襲来
ビーッ!ビーッ!大侵攻警報発令!
速やかに屋外にいるものは屋内へ避難してください!
また各衛兵は直ちに風国西方面に集まってください!
「何…!? 何事!?」
突然の警報に真夜中ながら一瞬にして目が覚める
周りを見渡すと窓際でサリさんとナルディが外を見ていた
「サタナ…」
「2人ともどうしたの…? そんな険しい顔をして…」
「サタナ様… 大侵攻が来ます…!」
「大侵攻…?」
「大侵攻というのは言うなれば1種の自然災害です
虚の龍、ガラべドロが自身の配下を率いて
天国から他国に侵攻する現象のことです」
近くの机ではメギルさんがいろんな書物を取り出しては
何かを一心不乱に書き続けていた
「こんな危険そうなときでも研究は欠かさないんだね…」
「何があってもいいように儂がこの部屋へと呼んでおいた
気を悪くしたらすまぬ」
「大丈夫だよ、それよりもう少し詳しく教えてほしい」
「じゃな、大侵攻はメギルが説明した通りなんじゃが
その後に闇地を作るのがガラべドロの目的じゃと思われておる
基本この大侵攻の後にどこかに闇地が作られておるんじゃ」
「そのため私たちは現在影虎や影亀がいないために闇地が機能していない
地国か水国に行くためにただここを通過するだけと考えていましたが…」
「奴が降り立ったのじゃ… 三日月の泉に…!」
サリさんが指さす先には大きな黒い影が地上に降り立っているのが見えた
「私たちにはどうすることもできないの…?」
「当り前じゃよ…!
5神がなんとかしてくれるのをただ待つことしかできんのじゃ…」
「そんな…!」
「儂の最終目標相手に今は何もできん…
こんなに屈辱的なことは他にないのじゃ…!」
サリさんが床をドンっと叩く
その迫力からサリさんの悔しさを嫌というほど感じた
「サリ様…」
今、自分たちにできそうなことを何とか考えていると
ある1つの案を思いついた
「もしかしたら… 私のミンラを使えばガラべドロについて
何かわかるかも…」
「何を馬鹿なことを言っているんじゃ!?
お主のミンラはせいぜい5m先の魔物にしか使えんのじゃろ!?」
「そんなに近づいたら無事で帰れないと思います…」
「でも今は5神と戦ってるしガラべドロの集中は5神に向いてると思うから
近づけるチャンスは今しかない… 私はそう思う!」
「でも… 今は夜です! ルフドイが使えない今、早急な撤退も出来ません…」
「そうかもしれないけど… 私少しは知ってるよ?
ガラべドロは闇地を作り終えた直後に姿を消すって…
その時間はざっと1時間…」
「よく知っておるの…」
「コワグさんに協力してもらって自分でも色々調べてたんだ!」
「僕はもちろん行きますよ!
僕は夜でも戦えるように仲間に入れてもらえたんですものね!
ここで活躍しないでどうするんですか!」
「そんな言い方しないでよ… 申し訳なくなるじゃん…」
「冗談です、僕はサタナさんの仲間として全力で護衛しますよ!」
「メギルさん… ありがとう!」
「じゃな… ガラべドロ討伐のためじゃ、今命を張らなくていつ張るんじゃ!」
「サリさん…」
「そうですね… 私はサタナ様のためならどこへだって着いていきます!
私はサタナ様の従者であり仲間なのですから!」
「ナルディ… よし、行こう! 三日月の泉へ!」
「「はい!」」
「うむ!」
〈宿屋イスカ〉
↓
〈三日月の泉〉
ここに来る道は夜だからなのかガラべドロが近くにいるからなのか
かなりの強敵ぞろいで既にかなりの無茶をしてしまった
「やっと着いた…」
「そんなこと言ってられなさそうですよ…」
「ブラッドウルフの群れじゃ…!」
「そういえば依頼にありましたね… 完全に頭から抜けていました…」
「よし、ついでに狼狩りだー!」
「ついでにやっていいものじゃないんじゃがな…」
――――――――――――――――――――
〈名前〉ブラッドウルフ
〈種族〉狼族
〈属性〉風
〈レベル〉39
〈ミンラ〉風の中級牙技を扱う
〈職業〉――
〈能力値〉体108・力159・守83
速198・知81・運50
――――――――――――――――――――
「とは言ったけど… 結構無茶だよね…」
「無茶も無茶じゃよ… やっと気づきおったか…」
「私たちができることは通常攻撃のみです!
私やメギル様ならまだましですがサリ様やサタナ様では…」
「うん… でもやるしかない!」
「儂とサタナで今体内にあるマナをすべて使って魔法を放つ
残ったやつらを頼むのじゃ!」
「「わかりました!」」
「イデガラーム!」
サリさんが放った炎の大玉はいつもよりも威力が低いとはいえども
辺りに数十匹分のブラッドウルフの屍を転がすことになった
「流石サリさん! 私も頑張るよ! ミルイルエ!」
サリさんの魔法のように対複数に強くないため
あまり倒すことはできなかったが何とか群れのほとんどを削りきれた
「メギル様行きますよ!」
「はい! 任されました!」
ナルディとメギルさんは互いの背中を守りながら
襲い掛かるブラッドウルフを次々と薙ぎ払っていった
「25… 26… 27…」
「サリさんなに数えてるの?」
「ブラッドウルフの数じゃ、確か群れは32匹構成と書かれておったからの
足りなかったら困るじゃろ?」
「確かに… それで倒れてるのは何匹だったの?」
「27じゃ」
「で、今ナルディたちが戦ってるのが4匹だから… あれ?」
「「足りない!?」」
恐ろしすぎる事実に気づいたとたん背後の茂みがガサッと揺れる
「あぁ… もうだめだぁ…」
「サタナ! 諦めてはならんのじゃ!
