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祖父

「そういえば、皆様はなぜ旅をしているのですか?」

「自分探し!」

「サタナ様の護衛です!」

「打倒ガラべドロ!」

「そんなバラバラなんですか!?」

「終点が天国で一緒だからなんでもいいんじゃない?」

「確かにあまり考えたこともなかったの…」

「なんにしたってですが、皆様は天国に行くのですね?」

「うん? そうだけど…?」


意図のわからない質問にあいまいに返事をすると

メギルさんは膝を床に着けたかと思えば頭も床に着け話し始めた


「どうか… どうか僕を旅にお供させてくれませんか?」

「え!? また突然だね!?」

「先ほども言った通り、僕の目標は魔物の凶暴化を止めることです

 しかし目の前の魔物を倒しても倒しても何の解決にもなりません…

 やはり根幹であるガラべドロを倒して闇地を破壊しなくては!」

「儂の目標と似ておるの…」

「どうか、このちっぽけなカニスのために力を貸してはくれませんか!?」


メギルさんはまっすぐ私を見つめてそう言った


「メギルさん… 自分の村をちっぽけだなんて言わないで!

 自分が生まれ育った場所を守りたいって気持ちは本当に立派だよ!」

「サタナさん…! では…」

「でも… やっぱりだめ!」


突然の私の拒否にメギルさんの言葉が詰まった


「な… なぜですか…?

 これでも力はあります! 荷物持ちでも何でもしますよ…?」

「ううん、メギルさんの力が足りないとかそういう問題じゃないの」

「では… なぜ…」

「やっぱり向き合わなきゃ…!」

「向き合う…」


やはり思い当たる節があったのかメギルさんのまっすぐとした目が

かなり揺らいでいるのをはっきりと見て取れた


「サタナの言う通りじゃな、まずはお主の祖父… ロイトと向き合うべきじゃ」

「下手したら死ぬ可能性のある旅なんだよ…

 喧嘩別れなんてあっちゃだめだよ!」

「そうですが… あの人がわかってくれますかね…?」

「まっすぐぶつかれば分かってくれると思いますよ!」

「しかし…」


未だ覚悟の決まらないメギルさんに怒りが頂点に達したのか

サリさんはメギルさんに近づいて説教気味に話し始めた


「はっきり言うとな、お主らしっかり話し合ったことないじゃろ!」

「うっ…」

「サリさん!?」

「話し合わずして分かり合おうだなんて無理に決まっているのじゃ!」

「そ… そうだよ! 一回話してみよう?」

「そうですね… 僕が間違っていました…

 今一度、御爺様と向き合ってきます!」

「よしその意気じゃ!」


メギルさんの目が再びまっすぐに戻った


「意外とサリ様は世話焼きなのですね」

「うるさいのじゃ! あと『意外と』は余計じゃ!」


〈魔物研究所〉

 ↓

〈カニス村長屋敷〉


「ただいま戻りました」

「メギル…」

「はい、連絡もせずに本当にすみませんでした」

「今まで一体どこに…!」

「ごめんなさい御爺様、ちゃんと説明します」

「ロイドよ、今はこやつの話を聞いてやるのじゃ」

「サリ… わかりました…」

「この数年、僕は魔物の研究に勤しんでいました

 その結果というべきか、前々から分かっていたことですが

 魔物は数十年前より格段に狂暴になっており

 このままではカニスが滅んでしまうのも遠い未来ではないと思ったのです

 僕は御爺様と共に過ごしたカニスが滅ぶなんてとても耐えられません…」

「メギル…」

「御爺様が僕に風の祀り人になって欲しい気持ちは重々承知しています

 そして風の祀り人がどれほど大事な仕事かも重々理解しています

 しかし… 私は私のやり方でカニスを守りたいのです!」


メギルさんがはっきりとそう言ってロイトさんをまっすぐに見つめると

ロイトさんはまっすぐにメギルさんを見つめ返してこういった


「メギル… 私は大きな勘違いをしていたようです…」

「勘違い…?」

「私は貴方のことを守ってあげなくてはならない存在だと思っていました

 風の祀り人になってくれればずっと私が守ってあげられるとも…」

「御爺様…」

「しかし、もう泣き虫メギルはいないようですね」

「泣き虫?」

「そうなんですよ、メギルは昔から…」

「御爺様!」

「ふぉっふぉっふぉ、この話は別の機会にしましょうか」

「別の機会にもしないでください!」

「私は聞きたいけどな…」

「改めて本当にごめんなさいメギル…

 私は貴方の祖父という立場でありながら貴方を何もわかっていなかった

 もう風の祀り人になれだなんていいません、もう数十年…

 いいえ、数百年! この老いぼれ頑張りますよ!」

「御爺様…! ありがとうございます!」


メギルはロイ爺に大きく感謝をして握手を交わした


「それでは行ってきなさい!

