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5.お父様との決戦と参りましょう

  ◆◇ホラー再開です◇◆


 明らかに大の大人としか言いようがない妖艶な娘が、唐突に我が子を語り出した時には驚きを通り越して呆れ返ったが、言われてみれば片鱗が無くも無い。

 実際初心な生娘の様な恥らいっぷりを見るともしかして本当に幼いのではと疑問が過ぎるが、となると気になるのはあの白い髪と潰れた様な片目、そして何よりもあの両の腕だ。


 間近で見れば既に成人より少し小柄程度の身長は成長の早い娘子であればあり得なくはないかと思うが、やはり仕草一つ一つに大人びた色気がある。

 しかし不思議と超然としていて、まるで長年の習慣が染み付いた様に丁寧で上品であり、欲望の眼差しを向ける事に自然と抵抗を覚える様な気品があった。

 何よりも今、額に指先だけを当てる仕草を取ってしても、まるで常に見られる事に慣れた様な、上位貴族特有の振る舞いを感じさせる。


(――これ程の教育を施せる者が儂の配下にいるものかよ。)


 高貴過ぎるのだ、不自然な程に。

 だが同時に、ならば何故としか言い様が無い。あんな異形の腕を我が娘が持ち合わせたなら、突然身に宿ったというのなら、自分に報告が届かぬ筈は無い。

 間違いなく前回の報告では只のヒステリックな小娘同然だったと断言出来る。


(いや、だから届かなくなった?この変化がつい先日の事だとしたら?)


