表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/57

隠所

「作るって… 武器を?」

「そうじゃよ? サタナが言うたとおり

 あのような古い本に書かれているものが売ってるはずないからの」

「まぁ普通に考えてそうですよね」

「じゃろ、こういう時は自作するに限るのじゃ!

 儂のクロ―デアも特注品(オリジナル)じゃから安心するが良い!」

「作るのはわかったけど、どこで作るの?」

「一旦儂の家に戻るのじゃ、そこで話を進めるのじゃ」

「サリさんの家?」

「そうじゃ、行くのじゃ! ルフドイ!」


『サリの転移魔法(ルフドイ)

 ケミシラ大通り→サリの隠れ家』


転移される気満々だった私とナルディは未だケミシラ大通りにいた


「あれ? 失敗したのかな? もう夜になるところだし」

「でも、サリ様はいないですよ…?」


何が起こったのか分からず混乱していると再びサリさんが現れた


「そうじゃったそうじゃった

 ルフドイは過去に転移先に行ったことのある者にしか使えんのじゃったな」

「そうだったんだ、流石にそこまで便利なわけじゃないんだね」

「それでは歩くとしましょうか」


〈ケミシラ〉

 ↓

〈水国東〉


水国東は水国西と違い辺りには風属性の魔物が少し混ざっており

風国方面からは常に強風が吹き荒れていた


「風強いね…!」

「風国から迷惑な風が吹いておるんじゃよ…

 おかげでこの辺はあまり人がおらんのじゃ」


吹いてくる向かい風を受けながら歩き進めていくと

近くの草むらから風スライムが飛び出した


「こんな状況で戦うの!?」

「吹き飛ばされんように気を付けるのじゃよ!」


『風スライムA,B,Cが現れた!』


――――――――――――――――――――

〈名前〉風スライム

〈種族〉スライム族    

〈属性〉風        

〈レベル〉14  

〈ミンラ〉風の初級魔法を操る 

〈職業〉――      

〈能力〉体34・力18・守51

速11・知32・運17      

――――――――――――――――――――


「って… レベル高くない!?

 14って、前戦ったメガ水スライムくらいあるんだけど!?」

「水国は地国より天国に近い分、天国落下の影響が大きいからの…

 魔物の強さの上がり方もこれから先はさらに跳ね上がるのじゃ…」

「そうですね、風国の鉄国側では40レベルほどの魔物を見かけました…」

「あの辺はもとより30レベルすら超えないはずじゃが…

 思ったよりも影響の広がりは速くなっているようじゃな…」

「地国にいたからあんまり知らなかったけど、魔物って危険なんだね…」

「当たり前じゃぞ!?」

「サタナ様! サリ様! 来ます!」


『風スライムAの初風魔法(ルフトロ)

 弱点!サタナに9ダメージ!』


「お返しだよ! ミルイルエ!」


『サタナの中天魔法(ミルイルエ)

 弱点!風スライムAに55ダメージ!

 風スライムAは倒れた!』


「よし…!」

「サタナ! 頭を下げるんじゃ!」


サリさんに言われて身をかがめるとサリさんは私の方に魔法を放った

放たれた火球は頭上すれすれを飛んでいく


『サリの中炎魔法(イデガラン)

 風スライムBに71ダメージ!

 風スライムBは倒れた!』


火球は自分の真後ろで爆発し、痕には風スライムが倒れていた


「サリさん! ありがとう!」

「戦いの場で油断は良くないのじゃ!」

「うん…! ナルディは大丈夫そう?」

「もちろんです!」


と言う声と同時に少し離れたところで爆発音が聞こえた


『ナルディの全鉄魔法(ガメル)

 弱点!風スライムCに38ダメージ!

 風スライムCは倒れた!』


「ふぅ… これで倒しきったかな?」

「そうですね…」


そう言ってナルディは手元に出していたガメルを握りつぶした


「どうかした?」

「いえ! 何でもありません!」

「そう?」

「何を話しておるんじゃー? はよう来るんじゃー!」


ナルディと話していたらサリさんに随分と置いて行かれてしまっていた

サリさんを目指し風に逆らって少しずつ歩を進めた


〈水国東〉

 ↓

〈サリの隠れ家〉


「着いたのじゃ!」

「え、ここ?」


目の前には木が在った、本当にただの木だった

普通と違うことと言えば枝に縄梯子がかかっていることくらいだった


「こ… この木ですか?」

「そうじゃ、こんな風じゃとまともな家すら建てられなくての…」


ぶつくさ文句を言いながら枝にかかっている縄梯子を上っていく

奇妙なことに辺りには強風が吹いているはずなのに

風を全く肌身で感じることはなく縄梯子は少しも揺れていなかった


「ほれ、来るのじゃ」

「う、うん!」


サリさんの後に次いで梯子を上ると木の上には生活空間が広がっていた

広さは私たち3人が寝転んでも半分いかないほどでかなり広く

床一面には難しい言葉が書かれた書類や何本もの試験管が散らばっており

部屋の奥の方には合成鍋よりは一回り小さいくらいの鍋が2つあるという

いかにも研究者の部屋という感じであった


「すごい!」

「ようこそわが家へ! ここに招待した客人はカルロッテ以外初めてじゃ!

