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6.最低限の身嗜みも異文化ですよ?

 尚、父はここで更なる爆弾発言をぶっこんで来ました。曰く。


「ところで物は相談なんだが、スムーズに家督を譲るにあたり領内で把握している魔族を全部仕留めてくれんか?」


 との事。詳しく聞くと、隣国との戦争と王家簒奪の協力対価として、領内で魔族数名に通行許可証を発行しているとの事。


「ぶっちゃけ連中と手を切る理由として、お前さんが儂への復讐として問答無用でブチ殺がしたのを理由にしたい。

 お前さんが生きてる限り儂が手を貸さん言い訳に丁度良いだろう?

 お前に自由にさせるには、正直魔族との密約は邪魔だ。少なくともお前には王位簒奪する気などあるまい?」


 ホントぶっちゃけるよなぁ……。

 という事で、教えて貰った魔族は丁度全員城内で捕縛済みでした。

 彼らは今商隊の振りをして訪れており、彼らが駆け付けて来ないのだから即座に降伏する決意も出来たのだそうです。


 という訳で、彼らはプチッと。ええ、意外とあっさり倒せましたね。

 最初から偽物が来たというのでも無い限り、逃げられた可能性も有りません。

 これでも私、人の気配に敏感なんですよ?

 どうやら魔族には独特の気配がある様で、今後は一発で見分けが付きそうです。


「お、お嬢様はそれを信じたので?」


 侍女頭マルガリータが混乱を露わに問い返します。まあ当然でしょう。

 冷遇されていると思ったら本人にその気は無かったというのです。

 私は単に判断を保留して実際に父の言う通り成果があったのかを確認してからの話だと思ってはいますが、彼女が信じられないのは判ります。


「ある程度は。というより、思いっきり私を魔族の盾にする気ですしね。

 父からすれば気付かない様なら普通に暗躍する気だったでしょう。命懸けで従うとは思うなって意味で言ったと思ってます。」


「で、でしたら!」


「排除して、統治が確実に上手く行くのならそれも有りでしょうね。

 ですがここはタムリン領だけではありません。統治から長年離れていた旧臣だけでこの地を管理出来ますか?

 であれば様子見は必要でしょう。」


「た、確かに……。」


 そもそも処刑されている家臣もいたとの事ですからね。母方の主観だけで結論を出す訳には行きません。


 尚、翌日の打ち合わせ。


「本気で余裕がない時以外、儂がアマンダの頼みごとを断った事は無い筈だが?」


「いやいやいや!じゃあ何で奥方様は毎回苦渋の決断をなさっていたんですか?

 毎回体を要求されてたとは聞いてますが、夫婦仲が良かったなんてアマンダ様に聞いた事ありませんよ?!」


「猫プレイとうさぴょんプレイが一番多かったな。

 ホレ、耳と尻尾は今も残っている。語尾ににゃんとかぴょんとか付けさせておねだりをさせるのだ。」


 けふ。


「それに冷静に考えて、夫婦間で子作りは普通の事だろう?対価に相応しいか?

 というか、儂はいつもギリギリを責めておったので良い顔はされておらん。」


((こ、コイツ最低だ。))


「な、何であたしにはそれさせなかったのよ!」


 ごふ。サリザー夫人、対抗心バリバリです。


「いや。お前だと完璧に演じ切って雌豹になるだろう?

 お前は嫌々させるよりノリノリでさせた方が絶対にエロい。

 奴は恥らいながら時々噛んで、そうだな。あの娘の様に本気で恥らうのだ。

 娘はなんというか、全体的に可愛い感じだが、アマンダはあれを、あざとい?に近い感じで、色気を感じさせる恥らい方をするのだ。

 お前の持ち味とは種類が違う。お前は、エロいからこそ良いのだ。」


 ふぎぎぎぎ!ていうか本当に夜の猥談ばかりですね!

 ていうかマルガリータも私を愛でないで!納得しないで!


