魔法
「全… 魔法? 剣技?」
「初級以上の魔法・剣技はミンラを得た生物しか使えないのはご存じですよね?」
「そうだね… ってあれ? さっきナルディ魔法使ってなかった!?」
「はい! それが全魔法・剣技です!
初級魔法・剣技をさらに単純化したものなので
ミンラを持たない生物でも練習すれば使えるようになる代物です!
あるだけ便利なので練習してしまいましょう!」
そんな便利なものがあるなら先に教えてほしかったという言葉をぐっと堪え
「うん! やる!」
「全魔法は全ての属性を使える以上
自分の属性に合ったものを習うことを推奨されます
ですが、サタナ様の属性は天ですのでどの属性から始めてもよさそうですね」
「え? 天属性の魔法とか剣技はないの?」
「ないですね、もともと天属性の生物が少ないので
全魔法・剣技が作られていないのです」
「ふーん? じゃあナルディが得意な奴から教えて!」
「そうですね、でもその前に魔法を使う前に少しばかり授業と行きましょうか」
どこから持ってきたのか木の板を黒板の代わりにして
図を書いて説明の準備を始めた
「はーい! ナルディ先生!」
「先生じゃないですよ!? こほん…
では始めますね、まず初めに属性は基本的には5つに分かれていて
それぞれ炎、水、風、地、鉄に分かれています
そして、得る属性は遺伝が9割、生まれた土地が1割の確率で
由来してくることが分かっています」
「そうだね、ナルディが地なのは親が地属性だったから?」
「いえ、私の両親は炎と風です
しかし、生まれたところがここ地国なのでそちらに引っ張られたのでしょうね」
「そういえば、私の属性の天の話はまだ出てきてないけど…?」
「そうですね… 先ほど説明した通り属性は『基本的には』5つなんです
しかし、天国の住人を始めとする天属性を持つ生物が『いた』のです」
「いた?」
「はい、ご存じの通り天国が地に落ち、天国の生物がほぼ全滅して以来
天属性は断たれたも同然となりました」
「ほぇぇぇ本当に珍しいんだね…! そういえば属性同士に強弱関係はあるの?」
「はい、ありますよ
『炎は鉄に強い、鉄は風に強い、風は水に強い、水は地に強い、地は炎に強い』
となっていますね」
「ふむふむ、だから炎スライムにナルディ強く出れたんだね、そういえば天は?」
「『天は全ての属性に強く弱い』ですね」
「え… え?」
「ではそろそろ本題に戻りましょう!」
なんだか最後に恐ろしいことを聞いたような気がするが
一旦置いておくことにするとしよう
「どの属性から始めるかですが…
先ほども言った通りサタナ様の属性は天なので
どれから始めてもあまり大差ないと思いますよ」
「じゃあ、ナルディの得意な魔法からで!」
「わかりました、なら地の全魔法のケドイから始めていきましょう!」
「はーい!」
「ケドイはこのように…」
説明しながらナルディは掌を地面につけて
「ケドイ!」
ゴゴゴゴゴ!!!
『ナルディの全地魔法!
弱点!炎スライムに44ダメージ!
炎スライムは倒れた!』
「こんな感じです!」
「すごい! 揺れてた!」
「はい、このように地面を揺らして攻撃する魔法です
つまり、マナを手に蓄えてから地面に押し出して使う魔法です」
「マ… マナ?」
「お教えするのを忘れていましたね…
えっと… マナというのはこのリウクスの地に残る守護神らの力の源です
基本的にこのマナを使って生物は魔法や剣技を使うので
マナが枯渇してしまうと魔法や剣技を使うことができません」
「でも私マナなんて見たことないよ?」
「当たり前ですよ? マナは見えません正直感覚です」
「えぇ… 大変そう…!」
「その通り一番最初は大変です!
人によっては何年もかかってしまうこともあります」
「そうならないといいなぁ…」
「まぁ習うより慣れろってやつです! とりあえずケドイを使ってみましょう!」
「うん…!」
マナを感じ… 手元に集中させて地面に押し出す…!
