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絶望

「キャル様!?」


『君たちのことは本当気に入ってたよ

 だけど… 君たちには死んでもらわなくてはならない

 本当は1人で良いんだけどね、皆仲良くってことで! じゃーねー!』


こんな絶望的な言葉が聞こえたかと思えば

天井に空いてたはずの大量の穴は全て塞がれ洞窟内は真っ暗になった


「な… どういうこと…!?」

「分からん… なぜだ…」

「暗いです…」

「ちょっと待つんじゃ、と思ったが松明用の木がないのじゃ…」

「僕、ランタン持ってます!」

「おぉ! 準備がいい!」


メギルさんがランタンを灯すと何とかお互いの顔を視認することができた


「鉄神様… いったいどうしたんだろう…」

「分からんのか!? 儂らははめられたんじゃよ!」

「でも、私たちをはめる理由がよくわからないのです…

 『死んでもらわなくてはならない』とはどういう意味なのでしょう…」

「そのままだろう、この中の誰かが鉄神にとって目障りな存在だったんだろう」

「でもそんなことあるの…?」

「分からん、今はおとなしくここから脱出する術を探すべきだ」

「じゃな」

「み… みみ… 皆さん…!」

「どうしたのメギルさん…?」


メギルさんが指をさす方を見ると大きな壁があった


「何で壁を見ておびえてるの…?」

「待て、ここは一直線に伸びた道だったはずじゃ…」

「それは壁じゃない…! 影蛇だ!」


―――――――――――――――――――――

〈名前〉影蛇

〈種族〉蛇族

〈属性〉闇

〈レベル〉74

〈ミンラ〉闇属性の上級体技を扱う

〈職業〉――

〈能力値〉体524・力510・守628

     速402・知41・運7

―――――――――――――――――――――


「なんだか親近感の湧く運してますね…」

「そんなこと言ってる場合か! 来るのじゃ!」

「僕の後ろに隠れてください!」


『影蛇の上闇体技(オルグログラの拳)

 メギルに151ダメージ!』


「つ… 強い! 私かサリさんが喰らったら一撃じゃない…!?」

「そうじゃろうな、じゃがな図体のでかい相手は儂にとっては良い的じゃ!

 イデガラーム!」

「ここ洞窟なんだけど!」


『サリの上炎魔法(イデガラーム)

 影蛇に188ダメージ!』


「固い… 流石にこんな図体をしていたら当り前といえば当たり前じゃな」

「うん、私のミンラにも影蛇の守は628って…!」

「影亀以上じゃと…!?」

「次は私の出番! ミルイルエラ!」


『サタナの上天魔法(ミルイルエラ)