「つまり、あなたなりに大事にはしていたけれど、伝わっていない自覚もあったと言いたいのですか?」


「ふむ。儂的には愛だがアマンダの考える様な愛では無かった自覚はある。

 奴はホレ、そこの娘の様に恋愛に憧れているようなところがあったしな。」


 とまあ、色々と母の成果も確かに数値として出ており、今の経営が母の居た頃程上手く回っていないのも自己分析の結果として見せられました。

 本当にこの父、自分を冷静に客観視していたんですね。


 タムリン子爵家も先代が統治するよりは今の方が上手く回っている証拠を突き付けられると、流石のマルガリータも強くは出られなくなったご様子。


「ところで確認するが、お前の腕と顔で、世間に出る心算か?」


「ええ。表向き何かに呪われていて、死病に侵されていたという方向で公表して頂く心算です。

 この両腕は魔術と魔導具による補助で、表舞台に立てる程度の目途が立ったから明かすという形で行きます。

 そもそも私に婚約者は別に要りませんから。」


 社交界で容姿を非難される程度は全く構わない訳です。

 序でに兄の方は継承権諸々一旦保留。


「お前さんの作法は古風なのか、妙に堂々としている感じがあって今とは違う。

 先ず世間に慣れる意味でも家庭教師を何人か付けるから、一旦色々と今の常識と比べてみろ。改革はそれからの方が良かろう。」


 コイツ下半身に忠実な以外は、意外と真っ当な事を言うんだよなぁ……。


   ◆◇◆◇◆◇◆


 さてと。本邸に移ると、今迄には無かった様々な問題が生じします。


 ぶっちゃけた話、人員に関してはそこまで混乱は起きませんでした。理由は単純に共用部分が増えた結果、個々の担当面積が減ったからです。

 特に食事関係は全部一律で作られる事になったので、人手を掃除中心に回しても全然問題無くなりました。一応給仕側として数人は追加予定ですが、当分焦る必要が無くなったのは有難い話ですね。


 反面、劇的な変化を求められたのが二つ。

 普段の化粧を含めた身嗜みと、普段着を中心としたドレス全般です。

 化粧は単純に今迄一切求められていなかったため。ドレスも今後は人付き合いが館の中で完結しないため、爵位に応じた装いが求められます。


 はい。察しの言い方は気付きましたね?そう、今の私には腕がありません!

 今生の服って概ね貴族同士で見せ合うためのものなんですよね。だから自己主張しない服は基本存在せず、私服も含めて基本ドレスです。

 夜会用や昼の庭園用で方向性が違いますが、昔と違って貴族の子女は基本肌焼けを嫌って出歩かないものなんですね。領地の視察なんて基本殿方の仕事という。


 いやいや、時代は変わるもので。前世では殿方が好んで視察するのは主に遠方や砦くらいだったというのに。いや、そこは今でも同じかも?

 衣食の監督は基本夫人が行うので、当時は結構職人や商人とも独自の伝手や外出機会が普通にあったものですが。今は殆ど商人を招くだけだそうで。

 その辺は後日多少改革するとして。


 私の場合は貴族籍、それも今は役職無しの従五位ですから、基本は程々のドレスで問題ありません。ですが最大の問題は価格では無く、そう。形状なのです!

 今の流行だと、肩か袖口のどちらかが派手。例外はスカートの膨らみが大きい時くらい。それも歩くのには不自由無くても良いから走るのには不自由するくらいが適切と言われているそうです。謎風習ですね、見栄ですが。


