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休憩

〈冒険者協会〉

 ↓

〈宿屋イスカ〉


【3611ケル→3311ケル】


「結構値段高かったね…」

「最近は冒険者が減っているので多くの宿屋が経営困難なんだそうです」

「まぁ2部屋取っているっていうのが1番の理由じゃろうな」

「メギルさん… 一緒の部屋でも大丈夫だったのに…?」

「んなことしたら彼が大丈夫じゃないじゃろ」

「そっか…?」

「そういえば、ここの1階は食事処になっていましたよね?

 メギル様を呼んで食事にしましょう!」

「だね、そうと決まれば…」

「待つのじゃサタナ、折角ならこれを着るのじゃ」


そう言ってサリさんは奥のクローゼットから布を取り出した


「ただの布…?」

「これはユカタという服じゃ、ほれほれサタナよとっとと着替えようぞ」

「服くらい自分で着られ…! なさそう…」


手に持って広げてみると正直全く分からない構造で

いつもの服のように手足を通すだけでは何とかならなそうだった


「じゃろ、ほれ任せるのじゃ」

「じっとしていてくださいね!」


結局何が何だか分からない内に着付けが終わっていた


「うむ、これで完成じゃ!」

「サタナ様の綺麗な紫色の髪も映えてよい感じです!」


姿見を見ると白色をベースに紫の花柄が施された浴衣を着せられていた


「すごいかわいい…!」

「よし、儂らもとっとと着替えてメギルを呼びに行こうかの」

「はい!」


サリさんとナルディは慣れた手つきでささっと着替えてしまった

サリさんは自身の真っ白な髪を全て下ろして水色のユカタを着ており

ナルディはいつもの服と同じ色である黒色のユカタを選んで着ていた


「むぅ… ナルディもたまには黒色以外の服も来てほしいんじゃがの…」

「確かに、私も見てみたい!」

「あはは… 私はこの色が一番好きなので…」

「そっか、ナルディの赤髪と合ってるからいいと思うよ!」

「そうじゃな! それでは準備も出来たことじゃし

 とっととメギルのやつを呼びに行くかの」


自分たちの部屋を出て隣の部屋にいるメギルさんを呼びに行った

部屋の扉を叩くとメギルさんが不思議そうな顔をしながら現れた


「あれ… 皆さん揃ってどうしました?」

「ご飯行こ!」

「わかりました、行きましょう! おぉ、皆さんのユカタ姿とても素敵ですね」

「いいでしょ! 2人にやってもらったんだ!」

「いいですね、僕も着てくればよかったですかね」

「今からは勘弁するのじゃ、すでに儂の腹の虫がぐーぐー鳴っておる」

「あはは! 早く行こうか!」


階段をトントンと降りていくと正面に食事処が見えてきた

食事処は多くの人で賑わっており厨房からは良い匂いが漂ってきていた


「あれじゃな!」

「おいでやす、何名様… ってサタナさんたちやないでっか! 

 本当にここ選んでくれたんやね、ありがとさん! ほな、こちらやねん!」

「ハツキさんここでも働いてるんだ?」

「ここに住まわせてもうてるからその代わりに働いとるんでっせ」

「そうなんだ… 頑張って!」

「おおきに!」


ハツキさんに案内された席に座りメニュー表を開く

今まで訪れたどこの食事処よりもメニューが豊富で目移りしてしまう


「なんか… よく分からないものもいっぱいあるね…?

