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帰郷

〈地国西〉

↓ヤムーアルミド街道

〈地国南〉


歩くとは言ったものの流石に長い

既に歩き始めて2日が経過していた


「つ… 疲れた… ナルディ… 今どれくらい?」

「そうですね、ようやく半分ってところでしょうか」

「半… 分…!? 一旦歩くのはやめてどこかで遊びたい!」

「そうですね、少し街道から外れることになりますが

 アヤク湖に行ってみますか!」

「湖!? いいね!」


〈ヤムーアルミド街道〉

 ↓

〈アヤク湖〉


街道から外れて日が少しだけ入ってくる心地の良い林道を進んでいった先には

クミルやヤムなどの少し小さめの街と同じくらいの大きさの湖が広がっていた

今日は天気が良く湖面が陽を反射しキラキラと光っていた


「大きい! 魚いるかな!?」

「たくさんいると思いますよ!」

「そういえばナルディって泳げるの?」

「もちろん… 無理です!」

「そっか地は水が弱点だもんね?」

「それもあるのですが元よりかなづちでして…」

「へぇ…? ナルディにもできないことってあるんだね」

「当たり前ですよ!?」


しばらくの間、釣りや浅いところで水遊びをしていたら

辺りは真っ暗になってしまった

昼間は明るかった森は真っ暗になってしまい湖面には月が映っていた


「あはは… 遊びすぎたね」

「そうですね… そろそろ野宿の準備をしましょうか」


旅に出てから既に2夜目と言うこともあり

ナルディが手際よくテントの準備を進めてくれた


「明日にはルッカに着くかな?」

「そうですね… アルミドには着くことが出来るかと思いますが

 ルッカまでは少し厳しいですかね…」

「そっか… 1つの依頼で地国1周の大冒険になっちゃったね」

「そうですね、さてそろそろお喋りは終いにしてお休みになってください

 明日もたくさん歩きますよ!」

「うん、おやすみナルディ」

「はい!」


・・・・・・


目が覚めると同時に違和感に襲われた


「ふぁ… あれ? ナルディ? ナルディ!? どこ!?」


ナルディがテントの中にいなかったのだ

声をあげても反応はなかった、それどころか辺りは嫌に静かだった


「ナルディ! 返事して!」


テントから飛び出して辺りを探すと木の根元にナルディが倒れていた

辺りには血が飛び散り魔物の毛皮と思われるものが散乱していた

ナルディの体には戦闘痕が多くあり、大けがをしているのは明らかだった


「ナルディ! 大丈夫!?」

「サ… サタナ様…! 無事でよかった…!」

「ナルディが無事じゃないでしょ!

 お願い…! 発動して…! イミル!」


『サタナのイミル!

 ナルディの体力が10回復!』


「足りない…! どうしようどうしよう…!」

「ありがとうございます… 大分マシになりました…」


そう言いながら微笑み私の頬を撫でてくれたが

瀕死状態であることに変わりはなかった


「そうだ、アルミドに行けばお母さんに診て貰えるかも!

 ナルディほら乗って!」


ナルディをおんぶしようと体制をとるがナルディは首を横に振った


「そんなことできません…! 従者が主の背に乗るなんて…

 いくら緊急事態でもダメです…」

「乗りなさい! これは命令だよ! 主人の命令に逆らうの!?」


そう強く言うとナルディは背中に乗ってくれた

ナルディをしっかり背負うとアルミドに向かって走り出した


〈アヤク湖〉

 ↓ヤムーアルミド街道

〈アルミド〉

 ↓

〈クライ家〉


「ただいまお母さん!」


――――――――――――――――――――

〈名前〉ムミ・クライ              

〈種族〉人族                 

〈属性〉地                   

〈レベル〉14                 

〈ミンラ〉炎の初級魔法を操る          

〈職業〉医者                  

〈能力値〉…                  

――――――――――――――――――――



「サタナ!? 随分と早い帰りだね!?」

「この子を助けて!」


背負っているナルディに気づいたのかお母さんは手際よく手当の準備を始めた


「ほら、突っ立ってないで!

 その子を早くサタナのベッドに寝かせてあげなさい!」

「う、うん!」


ナルディを自分の部屋に運びベッドに寝かせてあげた

しばらくするとお母さんが薬品やらなんやらを持ってきて

テキパキとナルディの治療を進めた


・・・・・・


「よしっと、これでとりあえず大丈夫だよ」

「ありがとうお母さん!」

「それで、この子は? 何があったんだい?」

「この子は私に仕えてくれてる赤龍族のナルディだよ

 昨日の夜アヤク湖付近で野宿して朝起きたらこんなことに…」

「赤龍族…!?

