過去
「ナルディお帰り! ってすごい荷物だね…?」
「はい! これからしばらくの間、旅路に食料を得る手段がないですからね
今のうちに買っておかなくては!」
「えらい! けど… 自分の分は?」
「自分の分?」
「ナルディが欲しいものとかのこと!」
「私は大丈夫です!」
「だいじょばない! 本当は何か欲しいものがあったんじゃないの?」
「うぅ… そ、その…」
「うんうん」
「少し前に髪留めが壊れてしまいまして…」
「だから最近ずっとおろしてたんだね?
良いじゃん良いじゃん! 今すぐ買いに行こう!」
躊躇するナルディを無理やり引き連れて近くのアクセサリーショップを探す
「そうはいっても意外とないね…」
「勝手に動いてしまってよかったのでしょうか…?」
「大丈夫でしょ、サリさんとメギルさんなら」
「サタナ! ナルディちゃん! おーい!」
声のする方を向くとイルナが出店を開いていた
「イルナ! お店も開くようになったの?」
「そうなんだ! お父様が風国より上にはお店を出したがらなくてさ
私と数人だけで売りに来てるんだ」
「まぁこんなところに大きなお店開いてから
魔物に攻め込まれでもしたら大損にしかならないもんね」
「そういうことなの、だからここのお店は私の好きなようにしてるんだ」
改めてイルナの店に並んでいるを見てみると綺麗な魔石を使った
色々なアクセサリーが並んでいた
「これって魔石だよね? もしかして効果とかもあるの?」
「もちろん! 魔法被ダメージの軽減とかの効果が一般的だね」
「なるほど… あ、これなんてナルディに似合うんじゃないかな?」
―――――――――――――――――――――
〈名前〉地の魔石の髪飾り
〈防具種〉頭
〈属性〉地
〈品質〉優
〈能力値〉+守43
〈効果〉魔法の被ダメージ軽減・中
―――――――――――――――――――――
「ナルディは地属性だし似合うと思ったんだけど…」
「良いですね! イルナ様これにします!」
「まいどありー! サタナはどうする?」
「そうだね…」
「これなんてどうでしょう?」
―――――――――――――――――――――
〈名前〉龍の鱗の髪留め
〈防具種〉頭
〈属性〉炎
〈品質〉特
〈能力値〉+体13 +守29
〈効果〉被ダメージ軽減・小
―――――――――――――――――――――
「おぉ… 被ダメージ軽減って全攻撃のダメージが減るってこと?」
「そういうことですね」
「いいね、じゃあこれにする!」
「まいどありー!」
イルナから受け取ってさっそくお互いに着けあってみる
「おぉ! 2人とも似合ってるね!」
「サタナ様の髪がさらに綺麗に…!」
「持ち上げすぎだよ…! ナルディも似合ってるよ!」
「ありがとうございます! では、そろそろ皆様の元に戻りましょう!」
「そうだね、イルナじゃあね!」
「うん! 元気でね!」
イルナと別れて元の広場まで帰ってくると
サリさんとメギルさんは既に戻っていた
「遅くなってごめん!」
「ごめんなさい!」
「大丈夫なのじゃ、儂も今戻ったばっかりじゃ
おぉ髪留めを新調したんじゃな! 2人とも似合っておるのじゃ!」
「ありがとう!」
「サタナのは竜骨のものじゃな… ナルディがおすすめしたんじゃろ?」
「うん、そうだけど…?」
「サリ様…!」
「ナルディ? 顔真っ赤だけど、どうしたの?」
「なんでもないです!」
「ナルディにも独占欲というものがあるんじゃな…」
「サリ様!」
「サリさん… この辺にしてあげてください」
「ついやってしまうのじゃ」
「本題に戻りましょう… サタナさん、宿の方は決まっているのですか?」
「忘れてた! 全く決まってないから急がなきゃ」
「恐らく無理だと思います…」
「ナルディ?」
「先ほども少し触れましたが
第三の壁は元々鉄国に住んでいた人々が住んでいる地区です
また、呼ばれた軍人は第一第二の壁に住んでいます」
「つまり旅の者が止まる建物がないということじゃな」
「そんなことあるの!?」
「僕もうすうす感じていましたが… 確かに宿らしき建物がないですね」
その言葉通り辺りを見回しても宿屋を示す看板は確認できなかった
「ど… どうしよう…」
「まぁ野宿じゃな」
「前はクスロ平原だったから何とかなったけど… 流石に無謀じゃない…?」
「そう思うじゃろ、鉄国の魔物は壁の建設当時に一掃されているのじゃ」
「一掃!?」
「一掃じゃ、もしガラべドロとここで対峙することになった時
他の魔物に邪魔されてはかなわんじゃろ?」
「そうだけどさ… 危険な魔物だらけの鉄国のイメージは一体…」
「危険な魔物だらけなのは炎国です」
「そうじゃな、炎国の城が破壊され炎神が殺された後は誰も近づけておらん
今頃は魔物の楽園になっておるんじゃろうな」