「ですが、そっち系は基本外出用なので普段着では……。」


 侍女達が知恵を持ち寄っておりますが、肩しかない人間の服など貴族では有り得ない話です。一応夜会用であれば肩を出すタイプでどうにかなります。

 ですが普段着としては、胸元が見え過ぎて慎みが無いとの事。


「前例は今迄全く無かったんですか?」


「ありません。少なくとも子女、婦人では。」


 因みに修道服を持って来たお馬鹿さんは、私が何か言うよりも先に侍女達に制裁を食らいました。因みにモーガンの私物だったのでサイズも合いません。


「で、では殿方の場合は?」


「仕事の邪魔にならない服が常識ですので、襟や袖以外は凝らないのが普通です。

 言ってしまえば貴婦人のステータスは、仕事する必要の無い身分なので。」


 そう来たかぁ……。

 つまり私の様な者は秘密裏に修道院行きという、世知辛い世の中なのですね?嫌なら平民として生きるしかない、と。


「大丈夫ですお嬢様!要はモテれば良いんですから、お嬢様ならその顔と体だけで選り取り見取りですって!」


 うん。流石に今回は止めない。

 ていうか絶対あなたに縁談来ない理由ソコだから。


「しかし、一体どうしたものやら……。」


「已むを得ません。こうなれば、自分で用意するしか無いでしょう。」


 今迄に無い、画期的(※前世参照)な装いを!




 という訳で、やってきました城下町。

 お忍びであれば平民が着る様なコートを羽織り、帽子や襟で顔を隠し気味にしていても問題はありません。


 ……いや、まあ糸はあるので生地を買っただけで十分なんですが。


 だって現代の町を見て歩きたかったんだもん!というかある程度市井の空気を把握しておかないと今後は私も積極的に出歩く心算なんだもん!

 将来的に世間知らずのお嬢様では困るんですよ!


 とまあ自己弁護は置いといて。石造り煉瓦造りの街並みにやってきました。

 流石に領主直下ともなれば結構栄えておりますね。木材も要所要所で使っている様ですが、やはりメインの建材は石造りです。前世とは大分空気が違います。


 馬車から降りて入ったのは、家財用の木材を売っている建具屋です。

 勿論完成品を売っている店はありますが、こちらのお店はむしろ職人用。他にも細かい注文がしたかったりと色々拘りたい人はこちらに来るのが一般的。

 中流階級や庶民は意外と来るものなんですよ?修繕もこちらですし。


「おいおい、ここはお貴族様の来る様な場所じゃあないぜ?

 そういうのはきちんと商会を通してくれ。」


 ええその通り。この場合は貴族がわざわざ店に訪れるなど、店の裏口に来る様な不作法です。貴族の場合は呼び出して提案させるか要望を出すのが普通。

 この辺には礼儀作法の出来て無い方々が仕事している場所ですからね、普通なら迷惑極まりない行為です。


「お構いなく。こちらは木材を発注しに来ただけですので。

 こちらに図面があるので、必要な材木と幾許かの加工用具を売って頂ければ後は私が作りますわ。」


「え?お、お嬢様?」


「おいおい、あんたマジで言ってんのか?」


 ふふふ。私ほど手馴れている者は希少でも、昔はちょっとした手習い程度は武家の嗜みだったのですよ。

 貴族と民の距離感が昔は結構近かったのですよね。まあだから下克上などが気軽に起きていたという側面もあるのでしょうが。

 私だって図面は書けますし、簡単な織機くらい自分で作ったものです。


「ええ勿論。この図面を書いたのは私ですから。

 ちゃんと強度計算もしてありますから、この程度なら慣れたものです。」


 モーガンが広げた羊皮紙を見たカイゼル髭……。カイゼル頭?

 こほん。カイゼル髭とよく似た髪型の中年男性が目を瞠って自分の手で広げ直し隅々まで図面を確認し、視線を上げぬまま声を震わせます。


「……おいおい、お嬢様よ。この図面見せた上で材料だけ用意しろたぁ、あんたも随分と性格が悪いじゃねぇか。

 俺がグレムリン一族が一子、セメクト・グレムリンと知っての狼藉か?」


「ちょ、あなた態度が……。え?ぇえ~~~~~?

 グレムリン一族?!何でこんな所に?!」


「生憎箱入りだから、世間の常識には疎いわ。

 けれど変わり種の知識だけは豊富なの。」


「ていうかそんなにお嬢様って変なんですか?!」


「ちょっと侍女?」


「侍女さんには分かんねぇのか?

