復調
「この後はどうしましょうか…」
「まずは炎国に向かうんじゃろ?」
「それはもちろんそうなのですが
流石にこのまま炎国に行くのは無謀かと…」
「サタナの言う通りだな、炎国の魔物は本当に強力だ
レベル80程のやつがゴロゴロといる」
「カツキの言った通りなんじゃな…」
「ちなみに皆さんのレベルはどれくらいでしたっけ…
「私は51です」
「儂は69じゃな」
「なっ…! お前ら一体いつそんなにレベルを…!?」
「そうじゃった、最後に会ったのは天スライム狩りの前じゃったな」
「だとしたってこんなレベルになるわけ…」
「なぜか大量発生していたのです、そのおかげでここまで…」
「なるほどな… まぁ強力な分は文句の言いようもないが…」
「そういえばカルロッテさんは何レベルなのですか?」
「私か? 62だ」
「僕が44なので… 226、平均56レベルですね」
「一応鉄炎関所は通れるんじゃな」
「こんな状況でそんなものが動いていると思うか?」
カルロッテさんの言う通り辺りは荒廃したままで
壁は全て崩壊している状況だった
「目安として言っただけじゃ!」
「まぁ私はこのレベルで行ったら第三の砦跡すら占拠できずに
逃げかえることになると思うがな」
「なっ… お主砦跡を占拠する気なのか…!?」
「当り前だ、砦跡が魔物の住処になっている今
占拠せずに向かえば袋叩きにあうぞ」
「カルロッテさんの言う通りです…
しかし第三の砦跡より前にまずは炎国城を占拠するべきかと」
「そうですね…」
炎国城というのはかつて炎神が作った城であり
過去には人族最後の砦と呼ばれていた場所でもある
「あれじゃな…」
「あれくらいなら簡単に占拠できたりしませんかね…」
「難しいだろうな… 魔物らが使い方を理解していないとはいえ
炎国城は城塞都市だ、それもネラルのものが可愛く見えるほどのな」
「ですよね…」
「とは言っても炎国城をこのまま放るわけにもいかんしの…」
「これ以上何かできることは…」
「武器の強化もしくは強敵討伐じゃな」
「強敵…」
そう小さくつぶやいてメギル様は何やら考え込んでいた
「どうかしましたか?」
「あ… すいません! ちょっと考え事をしていまして…」
「考え事とはなんだ?」
「さっきサリさんが言った強敵という言葉が何か引っかかって…」
「強敵?」
「そうなんです… あっ!」
「何か思い出したのかの!?」
「そうです! 影鳥をはじめとする闇地の魔物
影獣たちに手助けをしてもらう…
というのはどうでしょう?」
「なるほどの、あれほど強い魔物なら仲間になった時かなり心強いの!」
「そうですね! サリ様、お願いできますか?」
「正直難しいのじゃ」
予想とは裏腹の答えが返ってきてかなり驚いてしまった
「え、どうしてですか?」
「儂のルフドイで運べるのはあくまで行先に行ったことがある者だけじゃ」
「そういえばメギルさんは行ったことないんでしたね」
「そうですね、そもそも風国から出たことがほぼなかったです」
「それじゃあナルディに乗るのは…」
「無理です…」
「どうしてだ?」
「サタナ様がいない今、乗龍は違反行為になってしまいます!」
「無視すればいいんじゃないか」
「お主は黙っているのじゃ…」
「そういえばそうでしたね… それではどうしましょう…」
「俺に任せろ」
声がした方を向くとそこにはカツキ様とリアンが立っていた
「リアン! カツキ様!」
「何やら乗龍なんて言葉が聞こえたから来てみれば…
サタナはどこにいったんだ?」
「話すと長くなるんですが…」
「端的に言えばサタナさんがいなくなりましたね」
「サタナが!?」
「どうして…?」
「意外にもあなたが心配するんですね?」
「意外とは余計だよ! でも… 本当にどうして?」
「本当に説明が難しいのじゃ、一旦今は何も聞かずに手助けしてくれんかの?」
流石にカツキ様は私たちの様子を不審に思ったのか少しだけ悩んでいたが
すぐに顔を上げてこう言った
「分かった、だがサタナに会ったら改めて聞くからな」
「ありがとうございます!」
「それで、頼みってなんだ?」
「儂らをスムスドン国立図書館まで送って欲しいのじゃ」
「なんだそんなことか、リアン行くぞ」
「そんな安請け合いしちゃっていいわけ?」
「いいんだ、友達を助けることは龍族にとって普通じゃないのか?」
「うるさい! そういうことじゃなくて…」
「ほらとっとと向かうぞ」
「わかったよ…」
そう言いながらリアンは渋々と龍族の姿に変身した
「ほら、乗った乗った」
「そういえば私が龍族の背に乗るのは初めてですね…」
「そりゃそうじゃろうな」
「私は正真正銘初めてだぞ、正直楽しみだ」
「カルロッテさんは乗ったことないんですね?」
「それが普通だ」
カツキと私たち4人を乗せてリアンは高速で水国に向かって進みだした