「いいえ。そもそもあなた達が私を認める筈が無いのは当たり前でしたね。」


 奇しくもグロリエル伯がその可能性に気付いた時、アザリアを名乗った娘の纏う空気が背筋を凍らす異質なものに変わる。

 途端に隣国との戦場で培った勘所が警告を発し、己が著しく危険に曝されていると告げる。このままでは駄目だと、何もせねば死ぬと本能の警告のままに動く。


「焼き焦がせ〔火柱(ファイア)〕!」


 下手から振り上げた指輪が輝き、手の平から放たれた火が膨れ上がって娘の姿が火柱に呑み込まれた。表情こそ伺えなかったが人影が炎の中にある。

 嫌な汗が消えず、火柱は保ちながら周囲に警戒を向け。


「あらあら、流石はお父様。

 娘を名乗った相手に躊躇一つありませんでしたね。」


「っ?!ちぃ!」


 平然とした声を上げる火柱の中の人影に向け、即座に刃を突き立てる。

 しかし切っ先は火の中に届く事無く黒い平らな手に掴まれて止まり、火柱が吹き散らされる様に中から掻き消される。


「残念、罰ゲームです。」


 後ろに下がる前に、剣を握る手首が外された。


「ぐぁあああ!」


 武器を取り落とし手首を抑えようとするが、不意に腕に巻き付いた黒い帯に気が付くと、ざわとその正体に思い至る。


 外れた手首は気付けば嵌め戻されており、痛みと腫れによってその痕跡が幻では無いと語り継いでいる。


 何よりも幾重に散らばり枝葉の様に広がる周囲、壁に天井、床、廊下。

 全てに拡がる無数の帯、帯、帯。そしてその終点である五本の切れ端。影の形をした紅葉にも見た、それらは全て、手の平の群れ。


「ぼぉっとしてて、良いんですかぁ?」

「ぐぁ!」


 我に返ると同時に足首を掴まれて宙に浮き、背中を床に叩き付けられる。

 自分が引き摺り倒されたのだと分かった時には両足首を引っ張られ、音を立てて開いた扉の外、石造りの廊下へと引き摺り出される。


 尋常ならざる速度で廊下を引き摺られ、その端の壁に顔面を叩き付けられて呻き声を上げると、今度は襟首を掴まれて吊り上げられ。


 天井に顔面を叩き付けられた後は、天井間際を顔面擦れ擦れで引っ張られる。


 ドア上の壁に叩き付けられるかと思った瞬間、床に背中を打ち付けて。


「……っは!」


 全身が引きつる痛みに我を取り戻すと、どうやら失神していた様で慌てて身体を起こすと、娘と名乗っていた怪物が妻の方に顔を寄せているのが見えた。

 妻がこちらに気付いたが、首を横に振り気付かない振りをしろと訴えながら地面に落ちている剣に、音を立てない様に拾い上げる。


「ちゃんと見ていて下さいね?あなたの夫が如何に無力かを。」

「?!」


 次の瞬間、突き刺そうと構えた腕の肘が外され、手首を無理矢理に捻られて己の顔に切っ先が迫る。


「うぐぁぁっっ!」


 顔から血飛沫を上げて無理矢理に捻った腕が折れ、激痛に床に倒れ込もうとしたがまるで吊り上げられる様に剣を構えたままの腕が動かない。

 まるで拳を掴まれている様だと必死で視線をずらし。


 腕に巻き付いた帯から手の形をした影が剣を奪う。

 そして痛みに朦朧とする中で視線を辺りに向ける。


 壁一面の帯から続く、手。手。手。

 枝葉の様に広がり全ての帯の先端にある、無数の手。

 流石にここまで来れば見当が付く。この影の帯は腕なのだと。

 この腕の無い娘から伸びている無数の黒い帯は、全て一つの例外も無く。


 死霊の群れの腕なのだと。


「き、貴様一体、何に手を出した……。

 いや、貴様一体何にその身を捧げた?」


 くすり、と子供らしからぬ上品な笑顔。


「ようやくそこに疑問を抱いて下さいましたのね。

 でもハズレです。私、何かに手を出した訳でも、自分を捧げた訳でもありませんもの。単に私は、ただ思い出しただけ。」


 くるくると影で出来た二本腕を広げながら。

 肩から伸びる他の腕に邪魔される事無く楽し気に回る。

 くすくすと楽し気に笑うその姿は、いっそ清々しい程に無邪気に見える。


「私の前世は怨霊ですよ。

 飢饉の税代わりに両腕を捧げさせられて、雨乞いの祈祷の際に呪いの人柱として瞳を捧げ、最後には私自身を生贄に捧げて殺された。

 私を裏切り続けた両親を呪い殺して、未だに成仏出来ず生まれ変わり続けた。

 国崩しと呼ばれた大怨霊の、生まれ変わった姿だったんです。」


 そうしてはっきりと笑顔に怒りと憎しみの眼差しを滾らせて。

 口の中に入った影の手らしきものが、心の臓を握り締める感触が伝わる。


「あなた達の私への扱いが、死霊であった頃の私を目覚めさせたんです。」


  ◆◇ホラーここまで◇◆


 ま。何割かは嘘ですけどね。

 例えば私が目覚めた直接の理由は女神様が封印していた記憶や人格を戻した所為ですが、彼らの所業が私復活の原因なのは間違いありません。


 この二人は私を利用する気はあったらしく、何処かの妾に放り込むために最低限の教育を施す気ではあった様で。

 逆に言えば、私が殺される事態までは二人にとっても予定外なのです。


 しかし付けた侍女達は全くそうは受け取らず、故にやり過ぎたと気付いた頃には既に彼女達は引き返せない程の扱いを繰り返していただけ。


 まあ、真剣に監督せず質の悪い侍女と入れ替え続けていれば、これは起きて当然の結果。彼らに責任が無いのなら、誰が人に何をしようと、他人に責任がある者等存在しないでしょう。責任を取るという言葉が、夢幻となるでしょう。


