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合成

〈宿屋クォレム〉

 ↓

〈ケミシラ大通り〉


宿を出てカルロッテさんと別れた後、私たちは市場を物色していた

サリさんは私たちの前をスキップしながら進んでいた


「とりあえず元気になったみたいで良かった!」

「ですね、一時はどうなってしまうかとひやひやしました…」

「そうじゃ!」

「突然どうしたのサリさん?」


サリさんは私たちのほうまで戻ってきてこう続けた


「武器を整えるのじゃ!」

「武器… これがあるよ?」


腰元のポーチからナイフを取り出して構えて見せた


「別に悪いとまでは言わないのじゃが…

 お主は基本魔法で戦うじゃろ?

 力が上がるナイフでは少々相性が悪いと思うんじゃが…」

「でも… これお父さんからもらったものなんだ…」

「なるほどの… 父上のものじゃったか…」

「それなら合成してみるのはどうですかね?」

「ごーせい?」

「おぉ! 名案じゃなナルディ!」

「はい! 合成と言うのはその名の通り何かと何かを掛け合わせて

 元のものを強化することです!」

「その通りじゃ、儂のクロ―デアも合成の産物じゃ!」

「へぇ… それってどうやるの?」

「合成職人に頼むのが一番早いですね」

「じゃな、儂が世話になっている工房があるからそこを訪れてみるかの」


〈ケミシラ大通り〉

 ↓

〈ゴーボア工房〉


サリさんに案内されて小さな二階建ての建物に入る


「ゴーボア! 居るかの?」

「居るっす! サリの姉貴!」


奥の階段から男性がどたどたと音を立てながら降りてきた


「客のいないお前の店に客を連れてきてやったのじゃ!」

「彼は?」

「あっしはゴーボア・ベゲト! 合成職人してるっす!」


―――――――――――――――――――――

〈名前〉ゴーボア・ベゲト

〈種族〉人族

〈属性〉水

〈レベル〉13

〈ミンラ〉金属の良し悪しが分かる

〈職業〉合成職人

〈能力値〉――

―――――――――――――――――――――


「サリの姉貴! 本当に久しぶりっすね! 今日は何用っすか?」

「こやつの武器の合成を頼みたくたいのじゃ」

「こんにちは、サタナ・クライです」

「よろしくっす!」


ゴーボアさんは私の手を取ると大きく振った


「早速になるっすがどれとどれを合成するっすか?」

「待て待て、サタナは合成が何かほぼ分かっておらんからの

 最初から説明してほしいのじゃ」

「お願いします!」

「分かったっす! まぁ見せながらの方が分かりやすいと思うから…

 姉貴! 何かちょうどいい武器持っていないっすか?」

「ふむ… クロ―デアを強化したいと思ってたからの…

 この弓を使うといいのじゃ」


―――――――――――――――

〈名前〉フォーミア  

〈武器種〉弓     

〈品質〉特             

〈能力値〉+知44 +速21  

〈効果〉――

―――――――――――――――


「分かったっす! 聞く必要はないと思うっすが…

 クロ―デアを主とする形で大丈夫っすよね?」

「うむ! それで頼むのじゃ!」

「主?」

「主っていうのは完成品の見た目になるほうの武器の事を言うっす」

「ってことは(フォーミア)を主としたら…」

「完成品は(フォーミア)の形になるっす!」

「なるほど…」

「とりあえずやって見せるっすね!」


そう言ってゴーボアさんは工房の奥にあった大きな鍋に火をかけた


「これは?」

「合成釜っす、まずこん中に入ってる合成液と素材を混ぜるっす」


そう言って鍋の中にフォーミアを投げ入れる

しばらくしない内に合成液の色は紫から

フォーミアの綺麗なエメラルド色に変わった


「綺麗…!」

「本題はここからっす!」


そう言って釜の底の方についていたコックをひねると

緑色の液体が下の受け皿のような部分に溜まっていく

釜の中の液体はいつの間にか紫色に戻っていた


「これで、素材と合成液が混ざった液体の完成っす!」

「これをどうするの?」

「見ててほしいっす!」


―――――――――――――――

〈名前〉クロ―デア  

〈武器種〉両手杖     

〈品質〉特             

〈能力値〉+知67  

〈効果〉炎魔法の威力上昇・大  

―――――――――――――――


ゴーボアさんはサリさんからクロ―デアを受け取り

それを受け皿に溜まった液体に沈めた

しばらくして液体の中からクロ―デアを取り出す


「次にこいつを叩くっす!」


ハンマーを取り出しクロ―デアを叩き始める

辺りにはカンッカンッという金属と金属がぶつかり合うような音が響いた


「これで完成っす!」


―――――――――――――――

〈名前〉――  

〈武器種〉両手杖     

〈品質〉特             

〈能力値〉+知75  

〈効果〉――  

―――――――――――――――


「おぉ…?」


