迂回
ずいぶん疲れていたのかもう朝になっていた
ナルディはまだ寝ているようなので
朝ごはん作りに取り掛かろうと張り切りながらバックを覗き込んだ
「なんも… ない… あぁぁぁ… 私のばかぁ…!」
バックの中はすっからかんだった
アルミドで買っておけばよかったと今更後悔する
どうしようどうしようと悩んでいるとナルディが起きてきた
「おはようございます、サタナ様…
ってどうしたんですか!? そんな真っ白になって!」
「ごめん… 私は朝ごはんすらも用意できない出来損ないの主だぁ…」
「本当にどうされたんですか!?」
ものすごく心配してくれるナルディに空っぽのバッグを見せる
「な、なるほど… それなら外に食べに行きましょう!」
「うん…」
ナルディに慰められながら宿を出て商店街へと歩を進めた
〈宿屋グドー〉
↓
〈クミル商店街〉
「色んなものがあるね…見たことないものもある!」
「そうですね、ここは地国の北の方なので
地国の真上にある炎国の物も売られているのでしょうね」
「なるほど、次は炎国に行く感じかな?」
「お言葉ですが… 地国と炎国は確かに横で見たら近いですが
数1000メートルほどの絶壁が存在していますよ?」
「もしかして、少し見えてたあの壁みたいなのをよじ登るしか
炎国に行く方法がないの!?」
「いいえ、もう1つの道としてはリウクス地方を
ぐるっと一周すれば行くことができますよ」
「え? どういうこと?」
「リウクス地方は一周するように坂になっています
その一番下が地国なので地、水、風、鉄の順番に
登っていけば最終的に炎国につくことができますよ
その証拠にこの球を見ていてください」
「うん?」
「ほいっ」
ナルディが球から手を離すと球はゆっくりと崖の方に向かって転がり始めた
「へぇ… すごい地形だね、もしかして、炎国が一番上にあるってことは
炎国から天国まではすぐに行けるってこと?」
「そうでしたね、なので逆に一番下にある地国に住む生物は
天国に行くときにとても苦労したそうですね」
「そういえば、天国が落ちたって言うけど周りの国に被害はなかったの?」
「もちろんありました、しかし天国の真下にはリウクスの大湖があったので
そこに落ちた衝撃による高波ぐらいですね」
最初の方はにこやかに教えてくれたナルディだったが
「あのサタナ様… お言葉ですが… リウクス地方の地理・歴史ぐらいは
学ばれてはいかがでしょうか?」
流石に無知すぎて怒られてしまった
授業中ずっと寝てて何も聞いてなかったつけが
こんなところで回ってくるとは考えもしなかった
「うっ… はい…!」
結果、食事にリウクスの歴史という本がくっついてきた
【60ケル→50ケル】
「さてそろそろルッカを目指して出発しましょう!
先ずはここから西にあるヤムに向けて出発です!」
「そうだね!」
〈クミル〉
↓
〈地国北〉
↓クミルーヤム街道
〈地国西〉
『地スライムが現れた!』
『サタナの全水魔法!
弱点!地スライムに18ダメージ!
地スライムは倒れた!』
「魔物討伐もお手の物ですね! 流石サタナ様です!」
「えへへ、そうかな?」
『地スライムA,B,Cが現れた!』
「わわっ… いっぱい出てきた!」
「お任せください!」
『ナルディの全水魔法!
弱点!地スライム達に平均23のダメージ!
