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閉扉

二手に分かれた道の片方は地の魔石によって

茶色い光がぼわっと照らされており

道のもう片方は水の魔石によって青い光がキラキラと輝いていた


「どっちに遺跡があるか聞いておくべきじゃったな」

「遺跡が目的じゃなくて魔物を調べに来たんだけど…?」

「ここまで来たんだし行くべきじゃろ!

もしかしたら闇地のひんとが得られるのかもしれんのじゃぞ?」

「そうなのかな…?」

「なんにしたってどちらかには進まなくてはならんのじゃ

ほれサタナとっとと選ぶのじゃ」

「え、私なの!?」

「逆に誰が選ぶというのですか?」


2人からそう迫られてしまったので適当に右を選ぶことにした


「何があっても文句言わないでよ…?」

「当たり前じゃ、所詮運なんじゃからの」

「そういえばサタナ様、魔物の記述の方は順調ですか?」

「うん! とは言っても洞窟蜘蛛と洞窟蛇しかいない

 一般的な洞窟に住み着く魔物だけなんだけどね」

「ですね、特段珍しい魔物は見かけていない気がします」

「じゃな、遺跡があるとか言うておったから

 珍しい魔物が見れるかもと思って楽しみにしておったんじゃがな」


残念そうに転がってる小石をころころと蹴りながらサリさんがそう言った


「楽しみなの!? 私はなるべく平和に行きたいよ…」

「同感です… っと、そんなこと言ってたら

 本当に珍しいのがやってきましたよ…」


―――――――――――――――――――――

〈名前〉ウォーターゴーレム

〈種族〉ゴーレム族

〈属性〉水

〈レベル〉20

〈ミンラ〉地の中級体技を扱う

〈職業〉――

〈能力値〉体115・力129・守107

     速7・知0・運10

―――――――――――――――――――――


「ウォーターゴーレム…! かなりの強敵が現れたもんじゃな…」

「ゴーレム族って結構危険な種族じゃなかった!?」

「その通りです…! リウクス三強の一角です!」

「やっぱり…!?」


『ウォーターゴーレムが現れた!』

『ウォーターゴーレムの中地体技(ケドインガの拳)

 弱点!サタナに21ダメージ!』


「痛い! ガメドイ使う前に先制攻撃なんて卑怯だよ!」

「じゃから魔物に何を言うても無駄じゃって」

「サタナ様から離れなさい!」


『ナルディの初風息吹(ルフトブレス)

 弱点!ウォーターゴーレムに27ダメージ!』

『サタナの中天魔法(ミルイルエ)

 弱点!ウォーターゴーレムに22ダメージ!』


「固っ!?」

「守100越えは伊達ではないですね…!」

「よし、儂も手伝うのじゃ!」

「え…? 洞窟崩落とか勘弁してよ!?」

「失敗したらごめんなのじゃ! ゼシク!」


『サリのゼシク!

 ウォーターゴーレムの守が24下がった!』


「え!?」

「成功したのじゃ! 今じゃ!」

「うん!」

「はい!」


『ナルディの初風息吹(ルフトブレス)

 弱点!ウォーターゴーレムに41ダメージ!』

 

「さっきより攻撃が入ってます…! サタナ様!」

「任せて! ミルイ…」


魔法を放とうと攻撃態勢をとって呪文を唱えようとしていると

ウォーターゴーレムの拳が地中から私の体を突き上げた


『ウォーターゴーレムの中地体技(ケドインガの拳)

 弱点!サタナに19ダメージ!