目の前にはてっぺんに炎の魔石が付いているだけの木の杖が置かれていた

それはクローデアとは程遠い質素な見た目だった


「ありがとうなのじゃ!」

「へへっ!」


ご満悦のサリさんと褒められてうれしそうなゴーボアさんだったが

その一方でまだよく分かっていない私がいた


「質問!」

「なんっすか?」

「武器の見た目が全然違くない?」

「姉貴… 説明してないっすか?」

「忘れておった!」

「1から説明するっす、武器には2種類あるっす

 1つ目は市販品(レプリカ)っす、その名の通り大量生産がされている武器の事っす

 こっちは普通に安くて使いやすいのがメリットっす

 2つ目は特注品(オリジナル)っす、こっちは自作された武器の事っす!

 こっちには名前を付けることが出来るっす

 今回の場合はクロ―デアが元々特注品っすから

 名前を付けることが出来るっす!

 ちなみに名前は合成を挟むと消えるっす

 だからその時に名前を変える人もいるっす」

「市販品を合成しても名前は付けられないんだ…

 って名前の話は全然関係なくない…?」

「サタナ様! それが一番重要なんですよ!?」

「え… そうなの…!?」


ナルディの発言で余計混乱してしまったところにサリさんが声をかけてきた


「まぁ、見ているのじゃ!」


杖を机の上に置きサリさんがマナを込めながら呪文を唱え始める


「我が杖よ、今からお前の名はクロ―デア! 我が力となり我を助けよ!」


言い終わると杖は輝きだした


「わっ…!」

「眩しい… です…!」


しばらくして光が収まると元の質素な杖はかなりの変化を遂げていた

杖全体には頭につけられたものと同じ魔石が散りばめられ

杖自体が纏っているマナの量が格段に増えたのを感じた


―――――――――――――――

〈名前〉クロ―デア  

〈武器種〉両手杖     

〈品質〉特             

〈能力値〉+知82  

〈効果〉炎魔法の威力上昇・大  

―――――――――――――――


「仕組みもわかってもらえたところでサタナの武器もやろうっす!」

「うん! って言いたいけど… 武器をもう1つもってないや…」

「そうっすか… サタナが使おうとしている1つ目の武器はどれっすか?」

「このナイフ何だけど…」

「なるほど… サタナはこれを主として合成しようとしているっすか?」

「そうしたいんだけど、私は魔法をメインで使うから

 力が上がるナイフはあまりお勧めしないって…」

「まぁそうっすね、魔法を使うときにお勧めの武器種は…

 杖や魔剣、魔導書などっすね、こんなやつっす」


そういって奥の戸棚からいろんな種類の武器を取り出しては

順々に机の上に並べていく


「こん中から好きなのを選ぶっす!

 これからしばらく使うことになるっすから慎重に選ぶっすよ!」

「え… いいの!?」

「サービスっす!」

「ありがとう!」


ゴーボアさんが並べてくれた武器を1本1本慎重に見ていく


「杖ってやっぱりかっこいいよね…!」


杖を1本とってサリさんのポーズを見よう見まねで取ってみると

サリさんは大興奮で話始めた


「じゃろ!? サタナには元々合うと思っておったのじゃが… 

 やっぱり儂の思った通りじゃった! サタナも杖使いになるのじゃ!」

「どうしよう… でも魔剣もいいよね、カルロッテさんが使ってた大剣

 かっこよかったんだよね!」


魔剣の片手剣と大剣のうち大剣を手にとって構えてみるとその重さに驚いた


「カルロッテさんはこんな重さのものを振り回してたの!?」

「サタナ様の小さな体に大きすぎる剣… とても良いと思います!」

「それ褒めてるの…?」

「はい! それはもちろん!」


ナルディに向けて不信な目を送りながら最後に魔導書を持ってみる


「これはどう使うの?」

「魔導書は魔法を保存して使う武器じゃ」

「魔法を保存!?」

「そうじゃ、それも使用者のセンスによってはミンラを持っていなくても

 初級以上の魔法をも使えるようになるのじゃ!」

「ミンラが無くても!?」

「ミンラが無くてもじゃ」

「それなのになんでみんな使わないの?

 街中でも杖とか魔剣は見かけたけど魔導書は見かけなかったよ?」

「魔導書は自我を持つから扱いがむずいんっすよ」

「武器なのに!?」

「もちろん喋ったりするわけじゃないっすが

 使用者を主と認めないとそもそも魔法を保存してくれなかったり

 使用者にマナを供給しないって感じで散々なんすよ

 だから使用者はほとんどいないってことっす

 持ってはきたっすが、サタナにはおススメはできないっすね…」

「そっか… ってなに!?」


突然持っていた魔導書が輝き始め、辺りを明るく照らした


挿絵(By みてみん)

地図→https://www.pixiv.net/artworks/110344379

次回は7月30日です

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