地スライムA,B,Cは倒れた!』
『ナルディのレベルが上がった!』
――――――――――――――――――――
〈名前〉ナルディ・ロフ
〈種族〉赤龍族
〈属性〉地
〈レベル〉38
〈ミンラ〉全ての生き物と
コミュニケーションがとれる
〈職業〉――
〈能力値〉体108・力143・守70・速75
知53・運50
――――――――――――――――――――
「まとめて倒せるの!? すごい! 私にも教えて!」
「えーっと… 難易度が高いので…
サタナ様がもう少し魔法に慣れましたらお教えしますね!」
「わかった!」
〈地国西〉
↓
〈ヤム〉
↓
〈ヤム中央広場〉
「ここは他の町よりも随分と静かだね」
「ここは農業が主体の町ですから、あまり若者がいないのでしょうね」
「ふーん、それよりご飯屋探さなきゃ!」
「そうですね… あの看板そうじゃないですか?」
ナルディが指さす先にはお肉のマークが書いてある建物があった
「本当だ! 行こう!」
〈ヤム中央広場〉
↓
〈食堂ガーラ〉
「らっしゃい! 2人か?」
――――――――――――――――――――
〈名前〉ガーラ・ギラ
〈種族〉人族
〈属性〉地
〈レベル〉18
〈ミンラ〉食材の良し悪しが分かる
〈職業〉料理人
〈能力値〉――
――――――――――――――――――――
「はい!」
「おい! 久々の客だ! 本気出せ!」
「「はい!」」
ガーラさんが号令をかけると
厨房からはいろんな音が聞こえてきた
「それで注文はどうするんだ?」
「私は… このムニ肉のハンバーガーで! ナルディは?」
「私はこのサラダで…」
「え? 流石に少なくない?」
「い、いえ! 私はこれで大丈夫です!」
そういえば… 朝ご飯もだいぶ少ないものを選んでいた
その時はお腹が減っていないのかと思っていたが
まさか… 遠慮されている?
「うーん… ちょっとガーラさん良いですか?」
ガーラさんに小さく耳打ちした
「おぅどうした?」
「あの子に一番いいお肉出してあげてくださいお願いします」
そうお願いして30ケル手渡した
【50ケル→20ケル】
「おぅ任されたぜ!」
「声が大きいです!」
その後席に戻ってナルディとお喋りしていると料理が運ばれてきた
「お待ちどうさん! ムニ肉のハンバーガーとムニ肉のステーキとサラダだ!」
「ありがとうガーラさん!」
「え? え?」
自分の前にステーキを置かれて困惑するナルディ
「その… ガーラ様…? これ私頼んでませんよ…?」
「うん、私がナルディの代わりに頼んだ!」
「え… え? う… 受け取れませんよ!?」
「だーめ! 食べなさい! ほら! あーん」
フォークに肉を刺しナルディに食べさせる
「あ… あーん」
戸惑いながら大人しく口を開けるナルディ
パクッ
「美味しい…!」
「がっはっは! そいつぁ良かった!」
「うん! 本当にありがとうガーラさん!」
「金貰ってんだから当たり前だぜ!」
ナルディも一口食べたら食欲に負けたのか一瞬でステーキを平らげてしまった
「「ごちそうさまでした!」」
「おぅ! また来てくれよ!」
「うん!」
〈食堂ガーラ〉
↓
〈ヤム〉
↓
〈地国西〉
「そういえば、ヤムからルッカまでの街道はないんだね」
「そうですね、なので途中にあるアルミドを経由することになります」
「まさかもう帰郷することになるとは… 意外と地国って狭いんだね」
「そうは言ってもですね… ここからアルミドまで歩いて3日はかかりますよ?」
「ぅえ!? そんなに!?」
「はい、アルミドールッカ間、クミルーヤム間は1日もかかりませんが
アルミドーヤム間、ルッカークミル間は3日から5日ほどかかります」
「そっか、行きはナルディに乗っていったから早かったってことか」
「そうですね、歩きますか? 乗っていきますか?」
「うーん… あそこには常闇の森があったから乗るしかなかったけど
今回は歩こうかな…?」
「分かりました…」
露骨にテンションが下がるナルディ
「だってさ! ナルディに乗せてもらうとお喋りできないんだもん…」
「それはサタナ様を安全に運ぶために…!」
「だから歩く! いいでしょ?」
「分かりました歩きましょう!」
ナルディが満面の笑みを浮かべたのを確認し、アルミドへと歩を進めた
地図→https://www.pixiv.net/artworks/108690844
次回は6月4日です