協力
完全に疲れ切っていたのか次に目を覚めていた時には日付は変わっていた
「あれ… カルロッテさんがいない…?」
「残念じゃ、カルロッテも仲間に誘いたかったんじゃがな…」
「でも、別にカルロッテさんはガラべドロとか天国を
目的に旅をしているわけじゃないから誘っても…」
「まぁそうじゃな… して、今後はどう動く予定なのじゃ?」
「そうだね、常闇の丘に向かおうかな」
「それならとっととメギルのやつと合流しないとじゃな」
「だね」
〈宿屋イスカ〉
↓
〈冒険者協会〉
「わざわざそんなところに行くのですか!?」
常闇の丘に訪れる予定について話すと
予想外の単語が話題に上がったからかメギルさんは大声を上げた
「そうじゃった… 儂らが闇地を巡っている話はしたことなかったの」
「そうでしたか、ではざっくり話すとしましょうか」
メギルさんに今まで出会った影虎や影亀の話をすることにした
私たちの口から飛び出す話にメギルさんは興味深そうに聞き入っていた
「とまぁ、これがここまでの旅のまとめじゃ」
「なるほど… 闇地の魔物がサタナさんに懐いている…
サタナさんが昔飼っていた… とかですかね?」
「ナルディにも言われたけどそんなことあるはずないでしょ…」
「まぁそうですよね…」
「このことが起きている原因として儂が考えているのはサタナの属性じゃ」
「私の属性?」
「闇地の魔物はガラべドロの息吹によって汚染されてしまった
魔物たちであることは本で読んだじゃろ?」
「うん」
「つまり、ガラべドロの汚染から救いを求めるために
相反するサタナ様の力に縋っているということでしょうか?」
「そういうことじゃ」
「なるほど… それならサタナさんに懐く理由もわかりますね…」
「とはいえ、あくまで予想じゃから何もわからないことに
変わりはないんじゃがな…」
「それはそうだね」
「では説明も済んだところで早速常闇の丘に向かってみますか」
「そうじゃな!」
〈宿屋イスカ〉
↓
〈常闇の丘〉
「着いたは良いけど… なんだかボロボロだね…」
丘に生えている木々は全て燃え尽きており
足元に生えていたであろう芝生は真っ黒に焦げていた
「か… 風の峠がこんなことになっていたとは…」
「風の峠?」
「ここの元の呼び名じゃよ、リウクス山颪が吹いてくる方向じゃからな」
「そのままだね」
「そんなこと言っている場合じゃないですよ
このような惨状は過去の闇地の魔物には見られなかった傾向です
今までのようにはいかない可能性の方が高いということです…!」
「それは勘弁してほしいな…」
「皆さん! あれが常闇の丘の主… 影鳥です!」
メギルさんが指さす方向からは大きな鳥が低空飛行で
私たち目掛けて一直線に飛んできていた
「サタナ様…! やはり影鳥とは戦わなくてはならなそうです!」
「やっぱりそう思う…? いやだなぁ…」
―――――――――――――――――――――
〈名前〉影鳥
〈種族〉鳥族
〈属性〉闇
〈レベル〉66
〈ミンラ〉闇属性の上級弓技を扱う
〈職業〉――
〈能力値〉体113・力410・守102
速441・知99・運70
―――――――――――――――――――――
「遂に60すらも超えやがったのじゃ…」
「サリ様よりも上とは…」
「こっちは4人だから勝てる!」
「どっからその自信が湧くのか聞いてみたいものじゃ…」
「皆さん! 攻撃がきます!」
『影鳥の攻撃!
ナルディに79ダメージ!』
「ナルディ! 大丈夫!?」
「大丈夫ですが… このダメージでは…」
「サタナが喰らったら一撃じゃな…」
「ど… どっどうしよう!?」
「僕に任せてください!」
そう言うや否やメギルさんは影鳥向かって走り出した
「あっ…!」
しかし、さっきまで低空飛行をしていたはずの影鳥は
メギルさんが迫っていくと高速で高く高くまで上昇していってしまった
『メギルの中風剣技!