 そんな強い種族をここまでするだなんてあいつらはそんなに強いのかい…!?

 いや、天国落下の影響で力を増してるって考えるのが妥当かね…」

「あいつらって?」

「アヤク湖周辺に住むブラッドウルフ達だよ」

「ブラッドウルフ…? で、でもお昼はそんなの見なかったよ!?」

「そりゃそうさ、ブラッドウルフは吸血鬼の狼版みたいなものだからね

 昼はあまり活動できないのさ

 ってこれサタナが10歳だったかの時に話したはずだよ?

 忘れてたのかい?」


確かに昔、勝手に湖に行こうとした時に

そんな話をされたような記憶がある気がする


「ごめんナルディ… 私がちゃんと覚えていれば…!」

「従者の安全をきちんと守るのも主人の役目だよ! しっかりしなさい!」


お母さんに背中を叩かれ背筋が伸びる

背中を叩くお母さんの顔はいつになく真剣だった


「…うん!」

「じゃ、起きるまでしっかり見ててあげなさい!」

「うん!」


私の返事を聞いた後、頷いてお母さんはリビングの方に戻っていった


・・・・・・


いつの間にか私は眠っていた


「ん… ナルディ…! ナルディ…」


自分が寝ていたベッドの横の椅子でサタナ様が眠っていた


「ごめん… ごめんね…!」


よく見るとサタナ様の顔には涙の跡が残っていた


「なんで謝っているんですか…? 謝るのは私の方ですよ…」


そう独り言を言いながらベッドから起き上がりサタナ様をベッドに寝かす

サタナ様の頭をなでると少しだけ安心した顔になったようで安心した


「そういえばここは…? アルミドには着いたみたいですね」


窓の外を見ると見覚えのあるアルミドの街並みだった

次に部屋を見渡すとサタナ・クライと書かれたものがたくさんあることに気づいた


「もしかして… サタナ様のご自宅ですか!?」


驚きすぎて大声になってしまった


「起きたのかい?」


自分の声が聞こえてしまったのか

部屋の扉が開き女性が顔を出して手招きしてきた

不思議に思いつつも彼女についていきリビングに向かうと

男性がお茶とお菓子を準備していた


「あ、ありがとうございます」

「あはは、そんな緊張しなくていいのに

 まぁなんとなく分かってはいると思うけど一応自己紹介するね

 私はムミ、ムミ・クライだよ、本当にサタナを守ってくれてありがとうね」

「いえいえ…! それが私の役目なので当たり前です!」

「あっはは! いい子だね! あ、こっちはサタナの父さんだよ」

「俺はドンロ、ドンロ・クライだ

 まずは感謝をしなければ、本当にサタナを守ってくれてありがとう」

「こんにちは!ナルディ、ナルディ・ロフです!」

「そんなに緊張しないでくれ!

 それより私たちから君にお願い… いや依頼があるんだ」


そう切り出すとドンロ様は真面目な顔で話を始めた


「依頼ですか?」

「あぁ、君はサタナがなぜ旅に出ているか知っているか?」

「はい、サタナ様が教えてくれました『自分の知らない自分を知りたい!』と」

「うん、そうなんだ… 正直私たちはその旅に反対していたんだよ」

「普通に考えたら私たちが理由なんだから

 止める権利なんてないことは分かっているんだけどね」

「そんな… やはり不安なんですよね、もちろんサタナ様が大事だから…」

「あぁ、そうだ… サタナが大事という気持ちとサタナの意見を尊重したい

 という気持ちとの板挟みになっていたんだ」

「だから、ナルディちゃんにちゃんと以来と言う形で

 サタナの護衛を頼みたいと思ったってわけさ」

「そう言うことだ… この通りだ! 頼む! 引き受けてくれないか?」


そう深々と頭を下げるムミ様とドンロ様だったが、私の答えは既に決まっていた


「お二人とも何かを勘違いされているようですが…

 既に私は一生サタナ様についていくことを決めています!

 依頼なんてされなくたってサタナ様を絶対に守り抜いて

 サタナ様の旅を最後までお手伝いします!」


自分の宣言を聞いて安心したのか顔を見合わせてほっと一息ついた後

2人揃ってより一層深く頭を下げた


挿絵(By みてみん)

地図→https://www.pixiv.net/artworks/108712258

次回は6月10日です

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