「炎国にも鉄国の壁みたいなのがあったんだ?」
「もちろんじゃ、大体100年前までは炎国はまだ天国と接してる部分が
破壊されているだけで後の地域は他の国と変わりなかったからの」
「へぇ… 昔の戦線は炎国だったんだ…
天国落下が起きて、ガラべドロが敵対し始めた瞬間から
炎国は破壊されてるのかと思ってた」
「炎国出身を2人前にしてよくそんなことが言えるの…」
「あ! ごめん!」
「大丈夫ですよ、そう思ってしまうのも無理はないですからね」
「まぁそうじゃな、そういえばナルディは炎国のどの辺出身なんじゃ?」
「炎国南にあるジギラ火山です」
「やはりジギラじゃったか…」
「やはり? 知ってたの?」
「ふむ、この続きは休む場所を見つけてからじゃな」
「じゃあ早速鉄国東に向かおう!」
〈第三の壁〉
↓
〈鉄国東〉
クスロ平原の時と同じ段取りだったため手際よく準備をすることができて
何とか今日分の寝床を確保することができた
「僕も同じところでいいんでしょうか…?」
「大丈夫だよ? なんで?」
「大丈夫じゃ、何かやましいことでもしようものなら
消し炭にするだけじゃからな」
「ですね」
サリさんとナルディが見たこともないような恐ろしい笑顔でそう言った
「あはは… そうだ、寝床の準備ができたら話をしてくれるって…」
「そうじゃったな、それじゃあ話すとするかの
まずは炎国の特徴から話すのじゃ
炎国には4つの火山があってそれぞれ別々の種族が住んでいたのじゃ
オドロ火山には儂ら魔女族、ジギラ火山にはナルディら龍族
ヌグミ火山には魔族、メヒデ火山にはエルフ族という風にじゃ」
「だからナルディの出身が分かったんだね」
「早速じゃが本題に入るのじゃ
新暦30年ほどにガラべドロが炎国に侵攻を始めたのじゃ
炎神は火山を砦として利用して侵攻を防ごうとしたのじゃ
おそらくじゃがその時にナルディも逃げたんじゃろ?」
「はい、前にサリ様の話を聞いたときから思っていましたが
私たちは同じ境遇だったんですね」
「そうじゃな、まぁ結局この砦作戦はあまり効果を発揮しなくての
4つの火山合わせてもせいぜい10年程しか持たなかったのじゃ」
「そうだったんだ…」
「それどころか魔女族は基本炎国に住んでいなかったこともあって
リウクスには儂含めて数人しかいなくなってしまったのじゃ」
「赤龍族も同様です、名の通り基本は炎国にしか住んでいませんから
おそらく数匹… もしかしたら私以外にはいないのかもしれません」
「龍族は元から数が少ないからの… あり得るかもしれん…」
「でもナルディ私と初めて会った時に御爺様がどうとか言ってなかった?」
「あぁ、それは御爺様の遺言です」
「遺言…」
「私たち龍族が全滅に追い込まれかけたときに
御爺様は残り僅かなマナで私にガメドイを使いながらこう言いました
『お前は逃げるんだ! 逃げた先で勇者様を探せ!
そしたら勇者様と共に我らの仇を…』と…」
「ふむ…」
「ごめん、今聞くべきじゃないんだけど… 勇者って何!?」
「私もよくわかりませんが…
勇者はなんとなくわかる! と教わりました」
「じゃからピンときたサタナだと思ったわけじゃな?」
「はい!」
「そんなんでいいの!?」
「ナルディさんが聞いた教えは強ち間違っていないかもしれません」
「メギルさん…? どういうこと?」
「龍族が最初に従ったのは神なのはご存じだと思うのですが…」
「守護神と守護龍の関係だね?」
「はい、その守護龍の最初の子孫を5属性とも従えた者
通称『神の子』がいたという歴史が各所で見つかってます」
「つまりその人族こそが勇者じゃと?」
「はい、その子孫であるナルディさんはなんとなく分かるのではないのか
つまりサタナさんは本当に勇者の関係者… さらに言えば子孫…」
「なるほどの…」
「私が勇者…」
「サタナの実の両親が分かっていないからの…
もしかしたらもしかするかもしれんの」
「そうなんですか!?」
「そっか… 私の話はあまりしてなかったね」
「サタナさんの言う自分探しというのは言葉の綾ではなかったのですね…」
「うん、本当に自分が何かを探してるんだ」
「なるほど… なんだか興味深い話が一気に聞けました…」
「だね、私は未だに何が何だか…」
「まぁそうなるのも無理はないの」
「かなり話が脱線してしまいましたね…」
「まぁいいじゃろ、そろそろ夜も更ける頃じゃ
早ければ明日には炎国には入ることができるんじゃ
しっかりと休んでおくんじゃ」
「そっか、あまり鉄国に用はないもんね」
「では、休息をとりましょう」
「うん、おやすみ…」
地図→https://www.pixiv.net/artworks/112177852
次回は10月7日です