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魔杖

冒険者協会の看板はボロボロで扉は半壊していた

あまつさえ中からはお酒の匂いと喧嘩の声が聞こえてきているときた


「な… なにこれ…」

「なんじゃ? 何か珍しいものでもあるかの?」

「水国の冒険者協会ってこんな感じなの…?」

「そうじゃが… そうか地国の冒険者協会は綺麗じゃからの」

「綺麗、汚いの差じゃなくない!?」

「ま… まぁとりあえず入ってみましょう…?」

「そうだね…」


ナルディに促されて協会の中に入ると中は地国の冒険者協会のように

エントランスがあったりするわけではなく酒場のような手前に椅子と机

奥にカウンター、立っているのは筋骨隆々の大男といった様子だった


「らっしゃい!」

「こ、こんにちは!」

「見ない顔だな、新しく来たのか?」

「はい!」

「それなら、自己紹介して冒険者カードを渡してくれ」

「わかりました! 私はサタナ・クライです!」

「こんにちは、デーケ様、私はサタナ様の従者ナルディ・ロフです」

「サリ・ドランじゃ!」


私たちが自己紹介して、カードを渡すと大男は目を丸くして言った


「お前らが客が噂してた冒険者か! ただ、そのちっこいのは知らねぇな…」

「ちっこいとはなんじゃ! これでもお主の何倍も生きておるんじゃぞ!」


サリさんが口を大きく開けてゲーテさんに反論した


「悪い悪い、俺はデーケ・ギラだ」


――――――――――――――――――――

〈名前〉デーケ・ギラ    

〈種族〉人族     

〈属性〉地     

〈レベル〉33    

〈ミンラ〉地の中級剣技を扱う 

〈職業〉酒場(冒険者協会)の主人  

〈能力値〉――    

――――――――――――――――――――


「ギラってどこかで… あっ! ガーラさんの家族なんですか?」

「あぁ、ガーラは俺の弟だが、なんだあいつと知り合いなのか?」

「うん! ガーラさんのお店でご飯食べたことあるよ!」

「そうか! あいつの飯は上手くて俺もよく… 

 っと話を戻そう、今日は何用で来たんだ?」

「依頼を受けに来ました」

「そうか、お前らのレベルだと… この3枚だな」


デーケさんは木箱から紙を3枚取り出して見せてくれた

 

――――――――――――――――――――

〈内容〉ドロガエル10匹の討伐

〈レベル〉16 

〈場所〉水国北(ケミラル河中流)

〈報酬〉120ケル  

――――――――――――――――――――


「これは… ドロガエルの討伐だな」

「ドロガエル?」

「ドロガエルっつーのはな、普通のカエルよりも何十倍もデカいカエルでな

 デカいだけじゃなくて力も強くて、食料を求めて街を攻撃するわ

 川に飛び込むときの衝撃で高波が起こるわで

 おそらく、いや確実に水国で1番嫌われている魔物だ」

「サタナ様… この依頼は止めましょう! そうしましょう!」


ナルディが私の服の裾を握り首を必死に横に振って拒否の姿勢を示す


「あ、うん、わかったよ」


――――――――――――――――――――

〈内容〉サルエ20匹の納品  

〈レベル〉13    

〈場所〉水国南(ケミラル河西河口) 

〈報酬〉110ケル  

――――――――――――――――――――


「サルエ…?」

「サルエはケミシラの市場で良く取引されておる魚じゃ!

 水国全域で食べられておる魚での

 生でも焼いても煮てもうまい最強の魚じゃ!」

「ふぅん? 要するに魚釣りってこと?

 とてもレベル13も必要に思えないんだけど…?」

「それがな、そいつの顎が馬鹿みたいに強いんだ」

「顎?」

「あぁ、釣り針、網は一瞬で壊されるからな…

 戦って弱らせた後に手で捕まえる必要があるんだ」

「なるほど…」


――――――――――――――――――――

〈内容〉クスロ洞窟の探索 

〈レベル〉20  

〈場所〉水国西(クスロ平原東) 

〈報酬〉200ケル 

〈備考〉洞窟内部の魔物の調査

――――――――――――――――――――


「へぇ、あの平原に洞窟なんてあったんだ」

「最近新しく見つかった洞窟らしくて

 研究のために探索を変わってほしいそうだ

 悪いが俺も詳しいことはわからん」

「ねぇ、デーケさん、依頼を2つ受けることってできる?」

「あぁ問題ないぞ?」

「じゃあ、2つ目と3つ目の依頼受けるね!」

「おぉ… やる気満々じゃな…!」

「頑張りましょうサリ様!」

「2人とも… 良いかな?」

「もちろんです! サタナ様が決めたことですから!」

「じゃな!」

「よし、それじゃあよろしく頼んだぞ!」


そう言って、デーケさんはポンッと依頼書にハンコを押して渡してくれた


「ありがとう! 行ってきます!」

「そうだ、洞窟に行って死に物狂いで帰ってきたやつ曰く

 洞窟内部には人工物らしきものがあったらしい

 そんな噂から巷ではクスロ遺跡だなんて言われているんだ」

「クスロ遺跡…」

「まぁなんにしたって気をつけろよ!」

「うん!」


〈水国冒険者協会〉

 ↓

〈ネラル中央広場〉


すぐ向かうにしても準備があまり整っていないこともあり

ネラルの広場も少し回って準備をしてから出発することにした


「そういえばサリさんってさ」

「なんじゃ?」

「杖? とかっていらないの?」

「また唐突じゃな?」

「だって、魔法使いって杖とか持ってるイメージなんだもん!