 だって、かれらは主で在り、責任者です。

 侍女達だけの責任だなんて言い逃れが許される立場ではありません。

 侍女達の質を保証し管理するのが、主である彼らの役目なのですから。


「なのであなた達の様な方々が私は心から許せませんの。

 肉親の情だなんかを期待出来るのならかつての私は処刑されなかった。ですから今生では一切あなた達を家族とは思いません。

 上辺だけの家族関係、お得意でしょう?」


 二人を地面に叩き付ける様に降ろして無理矢理頭を床に擦り付けます。

 ここで手を抜いたら後で寝首を掻かれますからね、理屈の通じない相手だと本気で思って頂けねばこの後の関係は成立しません。ので。


「あなた達には私の傀儡になって頂きます。

 嫌なら残酷に死になさい。丁寧に丁寧に、少しでも私の気が晴れるように苦しみ抜いて死なせてあげます。

 あと、どうしても野心が諦めきれないというのなら、あなたが手に入れたがっている全てを滅ぼしてあげます。

 何なら、この国全てを皆殺しにして差し上げても構いませんよ?」


「……本気で言っているのか?そんな事、で「出来ますよ?容易く。」」


 思わず口走った父の言葉を遮り、くすくすと嘲笑しながら。

 うん地味に難しいですね、嘲る様に笑うのって今一イメージが湧かなくて。


「その気になれば、今からこの国の王様の心臓を握り潰す事も出来ますよ?

 あなた方が思っている以上に私の手は伸びるので、この国の全ての住民を今日中に握り潰す事だって可能です。」


 二人の反応を慎重に伺いながら、まさかと思っている内に畳みかけます。

 考えさせてはなりません。理屈ではなく感情で恐れて貰うのです。


「そうですね、逃げれば大丈夫なんて思われても癪です。

 お父様は王都に自室を持ってらっしゃいますよね?

 そこにある私物の中で、この家に無い物はありませんか?目印になるものを何か一つ、今から持って来ましょう。

 勿論、私自身はこの場から動きませんよ?」


 勿論これは予定通りの台詞。ですがさも今思い付いたという顔を取り繕ってさあさあとお父様を急かします。必要以上に考えさせてはなりません。


「では、儂の金庫にある宝剣の一つはどうだ?」


「あら、金庫は壊して構わないので?

 あくまで開けるのは手ですから、窓程度なら兎も角鍵は必要ですよ?」


「なら、壁に立てかけてある方だ。

 暖炉の上に飾ってある二本のどちらでも良い。」


 半信半疑ながら、何よりも試してみたい気持ちがあるのでしょう。そして場合によっては私を言いくるめて利用出来るか否か。そこまで考え始めましたね。

 予定通りとはおくびにも出さず、閉じた瞼の裏で〔遠目〕覗き見を試みて。


「ふむ。ああ、これですね。

 ええと、少々お待ち下さいな。」


 ぱたぱたと隙間から鍵を捻って窓を開け、あっさりと伸ばした腕が、遠く離れた王都に遭った二本の剣を掴み取ります。

 勿論馬車で走れば数日どころか十日くらいは必要な距離ですよ?


 それを私は殆ど一呼吸程度で空を翻り、文字通り影が差す速度で王都にまで到達して、そのまま王都の館の外にまで持ち出し窓も閉めます。


 実はここでちょっと注意が必要です。私の腕だけなら影の速度で移動出来ますが荷物は違います。突風も度が過ぎれば刃物だって砕けるんです。

 なのでこの剣をちょっと、影の腕の中に押し込んで、と。入った。

 ぃよいしょっとぉ!よぉ~し、よぉ~し。


 感覚的に若干重くなりましたが、荷物の輸送としては有り得ない速さで引き寄せ足元の影に合流させる事が出来ました。

 やってみて分かりましたが、流石にこの距離は腕にちょっとした倦怠感を覚える様ですね。まあ解せばすぐに解消される程度ですが。


 かかった時間はおよそ数分。途中で軽く実況しながら行ったので、何をやっているのかは何となく二人にも伝わった筈です。

 そして尋常の長さに戻った腕二本の手の平から、二振りの剣を取り出します。

「さぁ、この二本で合ってますか?」


「ほぅ……。うむ、間違いは無いな。確かに、儂の剣だ。

 そしてお前の要求は、儂に傀儡になれ、だったな。」


「ええ、その通りですよ?」


 父に手渡した宝剣とやらは、特別な力が宿った代物ではありません。

 にも拘らず素直に頷く筈は無いと思っていた傀儡という言葉を直球で口にした父に私は、全く気にしてない素振りで警戒を強めます。


「ふ、お前はどうやらこの父という人間を勘違いしている様だな?」


「あら?それはどういう意味でしょう?」


 まるで勝利を確信したかのような言動に、私は何時でも仕留められるよう影の手を構えつつ静観し。

 父は。


 宝剣を床に置き、次に腰の佩剣、背中の隠し短剣を床に並べて。

 膝を付けて座り、両手と額を()()()()()


「お前が実の娘であるかなど関係無い!