 この織機にはな、釘を含めた金物が一切使われてねぇんだよ。

 組み立て方も独特でいざとなったら分解して部品交換もし易い。文字通り、木材だけで完結した織機の図面なんて俺の知る限り存在しない。

 そんなものを、お嬢様が一人で作るってか?」


「ええ、材料さえ揃うなら一日で全部終わる作業ですから。」


「っ!……ち、三日だ。

 それなら材料費だけで俺があんたにゃ出来ない最高の仕事を見せてやる。」


 ふむ。これはどうやら本物の職人を引き当てた様ですね。

 であれば彼に仕事をさせるのも一興でしょう。


「それなら、納得の行くものが出来たら後は自由に作って良いですよ?」


「何?っ……!そうか!これはそういう織機なのかッ!!

 へ。言ってくれるじゃねぇか自称箱入り娘さんよ。

 どうやらアンタ、随分と職人というものに馴染みがあるらしいな。」


 たった一言から察するセメクト。

 そう、この機織り機は材料費が同型同サイズの織機の中では特に安いんです。

 これは金属が貴重な時期、金物が不足している時に考案された織機。だからこそ部品は交換し易く、庶民に売り出すのに都合が良い。

 貴族向けも作れますが、それ以上に量産性が極めて高い代物なのです。


「いや、何でそんな二人共喧嘩腰なんですか?」


「商談成立、かしら。ああ、材料費は完成品と一緒に請求して下さい。」


「は。大盤振る舞いな事で。了解だ!」


 一切書面を作らない口約束による契約。

 これは相手を認めさせる物を作れなかったら一切金銭を受け取らないという意志表明。職人達にとって、これ程挑発的な契約も他に無い。


 何よりこれは、相手が目利きだと納得出来ない相手には成立しない契約。

 価値のある物に幾らの値を付けるかも目利き側の観察眼の見せ所。半端な目利きで値を付けようものなら、次からの仕事はその程度。

 これはお互いにプライドを賭けた目比べ腕比べなのです。


「三日後、楽しみにしてますよ。」


「お、お嬢様?お嬢様、私を置いてかないで?!」


   ◆◇◆◇◆◇◆


 グレムリン一族とは、特定の場所に拠点を構えず放浪を続ける知る人ぞ知る凄腕の職人集団であり、同時に権力に屈さぬ異端者達でもあった。

 彼らは自分達しか知らず再現も出来ぬ、神業としか言いようのない腕を持つ者達が何人も所属し、各地に残る名品や名立たる建築物の一部に名を残している。


 一方で彼らは、引退したり一人前と認められる事で、時々一族から外れて定住をする者が現れる事でも知られている。

 そう言った彼らは殆どの場合名を隠すが、ごく稀に自分が認めた主の元でその腕を存分に振るう事がある。それが銘号持ち職人だ。

 これはあくまで自称するものであり、同時に自分の腕を誇る証でもある。銘号を刻む者は常に他の職人達に値踏みされて尚、己の業を自慢出来る凄腕達なのだ。


「セメクト・グレムリンですか。流石銘号持ちだけあって見事な腕前です。」


 腕の長さといい、生地の幅の調節し易さといい。

 好みに合わせた微調整こそ出来ましょうが、自作ではここまで使い易い機織りにはならなかったでしょう。

 自作の服を羽織りながら、私は最高の気分で新しい生地を織り続けています。


「いや、もうお嬢様が自分の服を作る必要は無いんですから自重して下さいよ。」


 モーガンが呆れた顔で突っ込みますが、趣味の時間に何をしようと文句を言われたくありません。勉学で手を抜いた事も一切無いのですから。

 そもそも貴族令嬢の一般的な趣味だって美術鑑賞や演奏だけというのは正直納得がいきません。いくら太平が続いたからといって、手習いや嗜みが疎かにされるのは危機意識が足りな過ぎます。

 庶民の生活を理解する意味でも、レース編みくらいは広めたいものです。


 因みに今の私の装いは和服、柄の一切無い白衣に紅色差袴。戦国の流れを色濃く残しているので乗馬可能な、馬乗り袴に近い代物。

 そう、克て巫女服と呼ばれたものです。

 実は私、前世では元々祭事にも縁が深くて何度か生贄にされた関係上、巫女装束の方が馴染んでいるんですよね。だって領内を見回るのにも、ね?


「いや。確かに凄くしっくり来るくらい着こなしてますけどね?