 サタナは倒れた!』


・・・・・・


「サ… サタナ様!」

「サタナ!」


サタナ様の小さな体はウォーターゴーレムの拳によって

天井ギリギリまで打ち上げられ、瀕死を示す『声』が聞こえた


「サタナ様が…!」

「落ちる前に抱えてくるのじゃ! ルフト!」


サリ様の魔法によって少しだけ浮き上がったサリ様の体を

急いで抱えてサリ様の元に走って戻った


「ど… どうしましょう…!」

「落ち着くのじゃ、こやつはまだ死んだわけじゃない

 ナルディよ、蘇生魔法は使えるかの?」

「いいえ… 龍族は瀕死になることが滅多にないこともあって

 過去に教えられませんでしたし覚えませんでした…」

「じゃよなぁ… 一旦あの泥人形風情を粉砕してくるのじゃ

 儂は急いで回復薬を家からとってくるのじゃ

 サタナにはガメドイを張っておくからの、安心するのじゃ」

「分かりました… サタナ様の痛みを何十倍にして返してやります!」

「うむ、頼んだのじゃ」


そう言ってささっとガメドイを張った後にルフドイで移動していった


「サタナ様はここで休んでおいてくださいね…」


気絶しているサタナ様に聞こえているはずない言葉をかけて

立ち上がろうとすると袖を後ろに引っ張られた


「ナ… ル…」

「サタナ様…!? 喋っちゃだめです! おとなしくしててください!」


しゃがみ込んでサタナ様にそう言い聞かせていると

サタナ様は私のペンダントに触れた

その瞬間、ペンダントに埋め込まれた地の魔石の色はたちまち

白くなって魔石本来の明るさの何倍もの強さで輝いていた


「いったい何が…?」


再びサタナ様の方を見ると既に意識は無いようだった

その場を後にし、自分よりも何倍も大きなウォーターゴーレムに対峙する


「覚悟してください! はぁぁぁ!!」


ルフトブレスを放ったはずが自分の目に映ったのは

緑色のブレスではなく真っ白なブレスだった


『ナルディの初天吐息(ミルイルブレス)

 弱点!ウォーターゴーレムに47ダメージ!

 ウォーターゴーレムは倒れた!』


ウォーターゴーレムが倒れたのを確認し

自分のペンダントを再確認したが既に真っ白な魔石は地の魔石に戻っていた


「あれ…?」

「戻ったのじゃ! どうじゃ、倒せたかの?」

「あ、はい! ばっちりです!」

「こっちもばっちりじゃ! サタナの状態はかなり安定しているのじゃ」

「よかったです… 一旦引き返しますか?」

「ふむ… サタナ次第じゃが… っと心配しなくてもよさそうじゃな」

「う… いってて…」


・・・・・・


「あれ… どうなったんだっけ…?」

「サタナ様…! 本当に良かったです…!」

「ナルディ!?」


ナルディは私の胸元で大号泣していた

その姿はいつもの頼もしさを一切感じさせず

それどころか幼さを感じるようだっただった


「よしよし… どうしたの…?」


ナルディの頭をなでながら状況があまり分からずに困惑する


「お主… 死にかけていたんじゃぞ?」

「死に…!? あ… ゴーレムの一撃をもろに喰らったときか…」

「主人が死にかけて落ち着いているなんてナルディも意外と薄情じゃな

 なんて思っておったがそんなことはなかったみたいじゃな」

「当り前ですよ…」


顔を涙でくしゃくしゃにしたナルディがサリさんに反論する


「こんな一件もあったことじゃし

サタナには瀕死と死亡の違いを教えておくのじゃ」

「お願いします!」

「瀕死はさっきのサタナの状態じゃ、かすかに意識、息がある

 しかしほんの少しの衝撃で死亡に至るような状態じゃ

 死亡は完全に意識、息がない状態じゃ

 こうなってしまうと蘇生魔法や回復薬は使えんのじゃ」

「なるほど… 意外と危なかったんだね」

「意外とどころかものすごく危ない状態じゃ…」

「ともかく助かってよかったです… 本当に…!」

「落ち着いた?」

「はい…」


私の容態もナルディの涙も落ち着いたところで

洞窟の先に進むことに進んでいくことにした


「そういえばサリさん、さっきのあれってなに?」

「なんのことじゃ?」

「ウォーターゴーレムの守を下げたやつ!」

「あぁ、あれは今儂が研究している『状態変化魔法』じゃよ

 名前の通り対象のステータスを一時的に変えるものなんじゃが…

 安定しない、成功しない続きでよくわからんのじゃ」

「そうなんだ… でもそれが安定して使えるようになったら強いね!」

「もちろんじゃ! ガラべドロにこの魔法を全てかけて

 完全に無力化させたところを少しずつ叩くのが儂の夢じゃ…」

「ひぇ…」

「サタナ様! 遺跡ってあれじゃないですか?」


ナルディが指さす先には石で作られた扉らしきものが見えていた


「絶対これだ! でも…」

「閉じているのじゃ… 破壊するしかないかの?」

「待ってください! ここに何か書いてありますよ!」


閉じられた扉の近くの石碑には何やら文字が書かれているようだった

もちろん全く読めない文字で書かれていた


「えぇっと… 『汝、――であることを示せ。条件は次の通りだ。』

 だそうです…?」

「ふむ… つまりこれらが条件じゃな? 『白黒の龍・神級術5色』

 なんじゃとぉぉぉ!?」

「どうしたの!?」

「神級術… これが神級攻撃を示しているのだとしたら…

 この扉は一生開くことはないのじゃ…!」

「神級攻撃ですか!?