そこらの石も構えれば武器となるのじゃ!」
茂みから何者かが足を出した途端、私たちはいっせいに石を投げだした
「喰らえ! 喰らってくれなのじゃ!」
「喰らえー!」
「お前ら… 何をやっているんだ?」
――――――――――――――――――――
〈名前〉カルロッテ・ホルン
〈種族〉魔族
〈属性〉炎
〈レベル〉50
〈ミンラ〉地と炎の上級剣技を扱う
〈職業〉兵士
〈能力値〉――
――――――――――――――――――――
茂みの中からは倒されたブラッドウルフを片手にカルロッテさんが現れた
「カ… カルロッテさん!?」
「久しいなサタナ、それにサリも」
「良かったのじゃ… 本当に…
その… 久々に会っていきなりで悪いんじゃが…」
「なんだ?」
「あやつらも助けてくれぬかの?」
「お安い御用だ」
そう言った直後にカルロッテさんはナルディたちの元へ走り出し
ブラッドウルフたちを全て切り捨ててナルディたちの目の前に降り立った
「カルロッテ様!?」
「ナルディも久しいな、元気そうでよかった」
「全然元気じゃないですよ…!」
「して、カルロッテ… お主はここで何をしておったのじゃ?」
「私はお前と戦った後にさらに強くなりたいと思ったからな
しばらく放浪の旅に出ていたのだ」
「これ以上強くなる気なの…?」
「まぁな、それよりお前らこそここで何を?」
「あれを見学しに来た… というところじゃな」
ほんの少し先で5神とガラべドロが戦っている様子を指さす
「はぁ…? お前ら馬鹿じゃないのか?」
「うるさい! 情報収集じゃ、情報収集!」
「はいはい… それで何かわかったのか?」
「今頑張って見ようとしてるところ… なんだけど…」
「流石にこれ以上近づくのは無謀じゃぞ…?」
「だよね… あっ見えた!」
―――――――――――――――――――――
〈名前〉ガラべドロ・ラキニヴェラ
〈種族〉虚天龍族
〈属性〉闇
〈レベル〉――
〈ミンラ〉闇の神級――を――
天の神級――を――
〈職業〉――
〈能力値〉――
―――――――――――――――――――――
「ガラべドロ… ラキニヴェラ…?」
戦いの場に手が届きそうなほどに近い茂みに隠れながら
ガラべドロのミンラを読み進めていると
こちらを向いたガラべドロとバッチリ目が合ってしまった
漆黒という言葉では言い表せられない程の真っ黒な瞳は
完全に私たちをとらえてしまっているようだった
「まずい、奴がこちらに気づいたのじゃ! 逃げるぞ!」
「うん!」
〈三日月の泉〉
↓
〈マーレ〉
やっとの思いでマーレにたどり着いたのは太陽が昇った後だった
「すっかり朝になっちゃったね」
「そうじゃな、ここまで走るのはなかなかしんどいのじゃ…」
「先ほどは助かりました… えっと…」
カルロッテさんの方を見て困ったようにメギルさんが声を漏らした
「そうじゃったな、こやつはカルロッテ・ホルン、儂の旧友じゃ」
「よろしく頼む、お前の名前は?」
「メギル・カニスです! よろしくお願いします!」
カルロッテさんとメギルさんが握手を交わしている最中
後ろから私たちを呼ぶ声が聞こえた
「サタナさん! 皆さん! よぉご無事で!」
「ハツキさん? こんな朝早くからどうしたの?」
「町の人からサタナさん方がこんな状況下で街の外に出たって聞いて
ごっつ心配したんですわ!」
「あぁ… 心配かけてごめんね?」
「無事なら何でもよいやけど… って皆さん傷だらけやないでっか!
早いところ宿に戻って休憩したってや!」
「うん、三日月の泉に行ったついでにブラッドウルフも討伐してきたからさ…」
「ついででやることやないですわ!」
「ほらの?」
「あはは…」
〈マーレ〉
↓
〈冒険者協会〉
「とりあえず… 依頼達成です、ご協力ありがとさん」
――――――――――――――――――――
[クリア]
〈内容〉ブラッドウルフの群れの討伐
〈レベル〉36
〈場所〉三日月の泉
〈報酬〉420ケル
〈備考〉群れは32匹構成である
――――――――――――――――――――
【3309→3729ケル】
「お金は貯まるけどレベルは上がらないね…」
「じゃな… まぁ警報が解除されない限りここから動くのは無謀じゃろうし
どっちみちって感じじゃがな」
「それが、もう警報は解除されたらしいんですわ」
「な… そんな話があるのですか?」
「ホンマですわ、ガラべドロがしっぽ巻いて天国に戻っていったそうやねん」
「闇地は…?」
「出来とらんそうですわ、町の衛兵達が確認に行ったから嘘やないはずやねん」
「そんな話があるんじゃろうか…?」
「一旦この話は置いておいてまずは休息をとろう?」
「それでは、私はここで別れるとするかな」
「カルロッテさんもだよ! 助けてくれたのに置いてくわけないじゃん!
ハツキさん! もう1泊していくね!」
「まいどあり!」
【3729ケル→3329ケル】
〈冒険者協会〉
↓
〈宿屋イスカ〉
「本当に私までよかったのだろうか…?」
「もちろん! ってカルロッテさんのユカタ姿ものすごく綺麗…!」
「こやつにあう女性用のやつがないから男性用のものにしたが…」
「似合いますね… 高い身長が本当によく映えます」
「じゃな、そういえば久方ぶりにカルロッテの戦闘着以外の服を見たの」
「わ… 笑うなら笑え!」
「何でそうなるんじゃ!」
地図→https://www.pixiv.net/artworks/111599517
次回は9月16日です