 シンプルなのに地味にも見えない良い装いだとは思いますよ?一般貴族らしさが無いのもお嬢様の外見を踏まえればむしろ丁度良いかも、と思いますけどね?

 もう既に見本は十分あるんですから後は職人達に任せて下さいよ!」


 ま。そうなんですけどね。そもそも私が直接作って見せる必要があったのはあくまでこれが未知の、失われた装束だったからこそ。

 現物も作り方も全て伝え終え、着替えは既に何着か私以外の手で完成しておりますので、彼女達の言う通りもう全部任せて問題ありません。ですが。


「何を言っているんですか!そもそも機織りで一番何が大変かって整経、つまりは糸の準備なんですよ!一人で全部やるのがどれだけ大変か!

 しかし!今の私ならそれらが全て容易く出来る!伸縮自在の腕が、同時に拡がる何十本もの腕がそれらを容易くするんです!

 楽しくない訳が無いでしょう?!」


「いや楽しいとかそういう問題じゃないですから!

 そもそもあなた本当に前世貴族だったんですか?!下働き系の仕事に馴染み過ぎでしょう!」


「あら私からすればむしろ近代の手習いは無駄が多過ぎますのに。

 有事に足手纏いにならぬよう、最低限の家事は把握しておくべきでしょうに。

 私の生前では織物はむしろ貴族の嗜み、腕の良い娘はそれだけで貴族に見初められる事もあった程なんですよ?」


 というか段々分かって来たんですが、近代の貴族はどうも武家というより公家に近い進化を遂げている様ですね。

 どうも武芸を野蛮と、軽んじている傾向すら感じます。


「お嬢様の前世は余程危険な時代だったのですねぇ。

 まるで領主が騎士として最前線に赴いていた様な錯覚すら、」


「あ。正にそれですね。

 丁度私の一世代前ですが、当時は今でいう領主が全軍を率いるものでしたから。

 実際干支幕府。実質的な今の国王に相当する方も、幾度となく最前線で戦った大将軍の一人が、天下統一を成し遂げた功績によって帝に任命されたんです。」


「「 。」」


 え?何その瓢箪から駒が出た様な顔。


「ま、まあなので私の産まれた頃は、未だ乱世の痕跡は色濃く残っていました。

 実際父も含めた当時の家臣達も半数以上は、百年以上続いた大戦の経験者でしたから、昔馴染みの家臣達は皆が合戦の自慢話で花を咲かせたものです。」


 懐かしいですね。細かな単語や時系列は曖昧ですが、あの時の光景だけは今でも不鮮明ながら思い出せます。


(どどど、ど~すんですかマルガリータ様!思った以上に本物ですよ?!

 これマジで悪魔が跋扈する様な時代の姫君だったんじゃないですか?!)


(おお、落ち着きなさい!

 姫君が勤勉な方なのも今の常識を熱心に学んでいるのも周知の事実!

 我々はお嬢様に今の時代に慣れて頂くよう全力を尽くすのみです!)


「しかし申し訳無かったですね。

 結局私は両腕を差し出した。皆に教わった手習いは、殆どが基礎だけで終わって最後まで学び切る事が出来なかった。」


「「お、お嬢様……。」」

 ぶわっと涙を流して両手を握り合う二人の侍女達。更にいつの間にか増えていた他の侍女達も、揃って口元を抑えています。

 一体何にそこまで感極まっているのかは気になりますが、今聞くべきでは無いと本能が警告しています。


「武家の嗜みとして刀剣に薙刀、弓術に体術、飛刀術。

 最低限の護身術ではありますが、そういえば馬術以外の運動全般は腕を失う前の指導分だけでしたね。

 礼儀作法は近代のだけで十分にしても、この腕でどの程度の事が出来るかは今度改めて確認しておく必要はありますね。」


(((いや、やっぱりアカンわ。絶対それ姫の一般教育と違う。)))

 何となく当時のジジババ様方が嬉々として色々教え込んだ姿が幻視出来る。

 孫娘の様な少女が必死になって教えを請う姿は、絶対可愛かったのだろうなと、侍女達は当時の保護者志望達に白目を剥いた。

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