 このグロリエル辺境伯バルバス、強者に頭を下げる事に何一つ躊躇(ためら)わぬ男よ!」


「あ、あなたぁああああ~~~~~~~~~~~~~っっっっ!?!?!」


 え、えぇぇぇぇええええええ~~~~~~~~~~~~~~????


 それは、見間違い用の無い土・下・座!だった。

 勿論これは、今迄全ての予知で一度たりとも見た事の無い、初めての光景。

 何よりも驚きなのは、父から感じる気配に誇りすら感じるという点だ。


「ふふふ、驚いたか我が妻よ。だが儂は常々口にしている筈だ。

 この世の真理とは、弱肉強食にこそあると。

 如何なる力であろうとも強者は強者、弱者は只平伏すのみ、だ。

 弱者が強者に命乞いをする事に、何を恥じる事が有ろうか。」


 アンタ、弱者の側でそれを本気で口に出来るのは本当にスゲェよ……。


「あ、あなた……。正直言ってあたし、あなたのそういう所、大好き……。」


「えぇぇ~~~~…………?」


 マズい。

 義母が頬を赤く染めながら口元を隠している姿からみるに、恐らく二人は本気で言っているのでしょう。……正直私は、ドン引きです。


 ヲホホホホ、これは本気で母とは性格が合わなかったとしても納得ですね。

 心を折る以前に血が繋がっていなくても気にしないとは、全くの予想外ですよ?

 え?コレ改心するの?しないの?


「ふ。父の意外な姿に戸惑っている様だな。

 であれば先人として指針を与えよう。先ず儂という人間は、金が好きだ。

 そして儂は武勲も欲しいが、そっちは判り易い武芸の成果だからだ。敵国を侵略したい最大の理由は武勲よりも金だな。


 隣国ガンドール国王は儂の知る限り戦好きだが、実際に戦を仕掛けて来る国境沿いの貴族はちと事情が違う。連中は飢饉の度に略奪に来ているのだ。

 民を食わせる財貨が手に入ればそれで良し、敗戦でも食わす人は減る。」


 ここまでは良いかという父の視線に、私は頷いて続きを促します。


「ぶっちゃけ我がリカルド王国としてはガンドール王国との開戦は利益が薄い。

 全面戦争で王都を落す気が無い限り、多少国土を奪ったところで維持には膨大な開発費が必要で何十年かは赤字だろう。

 だが我が領としては、長年の侵略が止まるのは大きい。出来れば王都主導の全面戦争によって王都を落したいところだ。

 つまり勝ちたいのではなく、略奪を止めたいのが我が領の本音なのだ。」


 長年小競り合いが続いているのは知っていましたが、今迄の未来視でアザリアが関わった事はありません。その辺は父と兄の領分でした。


「それは、武功は必須では無い、と?」


「その通り。儂が欲しいのは要約すると侵略を止めるための勝利と、それを成す為の発言権だ。」


「では例えば、領地の開拓で元が取れるとしたら?」


「侵略が止まらんのなら基本は変わらんが、確実に阻止出来る防備が整うなら優先しても全く構わん。

 というより、世の名君は民を優先して赤字を選ぶものだろう?