影鳥には当たらなかった!』
「流石の速じゃな… わしらの攻撃じゃ到底追いつくことは出来ん…」
「私たちの中で一番早いナルディでも160… どうしよう…!」
「追い込み漁はどうでしょうか?」
「なるほど、それなら影鳥に追いつく必要はないですね…」
「それでも逃げられそうだけど…」
「物は試しじゃ! 作戦を立てるのじゃ!」
〈常闇の丘〉
↓
〈マーレ〉
命からがら影鳥の猛攻から逃げ切りマーレに駆け込んだ
「そういえば、闇地の魔物って闇地から出てくることはないんだね?」
「はい、彼らは自分の縄張りから出てくることはありません
その代わり闇地は常に拡大し続けているので
彼らの影響範囲が広がり続けていることに変わりはないのですがね…」
ナルディと話している間にサリさんとメギルさんは淡々と話を進めていた
「それで… どう?」
「結局しんぷるいずべすと、ということになってな」
「僕とナルディさんで影鳥に向けて左右から攻撃を放ちます
そうすることで影鳥は上に逃げることしかできません」
「そこに儂のイデガラームを落とすんじゃ」
「でも… いくらでも避けようがありそうだけど…」
「そうじゃろうな、じゃからこの時サタナはミルイルエを構えておくんじゃ
そうすればじゃな… 奴は逃げようとしたらサタナにやられ
逃げなかったら儂の攻撃で丸焦げになるんじゃ!」
「すごい不安です…」
「私も同感だよナルディ…」
「行けます! 行けますよサリさん!」
「じゃなメギル!」
サリさんとメギルさんは手を取りながら勝利を確信して喜んでいた
「大丈夫かな…」
「とりあえず任せてみましょう…」
〈マーレ〉
↓
〈常闇の丘〉
「戻ってきたはいいけど… 影鳥はどこに行ったの…?」
「上じゃ! ナルディは東にメギルは西、儂は上空に行くから
サタナは全力のミルイルエをここで準備しておくのじゃ!」
「わかった!」
「「わかりました!」」
サリさんの指示通り私は少し離れた地点でマナを集め始めた
サリさんは影鳥とぎりぎりですれ違いながら上昇していった
「メギル様! 今です!」
「はい!」
影鳥が地面に降り立ったタイミングでナルディとメギルさんは
それぞれ攻撃を影鳥に向けて放った
『ナルディの全地吐息!
影鳥には当たらなかった!』
『メギルの中風剣技!
影鳥には当たらなかった!』
2人の攻撃が激しくぶつかり合い辺りには煙がもくもくと上がった
その煙から影鳥が上空へと逃げていくのがはっきりと見て取れた
「そっか… 影鳥は体力が低いから攻撃をよけるしかないんだ…」
「お主はもう袋の鼠じゃ! イデガラーム!」
飛び上がった影鳥はその速度を緩めることが出来ず
サリさんの最大出力イデガラームにそのまま突っ込んでいった
『サリの上炎魔法!
影鳥に318ダメージ!
影鳥は倒れた!』
「あれ… 私の出番なし…?」
「こやつも案外間抜けじゃな、自分の速に殺されるとは…」
「って倒しちゃったの!?」
「いやまぁ本気で戦わんと儂らも死ぬし、仕方ないじゃろ」
「何か聞けたかもしれないじゃん!」
「聞く…?」
「ナルディのミンラで闇地の魔物から天国のヒントをもらってたんだ
とは言っても意外と聞き取れないらしくて…」
「死にかけですが一応試してみますか…?」
「うん、少しだけ回復してあげようか、ライミル!」
『サタナの初癒魔法!
影鳥の体力が41回復!』
「あ… 何か喋り始めました…
『様… 様… 申し訳ございません…』」
「誰かに謝ってる…?」
「こやつからもう敵意は確認できないし、儂の図書館に送るかの」
「いつもいつもごめんねサリさん」
「気にするでない、儂も実験体… ペットが増えてうれしい限りじゃ!」
「あんまり意味変わってなくない!?」
サリさんは私の言葉を聞き流すように影鳥を連れて早々に転移してしまった
「サリさん!」
「早いですね… さすが魔女様…」
「一体サリさんはどこに向かったのですか?」
「スムスドン国立図書館だよ?」
「スム… スムスドン国立図書館ですか!?
サリさん『儂の図書館』がどうとか言って…」
「そうそう、サリさんはスムスドン国立図書館の司書さんなんだよ」
「何者なんですかあの人…」
「えっと、水国内戦で勲章を得たり複合魔法を作って表彰された人ですね」
「え…?」
「戻ったのじゃ!」
サリさんの凄すぎる正体を知って
開いた口がふさがらない状態のメギルさんを笑っていると
サリさんが戻ってきた
「何を話しておったんじゃ?」
「え、サリさんがすごい人だって話」
「じゃからそんなんじゃないと何度も話しておるじゃろ…」
「いえ、メギル様がサリ様を見る目はもう完全に尊敬そのものですよ」
「サリさん… いえ、サリ師匠!」
「はぁ!?」
「サリ師匠! これからいろいろ勉強させてください!」
「やめ… やめるのじゃぁぁぁ!!!」
地図→https://www.pixiv.net/artworks/111769758
次回は9月23日です