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依頼

朝早くからシュンシュン、トントンという音で目が覚めた


「ん… ナルディ?」

「あ! おはようございますサタナ様!」

「おはよ~ 朝から何やってるの?」


ムクりと起き上がって辺りを見回すと

近くのテーブルにはムニ肉のサンドイッチとモッコのサラダが置いてあった


「え… もしかして、ナルディが作ったの!?」

「はい! お口に合うとよいのですが…」

「すごーい! いただきます!」


ベットから飛び上がって勢いよく食べ始める

昨日から何も食べてないことも相まって一気に食べ進める


「おいしい!」

「本当ですか! それは良かったです!」


ほっと胸をなでおろし微笑むナルディ

本当にナルディの作った食事は

お店に並んでるものと遜色ないくらい美味しかった

既にナルディに胃袋をつかまれてしまったようだった


「ごちそうさまでした! 本当にありがとうナルディ!」

「いえいえ! これから毎日お作りしますね!」

「それはダメ!」

「え!? なんででしょうか…?」


私のよくわからない意見に半泣きの目で問いてくる

うっ‥ と言葉が詰まりつつもしっかりと考えを言った


「ナルディのご飯に問題があるわけじゃないよ!

 ただこういうことは私にもちゃんとやらせて欲しいの!

 ナルディだけじゃ不公平でしょ?」

「そんなことないですよ! 私は使役されている側なのですから!

 当たり前です!」

「それでもダメ! わかった?」


ナルディの手を取って顔をまっすぐ見ながらさらに念押して言うと

これ以上言っても無意味だと理解してくれたのかムスッとしながら


「分かりました… では明日はお願いしてもいいですか…?」

「まっかせて!」


〈宿屋ラミラ〉

 ↓

〈ルッカ中心街〉


お腹も落ち着き、ルッカの町を散策していると


「そういえば、なぜサタナ様は旅をしているのですか?」

「そっか話してなかったね、うーん少しだけ昔話に付き合ってくれる?」

「はい!」


近くのベンチに腰を下ろしてナルディに自分の過去について話し始めた


「私… 捨て子だったんだ

 それが分かったのは2年前の属性検査の時」

「サタナ様のご両親とは属性が違ったんですね?」

「うん、そういうこと

 だから、自分がどこで生まれたのか自分の本当の親は誰なのか…

 自分の知らない自分を知りたい! ってその時思ったんだ

 それで、自分の属性の『天』と関係がある天国に行きたいなって思ってるんだ」

「天国ですか… とても今のサタナ様では… その…」

「うん、それぐらいわかってるよ!

 ちゃんと準備して強くなってから向かうよ!」

「ということは、しばらくは地国に滞在するのですか?」

「そうだねー、まぁ今は目の前の問題を何とかしなきゃだしね」

「問題ですか?」


ナルディが不思議そうに聞いてくるので財布をひっくり返す

チャリンチャリンと音を立てて10ケル硬貨が7枚ベンチの上に落ちた


「なるほど…」

「だからお金稼ぎをしたいんだけど…」

「それなら冒険者協会に行きましょう!