 弱点!影蛇に279ダメージ!』


ミルイルエラを喰らった影蛇は怯んだ様子を見せて後ずさりをした


「この様子は… サタナ様!」

「影虎や影亀と同じ反応… 今ならいけるかも!」


ナルディが影蛇に少しずつ近づいていくが

影蛇は攻撃する素振りを見せずにおとなしくナルディの接近を許していた


「ふむふむ…」

「なんて?」

「『天神様がお戻りになった』と連呼していますね…」

「サタナの攻撃をみて天神と重なったのかの…?」

「買いかぶりすぎだよ…

 ってもしかして他の闇地の魔物もそう思ったのかな?」

「もしかしたらそうかもしれんの

 やはり、ガラべドロとは相反する属性じゃからかの…?」

「うーん… 多分そうなのかな…」

「なぁサタナ、話を遮ってしまって悪いんだが

 こんなにこいつが物分かりいいなら

 頼めば地表まで連れて行ってくれるんじゃないか?」

「確かに! カルロッテさん頭いい!」

「頼んでみますね!」

「聞いてくれるといいんじゃが…」


ナルディが影蛇に話しかけ終えると影蛇はくるっと振り返って

洞窟の奥の方へと進み始めた


「『ついてきてください』だそうです」

「掘ってくれるのかと思ったらそうじゃないんだね?」


〈常闇の洞窟〉

 ↓

〈??の遺跡〉


大人しく影蛇についていくと大きな遺跡までついてこられた


「ここは…?」

「サタナ! 壁画じゃ!」


サリさんがランタンで照らした壁には

2匹の龍を連れた白色の光と

5匹の龍を連れた5つの光が争っている様子が描かれていた


「これって神戦の壁画!?」

「まぁそうじゃろうな、儂が気になるのはこれじゃ」


白い光の周りに描かれた2匹の龍を指さす


「この2匹の龍って…」

「天龍と虚龍じゃろうな… なにがどうなったら天神とガラべドロが

 手を組むことになるんじゃ…?」

「やはり邪悪なもの同士惹かれあったのですかね…?」

「もしかして本に書いてあった『龍の戦』っていうのは

守護神が守護龍と共に戦った神戦の別名なのかな?」

「それは違うと思います、あの本には『天神敗れた後』と書かれていました」

「そっか…」

「皆さん! これって歴史になっているんじゃないですか?」


遺跡内に置いてあったろうそくに火をつけてくれていた

メギルさんがそう大きな声を上げた


「どういうこと… あっ!」


ろうそくが全て灯ったことで遺跡内は明るくなり全貌が明らかになった

さっきまで見ていた壁画の左右に2つずつ壁画が現れた


「な… なんじゃあ?」


しかし現れた4つの壁画はあまりよく分からないものが多かった


「どうしたものでしょうか…」

「そうだ! 影蛇がここに連れてきてくれたんだし、何か知ってるんじゃ?」

「ふむ、よくよく考えたらそうじゃな」

「聞いてみますね… あれ、影蛇は一体どこに…?」

「え、そんなことある?」


影蛇は私たちが壁画に夢中になっている間にどこかに行ってしまっていた


「あの巨体の移動すら気づかないなんて…」

「来た道を戻るのは流石に危険じゃし… どうしたものかの…」

「一旦ここで待ってみよう? 影蛇抜きでここから出られる自信がないよ…」

「サタナさんの言う通りだと思います

それまでこの4枚の壁画について考えてみましょう」

「じゃな…」


4人で1番左にある壁画の真下に立って壁画を見上げる

壁には大きなドーナツ状の円が一つと白色の光が描かれていた


「これは… リウクス地方じゃな」

「これはさっきの絵から考えると天神だよね?」

「ですね、しかし他の守護神らは描かれていないですね」

「文字が書かれていないのが悔やまれますね…」

「じゃな… それよりも皆はこの絵が何を現していると思うんじゃ?」

「そうだね、最初の絵だしリウクス地方を攻める前の偵察とか?」

「サタナ様の言うこともわかるのですが…」

「画にするには内容が微妙ということですよね」

「はい」

「だよね…」

「次じゃ、次を見てみるのじゃ!」


右隣の壁画の真下に立って見上げる

壁には白色の光が一番上に描かれて真ん中に天龍と虚龍

一番下に5色の光と5匹の守護龍が描かれていた


「またよく分からん画じゃな…」

「まるで序列みたいだね」

「面白い考えですね、守護神の上にかの邪悪な神と龍が在るなんて…」

「発想の転換にしては面白いですがそんな話はないと思いますよ」

「まぁ頭ごなしに否定するのもよくないんじゃが…

 天神とガラべドロじゃしな…」

「なんだか本当によくわからないね… よし! 次!」

「それでここで神戦を迎えるんですよね」

「歴史順に並んでいるとしたらじゃがな」

「それでその右隣が…」


壁には天龍と虚龍が争っている様子が描かれていた


「これは…」

「『龍の戦』!?」

「とうとう『龍の戦』の正体が分かったの、だからなんだという話じゃが…」

「冷めてますね、文献に書かれている分からない歴史用語がわかる時ほど

 面白いことはないと思いますが」

「メギルさんは歴史も好きなの?」

「そうですね、自分の足で遺跡を訪れるくらいには」

「そうだったんだ」

「4枚目はなんとなくわかりましたね、次で最後です」


右隣の壁画の真下に立って見上げる

壁には虚龍と5つの光が描かれていた