「速いですね…!」
「前にも言った気がするがこの速が無かったら
わざわざこんなやつに乗るわけない…」
「ちょっと! 聞こえてるからね!」
「ははは、悪い悪い」
本当に数秒の間でいつの間にか風国の半ばを通り過ぎていた
ふと後ろが静かなので振り返ってみると
「皆様大丈夫ですか!?」
3人はそろって目を回していた
メギルさんに至っては倒れる寸前の様子であった
「酔ったのじゃ…」
「気持ち悪いです…」
「乗龍とはこんなに辛いものだったのか…」
「大丈夫か? もうそろそろ着くぞ」
カツキ様のその言葉と共にリアンの速度が少しずつ緩んでいった
〈鉄国東〉
↓
〈スムスドン国立図書館〉
「帰ったのじゃ!」
「サリ様がこちらから帰ってくるだなんて… 明日は雪ですね」
―――――――――――――――――――――
〈名前〉コワグ・キョウラ
〈種族〉悪魔族
〈属性〉水
〈レベル〉17
〈ミンラ〉小さな空間を操る
〈職業〉図書館司書代理
〈能力値〉――
―――――――――――――――――――――
「主人が正面玄関から帰っただけで酷い物言いじゃな!」
「失礼しました、それで何用でお帰りになられたのですか?」
「闇地の魔物の回収に来たんじゃよ、元気にしておるかの?」
「もちろんです、いつも通り中庭にいます」
「そういえば、影鳥の様子はどうなんじゃ?
もし暴走なんてしていたら…」
「そんな心配をしなくとも特段何も起こっていませんよ?」
「ふむ… ならいいんじゃが…」
「私たちに倒されたから落ち着いたんですかね…?」
「分かりませんがとにかく行ってみましょう」
「じゃな」
サリさんを先頭に迷路のようになっている図書館を進んでいく
「何時着くんだ…?」
そう声を漏らしたのは意外にもカルロッテさんだった
「お主が音を上げるだなんて珍しいの?」
「いや、体力的には問題ないんだが
如何せん狭いところはどうも苦手でな…」
「でも洞窟の中では苦手なようには見えなかったのですが…?」
「狭いところが苦手というよりかは
いざという時に剣を抜いて戦う場所がないのが不安なんじゃろ?」
「なるほど…」
「そうだったのか…」
「自分でわかっていなかったのかの… とか言ってたら着いたのじゃ」
眼前にはここが室内であることを疑わせるような光景が広がっていた
木々が生い茂り池や滝なんかもあってまるでそこだけ森の中のようだった
「こんなところがあったんですね…」
「知らんのも当然じゃ、ここは図書館の最奥じゃからな
図書館を訪れたことがあってもここを訪れたことがない者がほとんどじゃ」
「私も初めてだ…」
「皆元気そうじゃの!」
サリ様が影獣たちに近づいていくとそろってサリ様に向かっていった
「サリ様懐かれていますね」
「ここに来るのは基本儂だけじゃったからの
そうじゃナルディ、前にこやつらの声を聴いたときはうまく聞き取れない
と言っておったが今なら聞き取れたりしないかの?」
「どうでしょう? 一応試してみますね…
『リコラ、私の声が聞こえますか?』」
「天… 様… どこ…」
「前より聞こえます! 天、様、どこ…
おそらく『天神様どこ』かと」
「やはりこやつらはサタナが天神だと気づいておったから
近づいたんじゃな」
「『天神様はいません、だから私たちと一緒に探しに行きましょう』」
「『つい… 行く…』」
「おそらく『ついて行く』と言ってくれました!」
「良かったのじゃ、この調子でカルエと…
そういえば影鳥に名前を付けていなかったの
今はサタナもおらんしナルディが付けちゃうのじゃ」
「いえ、サタナ様から聞いております
影鳥の名前はミテアだそうです」
「前々から思っていたがサタナのセンスは独特じゃな」
「あはは… ここだけの話私もそう思います…」
リコラと同じようにカルエやミテアにも話しかけてみると
前に出会った時より格段に話せるようになっており
とんとん拍子で仲間に加えることに成功した
「よくやったのじゃナルディ」
「これで大幅な戦力強化になりますね!」
「そういえば影獣のステータスを見たいのですが…
誰か閲覧本を持っていたりは…」
「サタナ様がいるのでただの荷物だと思って捨ててしまいました…」
「横に同じくじゃ…」
「カルロッテさんなら…!」
「私はそんなこと気にしないで戦うからな
相手のレベルも戦っていればなんとなく分かるようになるものだ」
「カツキ様なら…!」
「仕事があるからと言って儂らを下ろした後
そのまま飛んで行ったのはお主も見たじゃろ」
「ですよね…」
「まぁそんなもの見なくてもこいつらの実力は十分にわかるから
問題ないだろう?」
「まぁそれもそうじゃな」
「それじゃあ早速鉄国に戻りますか」
「じゃな、ルフドイ!」
地図→https://www.pixiv.net/artworks/112564191
次回は10月21日です