 私は貴方がどこにいてもいつでも応援していますよ!」

「はい!」

「ま、儂らもついているし安心するのじゃ」

「うん! 任せて!」

「任せてください!」

「ふぉっふぉっふぉ、よろしく頼みますよ」


ロイ爺に見送られカニス村長屋敷を後にした


〈カニス村長屋敷〉

 ↓

〈カニス〉


「改めてですが、メギル・カニスです! どうぞよろしくお願いいたします!」


―――――――――――――――――――――

〈名前〉メギル・カニス

〈種族〉エルフ族

〈属性〉風

〈レベル〉23

〈ミンラ〉風の中級剣技を扱う 

〈職業〉魔物研究員

〈能力値〉体62・力133+72・守79+38

     速51・知75・運13

―――――――――――――――――――――


「サリさんとナルディのステータスの中間って感じのステータスだね」

「ふむ… 運が極端に悪いのじゃ」

「そうなんです… レベルアップ時に上がらない時もある始末でして…」

「あはは… そういえば運って何に干渉するの?」

「主に物事の運です、それ以外だと…」

「レベルアップ時の経験値の量じゃな」

「そうだったんですか!? 通りでレベルアップが遅いわけです…」

「よし、これであの洞窟の件とはおさらばだね!」

「洞窟の件…?」

「儂らがクスロ洞窟に挑戦した際に帰りが夜遅くになってしまっての

 戦う手段がほとんど無くなってしまったもんじゃから

 通常攻撃に長けたやつを仲間に入れようという話になっていたんじゃよ」

「なるほど…」

「では、新しく仲間が増えたことですしそろそろマーレへと向かいますか?」

「だね!」


〈カニス〉

 ↓

〈風国南〉


「疑っているわけじゃないんじゃが、一回メギルの力を図っておくかの」

「わかりました! 誰を相手取りましょう?」

「あれなんてどう?」


――――――――――――――――――――

〈名前〉ウィンドウルフ

〈種族〉狼族        

〈属性〉風    

〈レベル〉18      

〈ミンラ〉風の中級牙技を扱う  

〈職業〉――

〈能力値〉体39・力103・守49

     速91・知22・運37  

――――――――――――――――――――


「ふむ、あれくらいならなんとかなると思います!」


そう言ってメギルさんは背負っていた盾と片手剣を手に持ち

ウィンドウルフめがけて一直線に走りだした


「うらぁぁぁ! ルフトロラ斬!」


『メギルの中風剣技(ルフトロラ斬)

 ミス!ウィンドウルフには当たらなかった!』

『ウィンドウルフの中風牙技(ルフトロラファング)

 抵抗!メギルに23ダメージ!』


「抵抗…?」

「次こそは!」


『メギルの中風剣技(ルフトロラ斬)

 ウィンドウルフに52ダメージ!

 ウィンドウルフは倒れた!』


「メギルさんは片手剣と盾を使うんだね」

「はい! 両方とも御爺様が作ってくださった特注品(オリジナル)です!」


―――――――――――――――

〈名前〉トイルナンド

〈武器種〉片手剣

〈属性〉風

〈品質〉超             

〈能力値〉+力72  

〈効果〉風剣技の威力上昇・上

―――――――――――――――


―――――――――――――――

〈名前〉フィルナンシェ

〈武器種〉片手盾

〈属性〉風   

〈品質〉特             

〈能力値〉+守38  

〈効果〉全属性耐性・小

―――――――――――――――


「全属性耐性…!?」

「ふむ… あの老いぼれもやりおるの」

「とはいってもガメドイには劣ってしまうのですがね」

「それでも十分すごいと思います

 そちらにマナを割かなくてよい分、攻撃に全力を注げますからね」

「だね… よし! このままレベル上げしちゃおう!」

「まぁそろそろ日も下るころじゃし、丁度良いかもしれんの」

「メギルさん、風鉄関所のレベルチェックは何レベルか知ってる?」

「えぇと… 確か45レベルのはずです」

「45じゃと!? 昔より5レベル上がっておるの…」

「ど… どうしましょう… 私たちは4人なので必要レベルは180…!」

「私たちは… 15、42、52でメギルさんが23だから… 132…」

「これは… もしかしたら常闇の森に帰って金・銀スライムを狩った方が

 早いかもしれないですね…」

「それでも足りないけどね…」

「メギル様は地国に行かれたことはありますか?」

「ないです…」

「となると徒歩になるのじゃ… さすがにそれは時間がかかりすぎるの…」

「この辺に湧かないのかな…」

「そんないろんな場所で沸いてたらわざわざ過去の冒険者が

 常闇の森に来ることはないですよ…」

「だよね…」

「となると冒険者協会で強敵討伐を探すしかないじゃろうな」

「強敵討伐… 前のウォーターゴーレムみたいなやつと戦うってこと?」

「そういうことじゃ」

「よし、そうと決まればマーレに急ごう!」


〈風国南〉

 ↓

〈マーレ正門〉


マーレは入る時から今までの都市とは一風変わった景色を見せた


「なんか門の形が今までとは違うね?」

「これはワーフル建築というものじゃ」

「ワーフル?」

「かつてどこの誰かもわからない人族が確立した建築方法じゃ

 他国は石造が主流なのに対してこの建築法は木造が主流で

 基本的に全ての建物が1階建てなのが特徴じゃ」

「その人族が名乗った名前がワーフルだから

 この建築方法名もワーフル建築といわれているのですよ」

「本当だ、高いのは真ん中と外周にある4本の塔だけだね」

「そうです、真ん中のものが八重塔、外周にあるのが五重塔です」

「なんだかおもしろい都市だね」

「じゃな… っと観光はあとじゃさっさと冒険者協会に向かうとするのじゃ」

「うん!」


挿絵(By みてみん)


地図→https://www.pixiv.net/artworks/111198929

次回は9月2日です

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