃的な事を言われて、テレビをつける。
丁度ニュースがやってる、車同士の交通事故、トラックに乗用車が潰されて、運転していた女性は即死、そしてその子供二人が病院に運ばれた、って。
「……。浩、佑治……。」
「悠輔、もしや母上は……?」
「……。でも、二人が無事で良かった……。」
母ちゃんが死んだ、それは悲しい。
でも、浩と佑治は生きてる、都内の病院に運び込まれたらしい。
「悠輔、今から私が迎えに行く、だから二人に会いに行こう。」
「でも……。僕は……。」
迷う、それは、浩達に受け入れられていないかもしれない、って感情があるからだ。
母ちゃんが僕を置いていって、それ以来二か月会ってなかった、二人。
二人も、僕の事は知ってると思う、母ちゃんから説明されてると思う、だから、もしかしたら、って。
「悠輔、二人なら大丈夫だ。きっと、受け入れてくれる。だから、会いに行っておいで。」
「英治さん……。一緒に、行ってくれる……?」
「勿論だ。俺はずっと悠輔の傍にいる、……、いつか、忘れてしまうのだとしても、それでもだ。」
「ありがとう、英治さん……。村さん、英治さんも一緒で良いですか?」
「あぁ、英治君は二人を知っているんだったな。なら、安心して私も連れていけるよ。では、すぐに向かう。」
電話が切れる、僕達は、出かける準備をして、村さんを待つ。
会って何を話すべきか、それに、受け入れてくれるかどうか。
英治さんのいた世界では受け入れてくれた、って言っても、こっちの二人がどうかはわからない。
不安、葛藤、そんな感じの感情が、ぐるぐると心の中に回ってる。
「ここに、浩と佑治が……。」
「大丈夫だ、悠輔。きっと、大丈夫だ。」
「英治さん……、うん……。」
村さんの運転で病院について、入院してるって言う二人の病室の前につく。
不安でたまらない、二人は怪我をあんまりしてない、とは言ってたけど、どうなってるのかとか、色々と不安だ。
決心して、ノックをする。
「……、浩、佑治……。」
「悠……?」
「悠にぃ……?」
病室に入ると、怪我をしてなかったけど、念の為にってベッドで座って話してた二人がいて、こっちをみてびっくりしてる。
「悠!」
「悠にぃ!」
僕を僕だと認識すると、二人は飛び上がって、こっちに駆け寄ってくる。
「二人とも……!」
「悠……!会いたかったよぉ……!」
「僕もぉ……!」
「僕も……、会いたかったよ……!」
二人の言葉を聞いて安心する、英治さんの言葉は正しかった。
二人とも、僕も、泣きながら再会を喜ぶ。
「じゃあ、僕が戦ってる事は知ってたんだ……?」
「うん。母ちゃんがね、あれは悠輔がやってて、私達は関わらない方が身の為よ、ってずっと言ってたから。」
「悠にぃ独りで戦ってるって聞いて、応援したかったんだけど、母ちゃんが許してくれなくて……。」
「良いんだ。二人が無事でいてくれて良かった、また会えて良かった。母ちゃんの事は残念だけど……。でも、二人が無事で、本当に良かったよ。」
英治さんと村さんは、僕達が話したいっていう空気を察してくれたのか、病室の外で待っててくれてる。
僕は、二か月ぶりに再会した兄弟達、大切な兄弟達と、会えて嬉しかった。
母ちゃんの事は残念だと思う、でも、正直僕の事を知ってて見捨てたっていうのなら、それ以上の感情は湧かない、ただ、二人がどう思ってるのか、それだけが心配だった。
「それで、悠は今は部長と一緒に暮らしてるの?」
「うん。英治さん、ちょっと話がややこしいんだけど……。パラレルワールドからきて、僕の事を知ってたんだって。僕と恋人だったから、って言ってくれたんだ。」
「そうなの?さっきのお兄さん、違う所から来たんだ?」
「うん。だから、僕が知らない事も知ってた、竜神王様の事とか、僕が戦ってる理由も、知ってたよ。」
難しい話をしてると思う、僕も最初は信じられなかったから。
でも、二人は、僕がそう言う冗談をいうタイプじゃない事を良く知ってる、それに、僕が戦ってる事も知ってる、だから信じてくれたみたいだ。