 後世まで自慢できることじゃぞ!」

「お部屋ももちろんすごいんですが…

 下にいたときから思っていたのですが、風が入ってきてないです…?」

「多分ガメドイだよね?」

「正解じゃ! ただ常駐させる分かなり狭くなってしまったんじゃがな」

「これで狭いって…」


改めて部屋を見回すと近くの机の上には写真が飾られていた

見たところとても古い写真で写っているのはサリさんと男性だった


「この写真の人って…」

「それがクラウディオ先生じゃよ、儂の師であり全魔法の開発者じゃ!」

「聞き覚えがあった気がしましたが… この写真で確信しました…

 クラウディオ・デアウラ・ボーラティアですよね

 あの全魔法を開発した…」

「結構昔の話じゃのに良く知っておるの」

「これでも長命種の1つですからね」

「丁度この写真は先生が全魔法を完成させて

 儂が複合魔法を完成させたときの授賞式の写真じゃ」

「サリさんっていったい何者なの…!?」

「そんなどうでもいいことは放っておくのじゃ

 それよりナルディの武器じゃろ?」

「どうでもいいことではないような気がするんだけど…」

「それでナルディよ、儂からの提案なんじゃが」

「どうかしましたか?」

「お主… 魔法を使うのを止めてみたらどうじゃ?」

「え!?」

「やはりサリ様もそう思いますか…」


突然すぎるサリさんの提案にナルディはまるで当然だというように返事した


「お主のステータスを見たらそう考えるのも無理はないのじゃ

 今は力が143知が53じゃろ?

 ここまでステータス差があるのに魔法を使うのには理由があるのか?」

「そんな大きな理由でもないんですが…」


ナルディはあまり話したくないのか少し話すのをためらった


「話してみるのじゃ」

「はい… 私も昔はほかの龍族と同様に物理攻撃を使って

 近接戦を中心に戦いを学んでいたのですが

 ミンラを得た後、まだ制御に慣れていなかったころ

 戦っている魔物に近づくと勝手に相手の言葉が聞こえてきてしまって…

 その時に魔物達の悲鳴やらを聞いて以来トラウマなんです…

 今では聞こえることはないはずなのですが、やはり怖くて…」

「それは… 怖いね…」


過去にナルディのミンラを褒めたときにあまりうれしそうではなかった

ナルディを思いだし、自分の無知さを疎ましく思った


「なるほどの… それではブレスはどうじゃ?

 龍族の使用者は多いはずじゃが?」

「あ、それならできるかもしれません!」

「でもブレスって速のステータスで威力変わるんじゃなかったっけ?」

「そうでした…」

「まぁ75じゃから十分だと思うんじゃが…

 試せばわかるはずじゃ! 行くぞ!」

「待って下さい!」

「あ、待って!」


さっさと出ていこうとするサリさんを追いかけようとすると

サリさんに部屋の中に押し戻された


「サリさん?」

「サタナはここの掃除じゃ! 任せたぞ!」

「え… え!?」


そう言い残すとサリさんはあっという間にナルディを連れて行ってしまった

私はと言うとサリさんの部屋の片づけを任されてしまったため

大人しく掃除をして2人の帰りを待つことにした


「こうやって見て回るとサリさんはやっぱり研究者なんだな…」


床に散らばっていた書類を拾い集め、奥の戸棚に仕舞おうとすると

戸棚の戸を開いた瞬間に雪崩が起こった


「な… ななっ… なにごと!?」


中からはさらなる書類や本などが大量に転がってきてしまい

辺りはさらに散らかってしまった

落ちてきたものを頑張って拾い集めようとすると

その中には書類とは別にいろいろな物が転がっているのに気が付いた


「これは… メダル? こっちはバッジ… じゃなくて勲章!

 これもただの書類じゃなくて賞状だ!」


100年以上前の物から数年前の物まで本当にいろいろあった

内容も研究の賞状から戦争の勲章まで様々だった


「聞いてはいたけど… こうやって本物を見ちゃうと…

 余計恐ろしいというか… 尊敬というか…

 じゃなくて! 余計汚しちゃった! 早くしないと!」


挿絵(By みてみん)


地図→https://www.pixiv.net/artworks/110573451

次回は8月12日です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