 って魚を生で食べるの!?」

「わっはっは! 数百年前の儂と同じ反応をしてるのじゃ!」

「だって… 魚は水国のサルエみたいに焼いたり煮たりする物じゃん…?」

「マーレの食文化の多様性は主に風神のおかげだといわれています

 なんでも風神は食にうるさく、供え物が不味いと祟りを起こすとか…」

「何その神様… 怖すぎ…」

「皆さん、何にするか決めたんやか?」

「あ、ハツキさん! 私マーレのご飯初めてだからさ

 ハツキさんのおススメにしてもらっていい?」

「わかりました、サタナさん以外の皆さんはどうしまっか?」

「では、私もそれで!」

「儂も!」

「では僕も」

「はーい! 大将、天丼4つ!」

「天丼…?」

「来てからのお楽しみにしといたってや」

「わかった…?」


しばらくしてハツキさんが大きな器を4つ持ってきた


「わぁ…!」


器のふたを開くと中から海鮮物や野菜のフライが姿を現した

一緒に持ってきてくれたソースの匂いと相まってより一層食欲が刺激される


「これが天丼やねん、召し上がれや!」

「ありがとう! いただきます!」

「「「いただきます!」」」


久々のちゃんとした食事というのもあり私は一心不乱に食べ続けていた


「おいしい… おいしすぎるよ!」

「儂も風国で食う飯より美味い飯は食ったことないのじゃ」

「私もそう思います…」

「僕は風国から出たことがないのであまりわかりませんが

 これ以上のご飯はなかなか食べることができないと思います」


一心不乱に食べ進めていたのは私だけではなかったようで

明らかに異常なスピードで全員食べ終えていた


「食い意地張りすぎましたかね…?」

「龍族なんじゃし、それくらいがちょうどよいのじゃないかの?」


サリさんがからかうようにナルディのお腹をつつく


「サ… サリ様ぁ…!!!」

「わっはっは、軽い冗談のつもりじゃったんじゃ許せ!」


ナルディは顔を赤らめ頬を膨らませながらサリさんをポカポカと叩いていた


【3311ケル→3309ケル】


食事処でハツキさんと別れた後、メギルさんはいつの間にか姿を消していた


「メギルのやつ… 一人でよいからと先に行きおった…!

 儂らも急ぐのじゃ!」

「行きましょう!」


何やらナルディとサリさんは興奮気味にそう言っていた


「どこに…? 部屋?」

「バカたれ、ここに泊まるときにハツキが言っておったろうに…」

「あぁ… 温泉ってやつだっけ?」

「本気で忘れていたのですね…」

「じゃあ誰から入るの?」

「あぁそこからじゃったか…

 温泉というのは物にも寄るんじゃが基本的には皆で一緒に入るんじゃよ

 マーレで言うところの『裸の付き合い』というやつじゃ」

「そんなことが…?」

「慣れじゃ慣れ、のうナルディ?」

「はい、私は親の実家が風国なのもあって幼少期からよく来ていましたので

 慣れというよりはそういうものだと思っていましたね」


結局2人が話している内容がよく分からず大人しくついていくと

目の前に現れたのは女と書かれた垂れ幕だった


「着いたのじゃ!」

「何も分からないまま来ちゃったけど…」

「大丈夫ですよ! ほら行きましょう!」


2人に手を引っ張られて垂れ幕をくぐると

ようやく2人が話していたことを全て理解した


「は… ははっ… 恥ずかしいよぉぉぉ…!」


・・・・・・


「サタナ様…? そろそろ機嫌直してください…」

「嫌だ…」


部屋に帰った後、サタナ様は完全に機嫌を損ねてしまったらしく

川の字に並んでいる布団の端っこの方を陣取って背を向けてしまっていた


「まぁまぁ儂らもやりすぎたと反省しておるから…

 機嫌直して甘味でも食べようなのじゃ!」

「いらない…!」

「ちょっとやりすぎてしまいましたね…」

「じゃの… ちゃんと反省するべきじゃの…」

「サタナ様…? あら、寝てしまいましたか…」

「不貞寝とは… まだまだかわいいお年頃じゃの」

「ですね…」

「してナルディ…」


先ほどまでサタナ様をかわいがるような穏やかな顔をしていた

サリ様が突然真面目な話をするように私に向き直った


「お主は気づいておるかの?」

「はいサリ様… この膨大すぎるマナに気づかないはずがありません…」

「じゃよなぁ… お主が否定してくれれば無視できたのじゃが…」

「あはは… でもこれはそんなこと言ってられないですよ…」

「来るのじゃ…」

「来ますね…!」

「「あいつ(ガラべドロ)が…」」


挿絵(By みてみん)


地図→https://www.pixiv.net/artworks/111578731

次回は9月10日です

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