 協会には冒険者が受けられる依頼があるって聞きました!」

「なるほど… よし、冒険者協会に行ってみよー!」


そうして元気に出発した私たちだった

しかしその元気さはすぐに失われることになった


「ひ… 広い…! 人が多い… 酔った…」

「大丈夫ですか…? サタナ様! もうすぐです! 頑張ってください!」


夜とは違って朝のルッカはとても賑わっていたので

都会に出たての田舎者状態になってしまった

ふらふらになりながらなんとか歩き進めていると

でっかでかと『冒険者協会』と書かれた看板が目の前に現れた


「ここです! 着きましたよサタナ様!」


〈ルッカ中心街〉

 ↓

〈冒険者協会〉


「お… お邪魔しまーす」


重い扉を開けると目の前の受付には竜人のお姉さんが立っていた


――――――――――――――――――――

〈名前〉ユラ・クハラ              

〈種族〉青龍族                 

〈属性〉風                   

〈レベル〉20                 

〈ミンラ〉風の中級魔法を操る          

〈職業〉受付嬢                 

〈能力値〉…                  

――――――――――――――――――――


「こんにちは! 冒険者協会へようこそ!」

「こんにちは、私たちお金を稼ぎに来たんですけど…」

「なるほど… 冒険者登録で良さそうですね?」

「はい! 多分そうです!」

「え? そうだったんですか?」


小声でナルディが聞いてくる


「わかんない… けど大丈夫だと思う!」

「わかりました! 少しお待ちください…」


そう言うとお姉さんは、自分の顔と同じか少し大きいくらいの水晶玉と

小さなカードを2つずつ持ってきた


「では、こちらの水晶玉に手を乗せてください!」

「こうですか…?」

「はい大丈夫です! ふむふむ…

 お名前サタナ・クライさん、年は17歳、属性は天

 ミンラはステータスを閲覧できる…!?」


急に大声を上げたかと思えばまっすぐに私を見つめながらこう言った


「冒険者… ならない方がいいです!」

「えぇぇぇ!?」

「サタナさんもご存じかと思いますが

 約500年前に天国がリウクスの大湖に落ちて以来魔物は軒並み強くなりました

 地国の魔物こそあまり強くなることはありませんでしたが

 天国が落ちたリウクスの大湖に近い炎国、鉄国は影響が大きく

 その辺りの魔物のレベルは平均して30程上がりました

 とてもサタナさんのミンラで旅に出るのは厳しいと思います…」

「大丈夫です! 私にはナルディもいますし!」

「そうですか… 確かにナルディさんは十分お強いようですが…

 分かりました! ただ…

 如何なる時も安全を十分に十・分・に! 確保してください!」


強く強く念を押してから私たちに冒険者カードを手渡してくれた

受け取ったカードの文字を読んでみると


――――――――――――――――――――

〈名前〉サタナ・クライ             

〈種族〉人族                  

〈属性〉天                   

〈レベル〉1                  

〈ミンラ〉ステータスを閲覧できる        

〈職業〉――                  

〈能力値〉体5・力8・守3・速7        

     知24・運10            

――――――――――――――――――――


なんだかんだ初めて見た私のステータスは

レベル1にしては知が少し高い以外は

可もなく不可もない普通のステータスだった


「ユラ様、私たちは依頼を受ける為にここを訪れたのですが

 どちらで受けることができますか?」

「あ、忘れてた…」

「お二方はお金を稼ぎに来たんでしたね

 それならあちら側の依頼ボードを見てみてください

 お二方のレベルに近い依頼がクリアしやすいと思いますよ」

「分かりました! ありがとうございますユラさん!」


ユラさんに教えてもらった依頼ボードを確認してみると

50を超える量の依頼が貼ってあった、しかし…


「ない! ないよ!」

「ないですね…」


レベル1の依頼が無い1番低くてもレベル5なのである

依頼を受けずに水国へと歩を進めることも考えたが

レベルが低い、お金も足りない、知識もないの3拍子が揃っているから

地国より魔物達のレベルが高い水国に行くのは

ただの自殺行為になってしまうと考えて諦めた


「もうこれを受けるしか…」

「私も手伝いますので頑張りましょう…!」

「うん…」


結局貼ってあるものの中で1番レベルの低い依頼を選びユラさんの元に戻った


――――――――――――――――――――

〈内容〉炎スライム2匹の討伐          

〈レベル〉5                  

〈場所〉地国北(クミル周辺)          

〈報酬〉50ケル                

――――――――――――――――――――


「これ受けます…!」

「はい! どれどれ… レベル5!? 大丈夫ですか…!?」

「だって… これが一番レベル低かったんです!」

「そ… そうでしたか… 本当に最近は低レベルの依頼が減りましたね…」

「やはり天国落下の影響ですか?」

「そうでしょうね… では改めて…

 サタナさんナルディさん頑張ってください!」


ポンッと依頼書にハンコを押して渡してくれた


「よーし! 行こう!」

「はい!」


挿絵(By みてみん)

地図→https://www.pixiv.net/artworks/108508902

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