「ケドイ!!!」
しかし渾身の叫びも虚しく
目の前の炎スライムはピンピンしていた
「最初ですので、練習あるのみですよ! マナは結構たまっていましたよ!」
「ほんと…? よーし! まだまだ!」
ふーっと深呼吸をしてもう一度…
「ケドイ!」
『サタナの全地魔法!
弱点!炎スライムに19ダメージ!
炎スライムは倒れた!』
『サタナのレベルが上がった!』
「やった! できたよナルディ!」
「す… すごいです! すごすぎですよサタナ様!」
「やった! まさかできるなんて!」
「サタナ様! レベルが上がっているようですよ!」
――――――――――――――――――――
〈名前〉サタナ・クライ
〈種族〉人族
〈属性〉天
〈レベル〉2
〈ミンラ〉ステータスを閲覧できる
〈職業〉――
〈能力値〉体10・力8+8・守5+8・速9
知30・運15
――――――――――――――――――――
「ほんとだ! 能力値も上がってる!」
「そうですね! 体力が上がったので戦闘が楽になりますね!」
「うん! それじゃあ、ケドイが出来たところで他も教えて!」
「はい! では、次は…」
・・・・・・
「すっかり真夜中だね…」
「そうですね…
それより一日で全ての全魔法を使えるようになってしまうなんて
本当にすごいですねサタナ様!」
「ううん、ナルディの教え方が上手なんだよ!」
「いえ、そんなことは…
そんなことよりサタナ様! 夜は魔物達の時間です!
早いところクミルの町に向かいましょう!」
「そうだね! もうクタクタだよ…」
〈地国北〉
↓
〈クミル〉
↓
〈クミル中央広場〉
「外から見ててもなんとなくわかってたけど
ものすごくのどかな町だね」
「そ… そうですね
ただ… さ… 寒いです…」
「寒い!? だ、大丈夫!?
ほらこのコート貸してあげるから着て!」
「え、いえいえいえ! 流石に恐れ多いです!」
「ダメ! 風邪ひいたら困るし!ね?」
そう強めに諭すと素直に借りてくれた
「はい… 大人しくお借りします… ありがとうございます」
「よろしい! お、ここ宿屋じゃない? こんばんはー!」
「待ってくださーい!」
〈クミル中央広場〉
↓
〈宿屋グドー〉
「一部屋お借りしてもいいですか?」
「はいよ! 1泊10ケルだ!」
【70ケル→60ケル】
「ふぅ… ようやく一息付けるね…」
「そうですね、本当にお疲れ様ですサタナ様!」
「ナルディもね! そういえば、回復魔法とかはないの?」
「ありますよ? 回復の全魔法はイミルですね
でも突然どうしたのですか?」
「いやー、魔法の練習に気を取られすぎて体力が1のままなの忘れてて…」
「そういうのは早く言ってください!」
『ナルディのライミル!
サタナの体力が24回復!』
「あ! 焦りすぎてライミルの方になってしまいました…」
「ライミル? イミルが回復の全魔法なんだよね?」
「はい、そうですよ?」
「ならなんで、ナルディがライミルを使えるの!?」
「あぁ、これはですね
回復魔法は守護神らが生まれたころから存在した魔法とは異なるもので
人族が生み出したものなのです
なのでミンラ関係なく初級以上も習得できますよ!」
「なんで、人族は回復魔法を作ったの?」
「うーん、はっきりとしたことは言えませんが
おそらく、天国が落ちて以来の強くなった
魔物から生き延びるためでしょうかね」
「なるほど… じゃあこの魔法がないころは
普通に手当てとかしなきゃいけなかったんだね」
「そうですね」
「私にも教えて!」
「そう言うと思いましたので、こちらに本を用意しました!」
「おー… って分厚!?」
そういうと辞書よりも分厚そうな本を渡してきた
ページ数は…1500…!?
「普通の魔法とはまた別ものですから
仕組みとかも全く異なるので大変です
しかし、イミルのページは最初の100ページくらいなので
頑張ってください!」
「ふむふむ… 正直理解できてないけど… イミル!」
しかし何も反応はなかった
「知ってた… 知ってたよ…!」
「あはは…」
すでに夜が更けているのもあり、諦めて床に就いた
地図→https://www.pixiv.net/artworks/108508961
次回は6月3日(土)です