 儂は金が欲しいのだ。領地開発で民を肥やしても儂の懐は肥えないだろう。」


「それは違います。民を優先するだけの領主は決して名君とは言いません。」


「ほう。ではどの様な者が名君なのだ?」


「決まっています。その赤字の採算が取れる者です。

 目先の損得では無く、十年二十年先まで踏まえて差し引きで益を出す。

 三十年後は現状を上回る益を出し続ける。それこそが国を富ますという事。

 その場限りの施しを繰り返せば、結局民が楽を覚えるだけ。最終的には自堕落であったり享楽的な民が出来上がるだけでしょう。

 民を育て、土地を富ます。それを成してこそ名君というもの。」


「……詰まり、真の名君は、儲かる?」


 ずずい、と両手を組みながら身を乗り出して来ましたよこの父。


「……まあ。領主の主な仕事は土地と民の管理ですから絶対とは申しません。

 ですが飢饉に備えれば民は減りません。地力が損なわれなければ復活も速い。

 開拓が進めば税収も増える。ただ民に学は無いので目先の利益に飛び突き易いのも事実でしょう。

 如何に民の益になるとは言え、労役を課し続ければ反感は増すものです。

 これも名君とは呼ばれないでしょう?」


「ふむ。だが民の為という題目と、死者が減るのは民にも判り易いな。

 つまり、匙加減の上手い者が真の名君という訳か。

 ……それは、儲かるな。」


 この父、金から離れん!


「ふふふ。分かって来たかな?

 儂は民の事などどうでも良い!しかし、金になるなら別だ!

 戦続きの我が領に、国を富ます知識など無い!だが、あって元が取れるなら儂は民に媚びる事も、一向に構わん!

 儂は自分が楽して幸せになるのが大好きだ!」


「くっ!ま、まさかあなたは!」


「察したようだな!娘を才女として売り込みつつ、権限を与える!

 それは儂の欲望に叶う事だ!お前が優れており、裁量を欲しがり、成果を出せる者ならば、儂が肩入れしない理由は無い!

 そもそも美食に際限が無いのは味より希少さを有難がるからだ!

 儂は美味い飯と酒があるなら、面倒事を担当させるために隠居する事は、一向に構わんのだ!」


 い、言い切りおった!

 こ、この父、自堕落になる事に、躊躇いが無い!


「ま、待って!社交界は?!

 それを言うなら社交界でチヤホヤされるのは気分が良いわよ?!」


 義母、ぶっちゃけた~~~ッ!いや、何この本音の暴露大会。


「ふふふ、今は存分に楽しめば良いさ。

 だがな、何れ儂らは歳を取り、外見も陰るぞ?さすればどれだけ権勢を誇ろうと陰口を叩く連中は増える。強者を蹴落としたい弱者に、見栄など無駄だ。

 であれば早い段階で、確実にチヤホヤされる商家との繋がりと伝手を増やしておくのは本当に悪い事か?

 連中は利になる事の為なら幾らでも儂等に媚びるぞ?」


「くっ!ま、まあ確かに、化粧だけで誤魔化し続けるのも限度があるわね……。」


「そう。そして優秀な娘ならば、儂等が適切なコネを保ち続ければ……?」


「必然、私達を活用し続ける道を選ぶ……?」


 ホント欲望に敏いなこの父!

 まさかこの男が義母を説得するとは思いませんでしたよ!

 見事に義母に生唾を呑ませ、自分の味方に転がしましたね!

 しかも私の前でこれを言うって事は、絶対私に許可を求めてますよね!

 二人揃って期待する様な眼差しを向けてまぁ!


「……確認しておきましょう。

 母と婚姻した経緯と、母の実家タムリン子爵家を乗っ取った理由は?」


「うむ。お前の母アマンダとの婚姻は、ぶっちゃけ顔と体目当てだ。」


 ぶ。


「ももも、え?どゆこと?」


「うむ。実際タムリン子爵家との関係は単純に政治的に都合が良かっただけだ。

 だがお前の母アマンダは、お前に匹敵するエロい身体をしていた上に、お前とは違って絶妙にそそる色気があった。

 そして一番そそったのが、実家や民を口実にして譲歩を迫った時の表情だ。」


「げ、減税を口実にアレコレ迫ったと聞いていますが?!」


「戦争で出費が嵩んだからな。減税のタイミングも難しかった。

 のでエロプレイを口実に減税すると一番上手く行った。その辺お前の母は、政治的センスが儂より上だったのだろうな。」


 ぇぇぇええ、え~~~~~~!あの母への譲歩、口実だったの?!

 しかも本当にエロ目当て?!スケベ親父なだけ?!