 神級攻撃といえば、5神のみが有する魔法ですよね!?」

「そうじゃ、しかもそれを5属性…

 万一、どこかの守護神が手伝ってくれることになっても足りんということじゃ…」

「鬼畜条件すぎるよ…」

「ちなみに破壊はできそうですか?」

「先は笑い話で言うたが無理じゃ…

 儂の全力イデガラームでも傷がつくか怪しいのじゃ」

「えぇ…? もう無理じゃん…」

「もう一つのほうの白黒の龍は

 恐らく天龍と虚龍を示しているのでしょうか…」

「なお無理じゃん!」

「はい、天龍はとっくに潰えていますし

 虚龍はあのガラべドロだけですからね…」

「ますますこの遺跡の中が気になるの…」

「そうはいっても流石に何も出来なくない?」

「ですね… 記録だけ残して冒険者協会に戻りましょう」

「残念じゃ…」


後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした


〈クスロ洞窟〉

 ↓

〈クスロ平原〉


ようやくあの長い縦穴を登りきり外に出ると

当然のように辺りは真っ暗だった


「やってしまいました…」

「あちゃ… もう真っ暗だね

 でもルフドイで帰ればさほど問題もないと思うけど?」

「使えないのじゃ」

「へ?」

「ルフドイは元々マナの流れに沿って光速で移動する魔法じゃ

 つまり魔物がほとんどのマナを吸収し尽くしてしまう夜には使えんのじゃ」

「ってことはこの数を相手しながらネラルに帰らなきゃいけないの?」

「ケミシラでいいじゃろて、とはいえかなり危険は付きまとうのじゃ」

「さっき『マナを吸収し尽くす』って言ってたけどもしかして…」

「そうじゃ儂等は攻撃手段がないのも同然じゃ…

 体に貯蓄してあるマナを使い切れば…」

「逃げるしかないってことですね」

「じゃから夜は嫌なんじゃよ…

 誰か通常攻撃に長けた仲間を用意するべきじゃな…」

「ですね…」

「じゃ… じゃあナルディで飛ぶのは?」

「なぜ空中に魔物がいないと思っておるのじゃ」

「うっ…」


そんな絶望的な話をしていたが辺りを見回しても

魔物らしき姿は確認できなかった


「もしかしてこの平原内なら安心じゃない?

 地上に出てたやつは来た時にサリさんが倒し切ったみたいだし」

「確かにクスロ平原は魔物が住まわない土地じゃが…

 流石にあの洞窟があるから何とも言えんの…」

「確かに平原外に出るよりかは安全ですかね…」

「じゃな、では仮拠点でも作ってみるかの

 それなら幾分かは安心できるはずじゃ、2人とも手伝ってくれるかの?」

「うん!」

「はい!」


そう言ってサリさんはローブから布製のテントを取り出した


「それってそんな大きなものも仕舞えるの…!?」

「サタナ、ガメドイをこれに沿って張って欲しいのじゃ」


張られたテントを囲う様に描かれた円を指し示しながら言った


「でも私のはせいぜい30分しか持たないよ?」

「わしも手伝うから大丈夫じゃ、頼んだのじゃ!」

「わかった! ガメドイ!」

「今じゃナルディサタナにマナをあるだけ送るんじゃ!」

「はい!」


ナルディの助けもありなんとか少ないマナでガメドイを張り切る


「よし、それじゃ寝るのじゃ」

「え? 属性つけないの?」

「当り前じゃ、サタナは襲撃者の属性がわかるのか?

 何かの属性を張っておくと必ず弱点が生まれるのじゃ」

「つまり属性魔法を張らなければ

 少しだけでも全属性の抵抗を得られるということですね?」

「そうじゃ、わかったらとっとと寝るのじゃ

 明日は朝一で冒険者協会に帰るのじゃぞ!」

「うん!」


サリさんに急かされながらテントの中に入って休息をとった


挿絵(By みてみん)


地図→https://www.pixiv.net/artworks/110976744

次回は8月20日です

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