鉄神
「サタナ様! 起きてください!」
「ナルディ… どうしたの?」
ナルディに起こされてテントの外に出ると辺りには無数の大穴が開いており
左右にそびえていたはずの第二、第三の壁は無残にも破壊されていた
「何が起きてるの…!?」
「儂も何が何だかわからない状況じゃ、急いで第一の壁に急ぐとするのじゃ」
「な… なんで?」
「鉄神に状況を聞くためじゃよ!」
「そっか!」
内部まで破壊し尽くされた第二の壁を通り過ぎて第一の壁へと
一直線に走っていくと先に行っていたメギルさんが見えてきた
〈鉄国東〉
↓
〈第一の壁〉
「メギルさん! いないからどこに行ったのかと思ってた…」
「儂が先に行くように頼んだんじゃよ、じゃが…」
「はい… これでは…」
第一の壁も他の壁と同様に破壊されており
その惨状は第二、第三以上のものだった
「本当に何が…」
「お前ら!」
「カルロッテさん!?」
第一の壁の瓦礫からカルロッテさんが誰かを引きずって現れた
「皆、無事なようでよかった!
こんな状況で再会できたことを喜ぶべきなんだろうが
そのまえに回復魔法をこの御方に使ってくれないか?」
「任せて!」
『サタナの初癒魔法!
キャルの体力が83回復!』
「キャルじゃと!?」
「ということはこの方は…!」
「鉄神キャルカーヌーン・アーサルキ様!?」
「助かった… カルロッテもありがとう」
「鉄神様… この惨状について説明していただいても良いですか?」
「サリさんの話し方違和感…」
「黙っているのじゃ!」
「いいよいいよ、そんな丁寧に話さなくて
その前に軽く自己紹介しようか、僕のことを知らない子もいるみたいだし?」
「はうっ… ごめんなさい…」
「僕はキャルカーヌーン・アーサルキ、この鉄国を治めてる鉄神さ
君たちは?」
「私はサタナ・クライです!」
「私はナルディ・ロフです」
「儂はサリ・ドランじゃ!」
「僕はメギル・カニスです」
「君たちがフティやモカが言ってた面白い旅人か、なるほどね
なんでも闇地の魔物を手駒にしているらしいじゃないか」
「フティ? モカ?」
「馬鹿サタナ! 地神様と水神様のことじゃぞ!」
「あぁ… もう喋らない方がいいかも」
「そうしてください…」
「あっはっは! 君たち本当に面白いね!」
「良いんですかそれで…」
「良いんだよカルロッテ、君の友人である以上責め立てるようなことはしない
命の恩人でもあるわけだしね」
「良かったのじゃ…」
「それはそうと、僕の頼みを聞いてくれないかい?」
「鉄神様の頼み?」
「君は闇地の魔物を手駒にしてしまうのだろう?
それならば鉄国の影蛇もなんとかしてくれないかい?」
「え… でもサリさんが鉄国の魔物は一掃されたって…」
「僕たちもそう思っていたさ、でもね影蛇率いる闇地の魔物は
地下に闇地を作っていたんだ、名を常闇の洞窟」
「だからあんなに穴だらけだったんだ!」
「もちろん、僕も一緒に行こう
ここまでされた借りはきっちりと変えさせてもらうよ」
「そういえば、なんでこんなにも強い人たちがいるはずなのに
こんなに大敗しちゃったの…?」
「ばっ… 鉄神様の前でそれを言うか!?」
「それを言われたら流石に苦しいな…
3つの壁は外部からの攻撃に耐えられるように
かなりの数の魔術師によるガメドイが張られて防御力は十分だったんだ
だけど奴らは各壁の中の地面から現れたんだよ」
「内部から破壊されちゃったんだ…」
「そういうこと、まさか地下から来るなんて…」
「これは炎国に行くのはかなり後になりそうですね…」
「そうだね…」
「それでは早速向かいましょうか、キャル様立てますか?」
「カルロッテ… キャルで良いって言ってるでしょ?」
「流石に無理がありますよ…」
「なんだか見覚えのある光景だね…」
「あはは…」
近くの大穴に向かって歩き出していると周りの様子の変化に驚いた
「あれ… こんなに魔物いたっけ…」
「各所に空いた穴から湧いて出てるんだろうね」
「そういえば、儂らは今どこに向かっているんじゃ?
地下に殴り込みに行くならそこらの穴から入ればいいのではないのかの?」
「そんなことしようものなら迷子になるよ」
「だったら結局どこから入ってもダメなんじゃ…?」
「それがそうでもないんだ
さっきから少しだけ地面が揺れているのが分かるか?」
「そうだね、確かに揺れてる」
「恐らくこの揺れは影蛇が地中を高速で掘り進めているからなんだが
そのルートが少し異端でな」
「異端とはどういうことじゃ?」
「この広い鉄国を縦横無尽に移動しているのは分かるんだけど
なぜか最後に必ず同じ道を通るんだよね」
「つまりその先に影蛇の住処か何かがあると踏んでいるわけですね?」
「うん、だからその必ず通る道に向かってるんだ
おっと危ない危ない」
『キャルの神鉄剣技!
アイアンゴーレムに1083ダメージ!
アイアンゴーレムは倒れた!』
キャルさんが大剣を構えたかと思えば
目の前に現れたゴーレムは真っ二つに切られていた
「え… 何が…」
「これでも神だからね!」
「これが神級…」
「僕の見間違いでなければ1000ダメージ出ていました…?」
「さ、早く行こう!」
「ちょっと待って!
こんなに強いキャルさんが負けた影蛇に今から挑むの!?」
「え? 手懐けるんじゃないの?」
「影虎、影亀は確かに戦わなくて済んだんだけど
影鳥はそういかなくて戦う必要があったんだ…」
「あちゃ… まぁ数の暴力で何とかなるよ!」
「神様のしていい発言じゃないですよ…」
「いいの!」
〈第一の壁〉
↓
〈鉄国北〉
「ここだよ、早速降りてみようか」
洞窟内に降り立ってみると中は各所に空いた穴により意外と明るかった
「まっすぐ続いてるね?」
「どうしてこんなにもまっすぐなんでしょうか…?」
「おそらくじゃが… この角度じゃと全ての壁の真下を通るんじゃろうな」
「なるほど、だから攻撃の中心にするために影蛇が何回も通ってるってこと?」
「まぁそうじゃろうな… む? カルロッテよ、鉄神様はどこに?」
「は? ここにいるだろ… え?」
カルロッテさんが肩を貸していたはずの鉄神様は
いつの間にか姿を消していた
地図→https://www.pixiv.net/artworks/112349692
次回は10月8日です