「じゃあ、部長にはお礼を言わなきゃ。悠の事、助けてくれてたんだから。」
「ね!」
これから先どうするか、なんて話はまだいい、多分だけど、一緒に暮らす事は出来るだろうし、大丈夫だと思うから。
今は再会出来た事を祝いたい、嬉しいって言う気持ちと、ほんのちょっと悲しい気持ちが、僕の中にある。
きっと、それは二人も一緒なんだと思う。
母ちゃんが死んじゃった、なんて言ったら、普段の二人だったら泣き出しそうだと思ってたけど、僕を見捨てて逃げて、って言う事が、二人にとって、母ちゃんをそれだけの存在にしちゃったんだと思う。
僕もそうだ、母ちゃんが死んじゃったのは悲しい、でもあの人は、わかってて僕一人にしていった、何かを言う訳でもなく、僕に真実を告げるでもなく、力に覚醒した時に出ていった。
母ちゃんにとって僕は、それだけの存在だったんだろうな、とも思っちゃう。
「二人とも、無事でよかった。俺は英治、今は悠輔と一緒に暮らしているんだ。浩輔と佑治とも、一緒に暮らす事になるか。」
「部長って呼んだ方が良いですか?それとも英治さん?」
「英治で良い。一緒に暮らすと言うのに、部長呼びでは堅苦しいからな。それに、俺は二人の事も良く知ってる、だからそれで良いんだ。」
「ありがとう!英治さん!」
少し時間を置いて、佑治は英治さんと会うのは初めてだから、自己紹介をする。
浩輔は、ちょっとだけ中学の部活で一緒だった、一か月もいなかったけど、それでも覚えてたみたいだ。
二人の顔をみて、英治さんも安心したみたいだ、ホッとした顔をしてて、気が緩んでる。
「じゃあ、検査だけしたら退院なんだね?」
「そうみたい。」
「おじいちゃんも、楽しみにしてると思うよ。一緒には暮らしてないけど、でも心配はしてたから。」
「おじいちゃん、今は独りで暮らしてるんでしょう?あんなに大きなお家、寂しくないのかなぁ。」
おじいちゃんには、村さんに送ってもらう途中に連絡入れてあって、今は返事が来てる。
二人の無事を喜んでて、母ちゃんの事は残念だけど、仕方がなかったんだろう、っ手幹事らしい。
これから先の行政的な手続きをお願いしながら、浩と佑治が今日は検査の為に入院する、って聞いて、一回帰らなきゃならない。
「じゃあ、二人とも、明日迎えに来るからね。」
「うん、ありがとう、悠。」
「明日ね!」
「二人とも、きちんと睡眠を取るんだぞ?体に悪いからな。」
二人と一回ばいばいして、村さんの運転で家に戻る。
「悠輔、良かったな。」
「うん。」
「浩輔君達は、知っていたのだろう?悠輔が戦っている事を、そして自分達の一族の事を。」
「はい、知ってたと思います。母ちゃんが、掻い摘んで説明してたんだって、話をしました。でも……。浩が戦うんじゃなくて、本当に良かった。僕で良かった、浩が戦って、は何も出来ないなんて、耐えられなかっただろうから。」
「そう言うところは、悠輔は変わらないんだな。俺のいた世界でも、悠輔はそう言っていたよ。ディンさんの依り代になったのが自分で良かった、浩輔が傷つく所を見たくなかった、と。……。そう言えば、浩輔達には伝えなくていいのか?」
伝えなくていいのか、それは、僕の将来の事。
いつか、勝って消えるか負けて世界が滅ぶか、二択の選択肢しか遺されてない事、それは浩達には言わなかった。
言った所で何かが変わるわけでもないし、浩達を傷つける事はしたくない、だから、言えない。
「……。僕は、いつか消える運命。それは変えられないんだと思う、ただ、僕は守りたい。だから、言えないよ。いずれ忘れる事だとしても、今を苦しめる事になりかねないから。」
「そうか……。なら、俺が何かを言うのは間違いだな。」
「……。僕は……。」
遠くない将来、近い未来、僕は消える。
それが死なのか記憶や記録から消えるのか、それはわからない、ただ、消える事は確定してる。
千年前の当代、陰陽師の長だった僕のご先祖様の力は、それだけ強いんだと思う。
ただ、そうだったとしても、守りたい。
だから、僕は戦う。
未来の為に、皆の為に。