「母の侍女を頻繁に削ったり子爵家を乗っ取ったのは?!」


「いうかてオマエ、夜の遣り取りに口出す侍女とかウザいじゃん。

 まあ儂の方に口出し続けて何かと隙だらけだったからな。自分の領地をもう少し気を付けていればああも乗っ取り易くはならなかっただろうが。

 というかアマンダが居なくなったら普通に対立し出したんで、もう良いかなって感じでそのままプチッと。」


「そ、それを信じろと……?」


「そもそもタムリン子爵家はそこまで収益の上がる領地でも無い。

 というか、領地の昔の記録は今後の為に見方含めて教えるから、見ればお前の母がどれだけ適切な助言をしていたか分かるぞ?

 ぶっちゃけタムリン子爵家がああも隙だらけになったのは助言役だったアマンダが居なくなったのも大きかったんじゃ無いか?」


「まあ実際あの女が私より領地に詳しかったのは確かよ?

 序でに妙に仕草がエロかったのもね。社交界は苦手な癖にそっち方面であたしは太刀打ち出来なかったもの。」


 あ。今分かった。

 義母にとって最悪なのが、母が苦手だった社交の出来る私だったのだと。

 サリザー夫人視点では私、母の弱点を全て埋めた完璧超人だったんですね。若い母の容姿をもつ私とか、夫のドストライクだと知っていた訳で。

 爪を噛むサリザー夫人を見れば、如何に母を苦手としていたのかが分かります。


「って、え?私、父の好みの見た目なんですかッ?!」


「あ。うん。見た目だけな?

 何というか、お前色気が異常に死んどるのよ。

 なんか拝みたくなる感じ?見た目だけは間違いなくエロい筈なんだが……。」


 こここ、このヤロウ。今物凄く残念なモノを見る生暖かい視線を向けてますよ!

 しかも夫婦二人で如何に性欲が萎えるかを語り合って頷き合ってやがる!

 オマエ等ホント相性抜群過ぎやしませんかね!


「じ、事情は分かりました。まあ確認するまで判断は保留と致しましょう。」


「ふむ。ならば明日、お前を迎え入れる準備を整える。

 明後日から本邸で暮らせ。こうなると別居を維持する意味も無い。今後の方針で話し合う事も多かろう。」


「因みに、私が別邸に送られた経緯は?」


「タムリン子爵家の残党を焙り出すのが一番。

 後は見ての通り、お前の容姿がサリザーの嫉妬を煽るからな。

 儂からすれば適当な相手に嫁に出す予定だった娘だ、醜く無ければあまり細かい事は気にせんかった。」


 え?と振り向く義母。え、全く知らなかったの?


「いや、儂とて娘に手は出さんぞ?

 それに何時までも盛んでは居られん。サリザーが死んだら新しい嫁を貰う事は、多分無いだろうな。儂の下半身にそこまでの若さは無い。」


 オイオイぶっちゃけるなこのエロ親父。年頃の娘相手に聞かせる話じゃないって分かった上で語ってますよね?


「うむ。生娘なのは顔に出てるからな。

 だが多少不興を買ってでも本音を語った方が良いと儂の生存本能が語っておる。

 お前は決して理不尽な理由で処罰する事を好まんとな。」


「このヤロゥ!ほんといい度胸してますね!」


 く、悔しい!思いっきり見切られてる!

※実母「言う通りにしなきゃ民が……。(エロコス中)」

 ちち(逆らったら採用しないとは言ってないがなw!)


 乙女ゲー版の力関係は、父>義母≧アザリアだったので父辺境伯の本音を知る手段が誰にもありません。格下に本音話すのは面倒がる人なので。

 父的には、実母≧義母>(超えられない壁)>タムリン子爵家です。実母の家だから支援してただけで、単に殴られたから殴り返しただけ。


 本音で話せばいつでも実母と上手くやれるところを、エロのためにギリギリ許せるラインを攻め続けたのが強欲伯最大の罪状ですw

 実母視点だと顔と体だけの相手の話を聞く男じゃ無いのは分かってますwでもコイツ絶対民はどうでも良いし……w

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