 ね、ナルディ?」

「そうですね、本などの挿絵に出てくる魔法使いは

 大体杖を背負っていたような気がします」

「持っていないわけじゃないんじゃが…」


そういうと、サリさんはローブの中から

ナルディの背丈ほどはあるであろう杖を取り出した


「こいつが儂の杖、クローデアじゃ

 炎魔法の威力を底上げしてくれる優れものなんじゃぞ!」


『閲覧可能ステータスに〈武器種〉、〈効果〉が追加されました』

―――――――――――――――

〈名前〉クロ―デア  

〈武器種〉両手杖     

〈品質〉特             

〈能力値〉+知67  

〈効果〉炎魔法の威力上昇・大  

―――――――――――――――


謎の声が久々に聞こえた

おそらくこの声は「他人から」、「新しいステータス」を教えてもらった時に

知らせてくれるものだと分かった


「かっこいい!」

「じゃろ!?」

「うん! この杖についてるキラキラした石が凄く好き!」


サリさんの杖、クロ―デアには赤色の煌びやかな石が散りばめられており

杖の頭にはひときわ大きなものがはめられていた


「これはの、オドロ火山でよく取れた炎の魔石なんじゃよ」

「ま… せき?」

「魔石は周辺のマナを吸収する特性がある石の事です」

「そうじゃ、それ故攻撃の威力を上げてくれるからの

 よく武器の素材に使われるのじゃよ」

「なるほど…」

「それより… そのような大きな杖をどこから出したのですか!?」

「どこって、儂のローブからじゃが?」

「そんな私ローブはそういう代物じゃからの

 何か大きなものを運びたいときは儂に言うんじゃぞ!」


そう言いながらクローデアをローブの中に仕舞ってしまった


「結局、サリさんは魔法を使うときに杖は使わないの?」

「そうじゃ、儂がこれを使って魔法を撃つと辺りが焼け野原になるからの…」

「ひぇっ…」

「まぁ、ガラべドロのやつと戦うときに使うかもしれんの」


サリさんは不敵な笑みを浮かべながらそう言った


「そ、そっか… そういえばナルディは?」

「杖ですか?」

「うん」

「持ってないですね、と言うより武器を持つ龍族なんて

 あまり聞かないですよ?」

「そっか… 少し残念」


〈ネラル中央広場〉

 ↓

〈水国西〉


「そういえば、どちらの依頼から進める予定なのですか?」

「洞窟の方が時間がかかると思うからサルエ捕りが先かな」

「儂も同意見じゃ!」

「よーし! まずは南に出発だー!」

「おぉー!」

「はい!」


依頼書に書かれていたケミラル河西河口に歩を進めた


〈水国西〉

 ↓

〈水国南〉


水国に入ってから何度かケミラル河を見てきたが

改めて近づいていくとその雄大さがより鮮明になる


「え… 湖?」

「いえ、河です」

「海?」

「河じゃ」

「広すぎでしょ…」

「とは言うても何度も橋は渡っておるじゃろ?」

「そうだけど、あれってルフトを使って追い風を吹かせてるじゃん?

 だからあんまり長く感じないんだよね」

「それはそうじゃな、あれは儂ながらいい開発をしたと思うのじゃ!」

「あれってサリさんのアイデアなの!? 凄い!」


雑談を交わしながら河のギリギリまで近づくと

河の中央付近でサルエらしき魚が跳ねているのが見えた


「これ… どうやって捕まえよう…?」

「そうじゃな… 儂らは船も持っていないしどうしたものじゃ…」

「そうですね、私が一人旅の時に良くやっていた魚とりの方法は

 川に魔法を打って打ち上げられたものを拾うという

 単純な方法をとっていましたが… この広さだと…」

「厳し… くない!」

「え?」

「ちょうどさっきサリさんの魔法の話してたじゃん!」

「儂の魔法なら… まぁ行けるじゃろうな!」

「サリさん! お願いします!」

「任されたのじゃ!」


サリさんは意気揚々とクロ―デアを取り出し魔法を唱え始める

それに呼応するようにクロ―デアに散りばめられている魔石が光りだし

頭についている魔石はひときわ大きく輝き

暗くなり始めていた辺りを明るく照らした


「イデガラーム!」

「わわっ…!」

「こ… これは…!」


サリさんが魔法を発動させるとケミラル河のはるか上空には

隕石のような火の玉が召喚される

サリさんが手を下におろすとそれは徐々に河の中央へと落下し始めた


「あ… あれ危険な奴じゃない…?」

「私もそう思います…」


言い終わらない内に火の玉は河と接触し大爆発を起こした

辺りには爆音が轟き、爆風が吹き荒れる

その力は軽い石はもちろん、私の体までもを

木の葉のように飛ばすほどのものだった


「いってて…」

「サタナ様! 大丈夫ですか!?」

「なんとか… それよりこれ…」


辺りの煙はようやく落ち着き、少しだけ見えてきた河口には

隕石でも落ちてきたような大穴が空いていた


「やっちまったのじゃ!」

「わ… わぁ…」

「こ、これまた怒られるんじゃないですかね…」

「や… やばいかな…?」

「とりあえずサルエを集めましょう!」

「そういえばそうだった!」


河原に打ち上げられたサルエをどんどんと網に入れていっていると

遠くの方から誰かが歩いてくるのが見えた


「そこの! なんてことをしてくれたんだ!」


挿絵(By みてみん)


地図→https://www.pixiv.net/artworks/109957539

次回は7月22日です

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