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改竄

「全て思い出したところであなたには絶望していただきましょう、母様…

 いいえ、我が宿敵… 『天神サカルリパライニカタ・ルサソレーナ』サマ?」


扉越しにそう聞こえた


「ガラべドロ! あなたは…!」


既にさってしまったのか次に声を上げたときには

扉の向こうから声は聞こえなかった


「母様… いったい何が起きてるの…?」


不安そうにラキがそう声を上げた


「落ち着いて聞いて…

 あの宝玉の中の記憶は私がこの世界を作るよりももっと前の記憶だったの」

「リウクスを作る前…?」

「そう、その時代には私が統べる天とガラべドロが統べる闇しかなかった

 生物はいつの時代だって変わらない、ガラべドロは天の力を

 我が物にしようと私に襲い掛かってきたの」

「兄様がそんな…!?」

「うん、でも私は当時とても弱かった…

 私の天魔法は本当は他の人の力を増幅させる魔法でね」

 私は一緒に戦ってくれる仲間を作る必要があったの」

「それって…!」

「そう5神のこと、そうして私たちは何とか勝利を収めたんだけど

 その時にガラべドロは完全に消滅してなかったんだろうね…

 私たちの記憶全てに干渉して突然5神が私たちに襲ってくるようにしたり

 私たちの家族としてのうのうと生きてたんだと思う」

「これが闇の力ってこと…?」

「確実にそうとは言えないけどおそらくね」

「じゃあこの後兄様は…」

「まずは見せしめと言わんばかりに私が弱めちゃった5神を…

 その次は私、そしてこのリウクス、そして天の力かな…」

「急いでここを出ないと!」

「そうしたいのは山々なんだけど… 無理かなぁ…」

「どうして?」

「最初にここに入った時やけに質素だなって言ったでしょ?」

「うん、でもそれはただここが洞窟をくり抜いたからって話じゃ…?」

「ううん、これにもちゃんと理由はあったの」

「え?」

「闇の力は不均衡に弱いの、だからこの部屋には邪魔なものを

 極力置かなかったんだと思う」

「つまりものすごく強い闇の力で包まれてるってこと?」

「そう、なんか足裏がピリピリすると思ったらそういうことだったんだね…」

「じゃあ私が実体化したら…」

「間違いなく消し飛ぶだろうね」

「ひぇっ…」

「でもこのまま何もできないってのも癪だしなぁ…」


何もできずに焦りと不安で押しつぶされそうになっていると


「母様、私から提案があるんだけど…」


消え入りそうな声でラキが声を上げた


「なに?」

「私が実体化して扉に衝突したら天と闇の力の反発で壊れたり…」

「貴方が何を言ってるか分かってるの!?

 もしそれが成功しても…」

「分かってる、多分私は死んじゃう…

 でもそれでこの世界が救われるなら…!」

「ダメ! そんなこと許さない!」


大声を上げてラキを死ぬ気で阻止しようとする

しかし頭ではわかっていたそれが最善択であるということは


「でもだめだよ、ここで母様がこの世界を救わないで誰が救うの?」

「それは…」

「ね? だから、お願い… リウクスを守って…!」


その瞬間ラキニヴェラの魂が自分の元から離れるのを感じ

目の前には真っ白な少女が姿を現した


「痛っ…!」

「ラキ…! 待って…!」

「バイバイ、母様… みんなを、リウクスを守って!」


少女が思いっきり扉に衝突した途端耳を劈く轟音と閃光が走った

しばらくして目を開けると目の前には木っ端みじんになった扉と

少量の天のマナが遺されていた


「ラキ… ラキ…!」


闇の力が薄くなった部屋で膝から崩れ落ちる

直ぐに出発しないといけないというのに足腰に力が入らない


「いや…」


思い直す、未来の惨劇を

考え直す、ラキの思いを

決め直す、私はどうするべきかを


「私は… 私は!」


その場に立ち上がって顔を拭う


「私はこの戦いに終止符を打つ! 待ってなさい! ガラべドロ!」


そう意気込んだはいいものの移動手段のなさに頭を抱える


「うぅ… 一旦ルッカに行ってみよう、あそこなら何とかなったりするかも…」


そうしてルッカまで走って向かった


〈天の間〉

 ↓

〈ルッカ〉


「とはいっても…」

「サタナさん… ですよね…?」


声がした方を振り向くとユラさんが立っていた


「やっぱりそうですよね! いつの間にお帰りになられてたんですね!」

「ユラさん… 助けてください!」

「ど… どうかされたのですか?」

「私、天国に用があるんです… でも、移動手段がなくて…」


そこまで言ったところで事情を知らないユラさんが混乱することを悟った


「やっぱり何でもな…」

「何か訳ありなんですね…? 任せてください!