「ガラべドロの反乱じゃん」

「ですね」

「最後は随分と分かりやすかったですね」

「違うのじゃ、ここからわかることは儂らに伝わっている歴史には

 明らかな欠落があるということじゃ」

「でもそれがどうしたっていうの…?」

「このリウクスには長命種が儂のような種族含め多く存在しておる

 そんな土地で歴史に欠落があるということは…」

「誰かが意図的に消したということですか…?」

「うむ…」

「なんだか恐ろしい話になってきたね…」

「そういえば… カルロッテ様はどちらに…?」

「確かに、ここに来てから全く喋ってないね?」

「カルロッテならあそこで素振りをしておるのじゃ」


サリさんが興味なさげに指さす先では

カルロッテさんが遺跡の隅で大剣を振るっていた


「本当だ、カルロッテさん! なんでそんなところにいるの?」

「私は頭を使うのは苦手だからな

 せめて邪魔はしないようにしていたんだ」

「邪魔だなんて…」

「そんなことより… 影蛇が帰ってこんのじゃ」

「なにかあったのかな…」

「見捨てられてしまいましたかね」


改めてこの遺跡を見回してみると遺跡内にあるのは

来た道である洞窟の他には洞窟と対角の位置に大きな扉があるだけだった


「あれを開けてみるしかないかな…」

「とても開くようには見えんのじゃが…」

「そんなのやってみないと分からないよ!」

「確かにそうかもしれませんが…

 あの扉の高さを見ればわかる通り洞窟の天井ほどまでありますよ…?」

「洞窟の高さはおそらく十数メートルといったところでしょうか?」

「流石にあの大きさだと私の力をもってしても開かないぞ?」

「カルロッテさんまで!? こうなったら意地でも開けてやる!」


興奮気味に扉の前に立ってみると改めてその大きさに気圧される


「やっぱり無理かな… お?」


扉の前をぶらぶらとしていると鍵穴らしき穴を見つけた

形を見ると普通の鍵穴のような形ではなくただの丸型であった


「みんな! ここに鍵穴っぽいのがあるよ!」

「なんじゃと?」

「本当ですか!?」

「うん!」


サリさんとメギルさんが走ってきてはその鍵穴を熱心に観察していた


「すごい気合いだね…」

「恐らくですが、やはりここが広いとはいえ洞窟に長時間いることに

 変わりはないので早く出たいんじゃないでしょうか?」

「そういうナルディは大丈夫なの?」

「龍族の住処は基本洞窟内ですからね、慣れています」

「そうなんだ、そんな話してたら私も結構辛くなってきたかも…」

「2人とも! なんとなくじゃが正体が分かったのじゃ!」

「本当!?」

「はい、おそらくこれが開くために必要なものは鍵ではないです」

「こんなところにあるのに鍵穴じゃないの!?」

「鍵穴ではあるのじゃ、ただ開くのに必要なのは魔法じゃ」

「魔法?」

「恐らく中の形はこんな感じなんじゃが…」


そう言ってサリさんはささっと床に白い石で線を描いていく


「見覚えあるじゃろ?」

「この形って… ミルイルエラ!?」

「儂ら魔術師らでは結構有名な施錠方法で

 魔法の形をそのまま鍵にしてしまうんじゃよ」

「へぇ… 確かにミルイルエラなら使える人は他にいないし

 鍵にはちょうどいいのかな…?」

「というわけです、早速やってみてください!」

「分かった! ミルイルエラ!」


手のひらから放った光の矢は鍵穴に一直線で飛んで行ったかと思えば

巨大な扉が少しずつ開き始めた


「やったのじゃ!」

「この先にはいったい何が…」


扉が完全に開き切り奥から現れたのは一本の通路だった


「通路…?」

「進んでみましょうか…?」

「そうするしかないじゃろ、行くのじゃ!」

「う… うん!」

「私が先頭を行こう」


真っ暗な通路をカルロッテさんの持つランタンの明かりを頼りに

少しずつ進んでいくと奥から眩しいほどの光が見えてきた


〈??の遺跡〉

 ↓

〈??の広間〉


「外かな…?」

「ここはかなり深いはずだ、外なわけがないだろう」

「そっか、残念…」

「また大きな部屋に出てきましたね… え…!?」

「あなたは…!」

「鉄神…!」


かなり広い部屋に出たかと思えば

奥の方の立派な椅子では鉄神が堂々と座っていた


「何をしにきたの…?」

「いや? こいつが本当は君たちを処分してくれるはずだったのに…

 本当にこいつもあいつも使い物にならなくて困るね…」


鉄神の足元にはボロボロになった影蛇が転がっていた


「姿が見えないと思ったらこやつにやられておったのか…」

「だ・か・ら! 僕がわざわざ君たちを屠りに来たってわけさ」

「なんで… 私たちをそんなに殺したいの…?」

「そっか理由くらいは聞いておきたいよね

 いいよ、冥途の土産に聞かせてあげるよ」

「冥土の土産じゃと…!?」

「ねぇ? サタナ… いや…」


そこまで言って息を吸いなおし私のことを見てこう言い放った


「天神サカルリパライニカタ・ルサソレーナ?」

「え…?」


挿絵(By みてみん)


地図→https://www.pixiv.net/artworks/112368909

次回は10月14日です

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