離別
「なんで… なんで天神の名前が出てくるんじゃ!」
「なんでって… そいつがそうだからだよ」
サリさんの当然の疑問に鉄神は当然のようにそう答えた
その回答にサリさんを始めとする私たちは凍り付く
「サタナ様が… 天神…?」
「サタナ! お主… そうだったのか…!?」
「そんなはず! そんなはず…」
なぜかはっきりとそんなことないと言い切ることが出来なかった
「なんで…! 私は… 私は…!」
「そうだサタナ! 君は… 貴様は邪悪な天神!
サカルリパライニカタ・ルサソレーナだ!」
考えれば考えるほど余計に自分の中で何かが渦巻いていく
それは自分の奥底にたまった泥のような何かが取り除かれていくような
そんな言葉にしがたい感覚だった
「あと一押しってところかな…」
「えっ…?」
にやりと口角を上げてそう言うと椅子から立ち上がってこちらに歩み寄る
「サタナがいい加減に本気になってくれないと
そこの子たちの身の安全を保障できなくなっちゃうよ… っと!」
キャルは大剣を2本取り出して私の後ろにいた4人に襲い掛かる
『キャルの上鉄剣技!
抵抗!サリ、ナルディ、メギル、カルロッテに平均148ダメージ!』
「あはは! 手を抜きすぎちゃったかな?」
「みんな…!」
鉄神はそう言ったが神の一撃は神の一撃
4人はそれを喰らって既に立てずに地に伏せることしかできずにいた
「次は… 仕留めるからね…?」
「や… やめ…!」
そう言う鉄神の目は本気でもう一度大剣を構えて
瀕死状態の4人に襲い掛かった
「ほらほら、君の大事な仲間たちはここで文字通りおしまいだ!」
「…ない」
「なんだって…?」
「やらせない! 絶対に!」
・・・・・・
サタナ様は鉄神と私たちの間に入って大きく手を広げた
「サタナ様!」
「サタナ、やめろ!」
鉄神が持つ大剣の刃がサタナ様の肌に触れようとしたその瞬間
サタナ様は突然光り輝き出し、その光は鉄神の攻撃を弾いた
「やっと! やっとだ! 僕はこれを待ってたんだよ!」
「「「「サタナ(さん)(様)!」」」」
しばらくして光が収まり光の中から現れたサタナ様の姿は
今までのサタナ様とは似ても似つかなかった
「サタナ様…?」
「お主… サタナなのか…?」
私たちの目の前に現れたサタナ様の紫色の短かった髪は
白くなった上に背丈ほどまで伸びており
服は白色の布を纏っただけのものになっていた
しかしそんなことがどうでもよいと思えるほどの絶大な変化があった
「なんじゃ… このマナ量は!?」
サタナ様が纏っているマナ量が格段に増えていたのだ
それも鉄神が纏っているものより数倍規模のものだった
「完全復活だね! 本当はサタナの状態で殺してもよかったんだけど
やっぱりこっちのほうが楽しいもんね!」
「1つだけ聞いてもいい?」
「なんだい? 今は気分がいいから特別に答えてあげる!」
「なんで私たちをこんな目に?」
「なんでって… もちろん天神の殺害が目的さ
君が徐々に力を取り戻せば取り戻すほどなぜかあの邪龍は力を強める…
それなら倒しづらい邪龍より君を狙う方が早いとおもったわけさ」
「やはり天神はあの邪龍と同じような存在なのか…?」
「サタナ様がそんなわけないです!」
「しかし鉄神の話も分かりますね…」
「はぁ… あなた、後悔することになるよ」
「ふーん? 1回負けた雑魚神風情が調子乗らない方がいいと思うよ…?」
鉄神は私たちに襲い掛かってきた時よりも早く力強くサタナ様に襲い掛かる
しかしそれを華麗にかわしてサタナ様はこちらに近づいてきた
「こんなことに巻き込んじゃってごめん
あそこの扉から先の階段を昇ったら地上だから早いところ逃げて」
「本当にサタナなのか…?」