 炎国まですぐにお連れします!」

「ユラさん!?」


ユラさんは持っていた買い物かごをほっぽり私の手を取って

街の外まで走り出した


〈ルッカ〉

 ↓

〈地国北〉


「ここって…」

「はい、リウクスの大ガケです」

「まさか…!?」

「ご名答、今からここを登っていきます!」

「そんな無茶な…」

「確かにマナも薄い今なら命の危険を伴うかもしれません…」

「それならなんで!」

「そうしなきゃいけない気がするからです」


ユラさんの目を過去に見たことがあった気がする


「そっか…」


ユラさん含め龍族は皆守護龍の子孫、本能か何かがそう思わせているのだろう

そんなユラさんの目は私を助けてくれた守護龍そっくりだった


「お願いします!」

「任されました!」


ユラさんは早々に龍族の姿になると私を背に乗せて

垂直に聳え立つ何万もある大ガケを登っていった


〈地国北〉

 ↓

〈炎国南〉


「本当についちゃった… 大丈夫ですか…?」

「私のことは気にしないでください、サタナさんは早く!

 貴方は成し遂げなくてはいけないことがあるんでしょう?」


事情も何も知らないはずなのにユラさんはそう強く言った


「ありがとう!」


それだけ言って天国向けて走り出した


〈炎国南〉

 ↓

〈天神の墓〉


息も絶え絶えになりながらサタナが天国にたどり着いた時

天国は地獄も生温いと思えそうな酷い有様となっていた

辺りに転がっている仲間、5神、影獣は完全にマナを奪われ尽くしており

体を動かすことはおろか言葉を発することもできない状態だった


「みんな!」

「おや、随分と速い到着でしたね… 天神サマ」

「ガラべドロ…!」

「サタ… ナ… 様…! 逃げ…」


サタナの近くで倒れていたナルディがそう小さく言った


「ナルディ!」

「まだ生きていたのですね… 本当にしぶとい…」


そう苛立ちながら言ったガラべドロはナルディに近づいていくと

彼女を蹴り上げ宙に浮いた体目掛けて魔法を放った


「オルグログラム!」


『ガラべドロの神闇魔法(オログログラム)

 弱点!ナルディに734ダメージ!

 ナルディは倒れた!』


「ガラべドロ… ガラべドロォォォ!!!」


サタナは怒りに身を任せガラべドロに掴みかかる

しかし力の差は歴然だった、互いに復活したばかりとは言え

未だ戦闘面の力を奪われたままの天神が

5神を含むリウクス中のマナを取り込んだガラべドロに適うはずはなかった


「くっ…!」

「このような力では今回の戦いは私の勝利で良さそうですね…」

「させない…!」

「頼りとなるあなたの仲間や5神はすでに虫の息…

 あなた1人で何ができるというのですか?」

「私は1人じゃない! 受け取って…! ミルイルエラム!」


サタナが放った槍は仲間や5神たちの体を貫いていく


「遂に錯乱しましたか、落ちたものです… ね…」


呆れるガラべドロの思惑とは正反対に倒れていたはずのサタナの仲間たちは

徐々に立ち上がり始めていた


「これがサタナ様の本来の力ですか…!」

「これじゃ! これじゃよ! 儂が常闇の森で感じた力そのものじゃ!」

「確かに… 今ならだれにも負ける気がしない…」

「次は… 負けません!」

「さ、させるかぁぁぁ!!!」


今までの落ち着いた様子を完全に失ったガラべドロは

力が戻りたてのサタナの仲間たち目掛けて襲い掛かった


「危ない!」


サタナが手を伸ばそうとした途端、何者かがガラべドロを突き飛ばしていた


「みなさん、大丈夫なん!?」

「何とか間に合ったみたいだな…」

「そうみたいだね、よかった」

「サタナが現れて今度こそ終わったかと思ったよ…」

「まぁガラべドロの様子からなんか変だとは思ってたけどねー」


襲い掛かったガラべドロの隙だらけの横腹にランとフティの拳が炸裂した


「あなたたち…!」

「それで状況はどういうことなんだ?」

「さっき私の横腹を割いといてよくそんな冷静にいられるね!」

「それは悪かった、それで?」

「あぁ! もう! 説明は後! 共通の敵ガラべドロ! おっけー!?」

「OKだ」


そう言うや否やランは容赦なくガラべドロに攻撃を始めた


『ランの神天炎牙技ミルイガラームドファング

 ガラべドロに469ダメージ!』


「なるほど、天神の力を得ることで天と炎属性が半分半分に…」

「ということはこういうことじゃな!」


5神の時間稼ぎによって全快したサリは上空に巨大な火の玉を作り始める

その火球は過去に遺跡で見たときのように真っ白に燃えていた


「行くのじゃ! 名前分からん凄いやつを喰らうのじゃ!」


『サリの神天炎魔法(ミルイガラームド)

 ガラべドロに377ダメージ!』


火球はガラべドロを天の神殿ごと破壊しにかかった


「本当に… 本当に何もうまくいかなくて腹が立ちますね…」


かなりの痛手を負ったと思われたはずのガラべドロは落ち着きを取り戻し

壊れた神殿の中から姿を現した


「ここからようやく始まりだよ! 神戦…

 ううん、真戦を始めよう! ガラべドロ!」


挿絵(By みてみん)


地図→https://www.pixiv.net/artworks/113322741

次回は11月12日です

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