「そうだよカルロッテさん、確かに髪色も瞳の色も真っ白になって
服装すらも変わっちゃったけど確かにあなた達の知ってるサタナだよ」
「サタナさん… あなたが天神であることにはいったん目を瞑ります
今は鉄神の襲撃を迎え撃ちましょう、僕も加勢します!」
「儂もじゃ! 足を引っ張らんようにはするのじゃ」
「ここまで来たら私も手伝おう!」
「サタナ様の力になります!」
「ありがとう… でも、邪魔… ガメグドイド!」
私たちの周りに突然球体のバリアが現れたかと思えば
強制的に奥の扉に押し込まれてしまった
「サタナ!?」
「サタナ様!?」
「どうしてじゃ!」
「サタナさん!」
そう口々に叫ぶがサタナ様は何も言わずに扉は無情にも閉まってしまった
「サタナ様… いったいどうして…」
「泣くなナルディ! あれは私たちに向けた優しさだ…」
「そうかもしれないですけど…」
「でもあれはないじゃろ… 儂らのことを邪魔だと言ったんじゃぞ
しかも上級魔法と上級魔法の複合魔法を使うとかいうおまけ付きでの!」
「でも… 確かにサタナさんの言う通り
神々の争いに僕たちは邪魔なだけな気がします…」
「それは私も同感だ」
「サタナ様… どうかご無事で…」
「はぁ… まぁ大丈夫じゃろ、天神は文献にもある通り
1人で5神を相手取った正真正銘のバケモンじゃ
相手が鉄神とは言え負けることはないじゃろ」
「そうですが…」
「で… 私たちはこれからどうするんだ?」
「どうするとは?」
「この扉は恐らく開かない、さっきの扉と同じように鍵がかかっている」
「本当じゃな、あそこに鍵穴があるのじゃ」
「でも… サタナ様を見捨てるだなんて…」
「まぁ儂らはもう戻ることは出来ないんじゃし…」
「進むしかないな」
〈??の広間〉
↓
〈鉄国東〉
「ここは…?」
「第一の壁辺りじゃな」
「こんなところに続いていたのだな…」
「もしかしてこれは… やっぱり! 皆さん書置きです!」
メギル様は何かを見つけたらしく私たちの元に戻って見せた
―――――――――――――――――――――
みんなへ
私はこれ以上みんなに迷惑はかけたくない
だからここから先は私一人で行くね
勝手なことしてごめん
サタナ
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「どうして… サタナ様…」
「迷惑ってなんじゃ…!」
「そのままの意味だろう
鉄神のあの言い方だと5神は全精力を上げてサタナを殺しに来る
サタナはそれに私たちを巻き込みたくないんだろう」
「だとしたって…」
「一旦話を変えましょう、これから先ナルディさんはどうしますか?」
「私ですか…?」
「私とサリさんは未だ目標であるガラべドロ討伐のために天国に向かいます
しかし、ナルディさんはサタナさんの護衛があくまで目的であって
天国に行くのが目的ではない、そうですよね?」
「それは…」
「そうじゃな、お主次第じゃが無理強いになるようならここで別れてもよい
その場合はカルロッテに送ってもらうからの」
「おい… まぁ鉄国がこうなっては私も帰るしかないから問題はないが…」
「私は… サタナ様ともう一度話し合いたいです…!
そのために恐らくサタナ様が向かった先である天国に私も行きます!」
「うむ、そういうと思ったのじゃ」
「ですね、では行きましょう!」
「ここまで来たんだ、私も行くとするか」
「カルロッテ… 助かるのじゃ!」
「では… 改めて皆様よろしくお願いします!」
「うむ!」
「はい!」
「あぁ!」
地図→https://www.pixiv.net/artworks/112544140
次回は10月15日です